馳浩の快刀乱筆

 青葉にダイオキシン 

 TV報道と情報秘匿に問題 

平成11年2月14日富山新聞掲載


 

 埼玉県所沢のダイオキシン騒動は、改めてマスコミの報道の在り方、責任の処し方が厳しく問われた。事の発端は、テレビ朝日の「ニュースステーション」において「所沢産の野菜はダイオキシン濃度が高い」と放送され、所沢産のホウレンソウ等の値段が急落。なかには、埼玉県野菜の取引中止まで広がった。

 この一連の報道で問題となった点は二つ。

 一つは、「野菜のダイオキシン濃度の最大値が、1グラム当たり3.8ピコグラム(1ピコは1兆分の1)」と報道された点である。実はこの3.8ピコを示した物質は、後のテレ朝発表によれば「野菜」ではなく厳密には「葉っぱもの」でしかなく、この「葉っぱもの」とは一体何なのか、不明なのである。この報道のいい加減さは言語道断。ダイオキシン報道の重大さを考えれば、慎重な報道とそれを裏付ける綿密な取材があってしかるべきなのに。

 もう一つは、こういう結果になった原因ではないかと思われる「初めに結論ありき」の報道姿勢である。JA所沢市の情報非公開を糾弾するために、高めのダイオキシン濃度を報道したかったのではないか。現に放送当時、この調査責任者は「葉っぱもの」と繰り返し強調するも、久米キャスターは「野菜」と言っている。もしそうであるならば、絶対犯してはならない情報操作である。マスコミ界全体が重く受け止めるべき事態と言えよう。一市民たる我々も「対岸の火事」と思ってはいけない。いつ自分に降りかかるか分からない問題として受け止めるべきである。マスコミは第四の権力なのだから。

 しかし、この問題はもっと根が深い。それは一つに情報公開がなされていない点である。過度の情報秘匿は、自分で自分の首を絞めることになる。

 さらに国が出すダイオキシンの安全基準の不統一性である。ダイオキシンのTDI(生涯人が摂取しても安全な一日当たりの許容量)は、厚生省が10ピコグラムで、環境庁が5ピコグラムなのである。それぞれ数値が異なる理屈を言うが、国民レベルではいかにも分かりずらい。ここにも行政の縦割りの弊害が見てとれる。安全基準を統一すれば、自ずと食品中や大気中のダイオキシンの限度量が決まるのである。そこで怒りの一句。

 

 

塩に替え 青葉に許せぬ ダイオキシン
 

エッセイスト・小矢部市出身

 

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