馳浩の快刀乱筆
しっぺ返しが来る前に
海が泣いている

平成10年9月27日富山新聞掲載


 のどに刺さっていた魚の骨がようやく取り除かれたようである。韓国と日本。いくつかの両国間の問題がいまだに山積みしている中で日韓新漁業協定の締結交渉が9月25日未明、首相官邸で合意に達した。

 日韓両国が二百カイリの排他的経済水域を認める国連海洋法条約を批准したのが1996年。以来、新協定締結交渉は2年4ヶ月ぶりに決着した。ようやく、である。

どうしてこんなに時間がかかったのか。両国間で領有権を主張している竹島(韓国名・独島)周辺海域が両国にとって有数の漁獲量を誇る水域であったということが原因である。

韓国は「自国領土である独島周辺海域は自分たちのものだ」と主張するし、同様に日本側も竹島周辺海域は自分たちのものだと主張。いつまでたっても両者平行線。そこで、竹島周辺には暫定水域を設定することになったのだか、今度はその境界線を画定する段階で折り合わなかったのである。それが合意に達したのだ。

日本側漁民の主張は、韓国漁船の乱獲を防ぎたい、違法操業を一刻も早くやめさせたいということ。海洋資源といえども限りがある。守り育てる漁業をスローガンに、明確なルール作りをしたいだけなのである。

一方の韓国側漁民の主張は少々乱暴である。今までの漁獲量を確保しなければ水産業界はおまんまの食い上げになってしまう。だから、「好漁業の独島周辺での漁獲量を守りたい」ということ。

 韓国側に言いたいことは1つ。海洋資源をお互いに守っていかなければ、いつの日か乱獲がたたって海から恩恵を受けられなくなってしまうということ。そうなっては遅い。

 海は泣いている。人間に恩恵を与えているにもかかわらず、人間からは「保護」といういたわりを受けられないでいる。おそらくいつの日かそのしっぺ返しはやってくる。そうならないための国連海洋法条約の批准であったはずだ。海を両国間の政争に巻き込んではならない。日本海に一句ささげる。

日韓の 国境はなし 秋の海

            エッセイスト・小矢部市出身

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