馳浩の快刀乱筆

 恩讐を超え「自自」連立 

 禁断の果実

平成10年11月22日富山新聞掲載


 臨時国会を目前に控えて、とうとう自民党と自由党が連立政権を樹立することで合意した。我々自民党所属国会議員には一言のことわりもなく小沢一郎自由党党首と小渕恵三首相のトップ会談での決定。これだから政界は一寸先は闇(やみ)。アダムとイブが禁断の果実を食べたようなものだ。

 この連立劇の舞台裏は、その状線は・・・・。

 私の情報網では、全(すべ)ての発信源は参議院自民党幹事長の青木幹雄議員の政治手法によるものと思われる。

 先の参院選大敗の責任を取って辞任した村上正邦前幹事長の後任だ。村上さんは「強腕」「ドン」「尊師」とアダ名されるくらいのワンマン。比べて青木さんは全方位への目配り気配り外交。

 党内においては他派閥(青木さんは小渕派。竹下登元首相の懐刀と呼ばれる知恵者)に対して人事や日頃のつきあいで配慮し、国会運営においては野党各党と太いパイプ(つまり誰とでも腹を割って話し合える人間関係)を持つ。

 その青木さんは、過半数割れの参議院運営が政局に大きな影響を与え、自民党の野党転落、崩壊、国政混乱へとつながりかねない火薬庫であるとの認識を持つ。一つの証明が故永田良雄議員の殉職。8月初めの臨時国会冒頭では参議院の運営は混迷。野党折衝で徹夜続きの永田国会対策委員長が不帰の人となられたのは、記憶に新しいところ。加えて金融再生関連法案の成立が大幅に遅れて国民に大きな不安を与えてしまったことも事実だ。

 これらの不安材料解決のためにも、安定した国政運営、迅速な政治遂行のためにも参議院での過半数獲得は、青木さんにとって悲願でもあったわけだ。

 さて、連立へとまず合意は得られた。次は、このワク組を強固にしていく作業が残っている。景気回復に政局の力は今こそ有効に発揮されなければならない。自由党と自民党。まさしく恩讐(おんしゅう)の彼方に手を握る。小沢さんの心境を一句。

 

 

ふるさとや いばらの道も 一歩ずつ

 

エッセイスト・小矢部市出身

 
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