新連載 馳浩の快刀乱筆
男なるものの悲しさ
バイアグラって何だ?

平成10年8月16日富山新聞掲載


 男どもが数人寄ると、あまり建設的ではない会話が交わされる。その場に酒が入るとさらに輪をかけて品のない展開となる。

 そこで最近は、バイアグラである。そう、男性自身が薬の力を借りて機能回復するというアノ薬の話である。本来ならば、性的不能を克服するという涙なしでは語ることのできない切実な問題。であるにもかかわらず、こんなにマスコミにもてはやされ、そんなの必要ないはずの若者にまで関心が広まってしまっているのは、ひとえに男という悲しい生き物の性(さが)なのかもしれない。いや、きっとそうに違いない。だって私も欲しいのだから。

 何とかして手に入れたい。一度は試してみたい。ほとんどの男性がそう言う。自信を取り戻したい、というのならいざ知らず、不純な動機で面白半分にバイアグラを試そうというのでは、危険極まりないはず。何故ならば、れっきとした薬品なのだから。取り扱いを誤れば、死亡事故にもなりかねない。心臓の強さ弱さなんて計り知れないものだから、度胸試しの一面もあるのかな。自問自答をくり返してみても、出てくる答えはやっぱり「試してみたい」。

 そんなヨコシマな気持ちになっている私は人間失格なのだろうか。もちろん、そんな薬なんて一切必要ないカラダであることは、当の本人が一番よく知っている。女房にも相談できない私のココロの中は、女性の敵なのではないだろうかとさえ思ってしまう。でも、言いたい。酒の席でバイアグラの話になると、私より若い連中でさえ「欲しい」「試してみたい」「うっしっし」となるのだから、私一人が罪な男ではないはずだ。

 そんなさ中。とある芸人が酒の勢いでバイアグラを5錠、水割りで一気飲みして病院に運ばれたそうな。とってもバカな男だ。でも、とってもよくわかる、その勢い。おそらくこの文章を読んでいる全ての男性は「フムフム、なるほど」とうなずき、全ての女性は「バーカ」と軽べつするに違いない。しばらく私のバイアグラ症候群はおさまりそうにない。嘆きの一句を。

男ゆえ 夢にまでみる バイアグラ

 エッセイスト・小矢部市出身

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