馳浩の快刀乱筆

 平和って、何? 

 選挙と空爆、同時ドラマ 

平成11年3月28日富山新聞掲載


 

 統一地方選の火ぶたが切って落とされた3月25日。12都道府県の知事選が告示。東京では有力6候補のだんごレース。大阪ではタコとアジの海の闘いなどとマスコミでは評されている。いずれも地方自治のかじ取りを担う知事を選ぶだけにどの陣営も必死であるが、はた目にはどこか平和な光景に映る。それはおそらく誰がなっても平和国家日本の基盤に大きな変化がないことを有権者が見抜いているからであろう。円滑に選挙が行われ民主的手法で政治が運営されているあたりまえの平和が、大きな力でゆがめられている地域も世界には無数あるというのに。

 時を同じくしてNATO軍がユーゴ空爆に踏み切った。ユーゴスラビア連邦セルビア共和国コソボ自治州紛争の平和行き詰まりを受けて。ミロシェビッチ・ユーゴ大統領の譲歩の姿勢が見られない以上数日続くことになる。

 コソボ紛争について我が日本はNATO軍の空爆に『理解』を示し、ユーゴ政府へのプレッシャーを強くしている。

 しかし私はここで2つ忘れてはいけない問題があることを提示したい。

 1つには、ロシアと中国が明確に反対の姿勢を示していること。これは武力行使を容認する国連安保理決議がないことと連動する。日本は国連を中心とした平和活動を支持している以上、ユーゴ側、NATO側、あるいはアルバニア側など片寄った姿勢を明確にすることはこの時点においては避けるべきだ。

 2つめは、コソボ自治州にはアルバニア系住民が9割と言うが、コソボは中世セルビア王国の中心地であり、セルビア人にとって民族の聖地。日本で言えば奈良・京都のような存在。コソボのためにとなるとセルビア人が闘いに臨む心情に大義が立つという歴史的背景も、遠く離れた日本人とて理解しなければならない。民族紛争の根は深いのだ。

 さて、平和な選挙の日本と、和平目指して空爆下のコソボ。国際社会の同時ドラマだ。

 

桜花 平和と和平に 散る生命(いのち)
 

エッセイスト・小矢部市出身

 

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