馳浩の快刀乱筆

 G馬場さん突然の悲報 

 「闘う日本人」に勇気 

平成11年2月7日富山新聞掲載


 

 身長209センチ、体重145キログラムと言えば日本人ならだれもが思い浮かべるのはプロレスラーのジャイアント馬場。その不世出の馬場さんが亡くなった。1月31日午後4時4分。直腸がんから肝不全を併発しての病死。入院中であることは知っていたがそこまで容態が悪化していることを知らなかった関係者は、突然の悲報に接して言葉もない。

 馬場さんの功績を改めて整理してみると、プロレス界内部にとどまらない大きな存在であったことが再確認される。

 第一に、プロスポーツ界の発展に寄与したこと。プロレスは競技の特殊性により、記録や戦績よりも興行に重点が置かれてきた。いかにして一人でも多くの国民に対して格闘技の可能性を訴えることができるのか、人間の強さを証明できるかを自らの肉体言語によって証明したのが馬場さんの偉大さ。亡くなる直前までリングに上がり続け、「生涯現役」を貫き通したことも特筆に値する。

 第二に、プロレスを大衆文化として定着させた事の大きさである。馬場さんの人柄は万人に愛される誠実さに満ちていた。プロレスと言えば野蛮、乱暴というイメージが先行する世間の風潮の中で、「力強くて気は優しい」馬場さんの知的存在感は、プロレスが国民に愛されるジャンルであることを訴え続けた。何よりも日本人離れした規格外の体格は、高度経済成長期の「闘う日本人」に勇気を与えた。「努力したら報われる」「日本人だって世界の列強に伍して競争できるんだ」という思いにさせてくれた。プロレスが日本人の心の中にそういう活力を吹き込むジャンルであるということを定着させたのは、馬場さんの最大の功績である。

 そんな馬場さんの密葬は、遺族と関係者だけで簡素に自宅マンションで行われた。日本が世界に誇るジャイアント馬場の最期は、シンプルであっただけに、余計に悲しいみが深い。闘い続けた馬場さんに敬意を表して一句。

 

 

寒椿(かんつばき) ポトリと落ちて 静かなり
 

エッセイスト・小矢部市出身

 

INDEX