馳浩の快刀乱筆

「野村阪神」で巨人も熱く 
職業、監督。 
仕事、勝つこと。
平成10年10月25日富山新聞掲載


 週末、仕事で大阪のホテルに滞在。昼近くに遅い朝食をとっていると、フロントの女の子たちが野球談義に花を咲かせている。

 何事かと耳をそば立てると、野村克也前ヤクルト監督が阪神タイガースの監督になってくれるかどうかで盛り上がっている様子。

 「野村さんにダメ虎強うしてほしいわ。」

 「でも今朝のスポーツ紙一面に、阪神球団が野村さんの大阪滞在用に一泊42万円のスイートルーム用意する、って書いてあったけど、そんなことしたら年間7千万円の経費やで。あのケチな球団が出すかいな!」

 「そういえば3年契約で10億円!てうわさも飛んどるな。そんなん出すはずないがな。」

 「相変わらず口先で商売してるわ。でもホンマに野村さん大阪に来てほしいわ。阪神が強なってくれたら関西全体の景気も上向くしなァ。そしたらホテルももうかるし。それに奥さんのサッチーが大阪のテレビ番組にようけ出てくれるかもしれへんでぇ。」

 とまぁ、大騒ぎ。こんなにファンにボロクソに言われるチームもないだろうが、こんなに万人に愛される球団もないということの裏返しであろうか。

 私は根っからの巨人ファン。だからこそ、この野村監督獲得作戦の実現を願ってやまない。何故なら、巨人を熱く燃えさせてくれる強力でえげつないチーム(つまり悪役)がいないとテレビを観ていてもちっとも面白くないからだ。その点、広島、中日、ヤクルト、横浜には個性がない。

 プロスポーツは壮大な人間ドラマ。が故に、野村監督と阪神タイガースのキャラクターの相乗効果で、日本中をにぎわせて欲しい。

 できたら、桑田や清原ら大阪出身の巨人のレギュラーを引き抜いて遺恨を生んでもらいたい。

一試合に一回は乱闘があったっていい。

試合後には道頓堀で巨人ファンと阪神ファンが殴り合いのケンカをするのもいい。

その位に、熱い思い入れのできるチームを作って欲しい。

プロ野球にはそれだけ国民のエネルギーが詰まっているはずだ。

そこで一句。

ダメ虎を 輝かせてこそ 月見草

エッセイスト・小矢部市出身

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