新連載 馳浩の快刀乱筆
北陸の夏は補選で熱く

政治の宿命

平成10年7月19日富山新聞掲載


 北陸を代表する二人の政治家が相次いで亡くなった。ご冥福をお祈りするとともに、故人をしのんでその多大な功績を記しておきたい。

 住博司代議士。富山2区。享年43歳。亡父の遺志を継いで、NHK記者から若くして政界に転身し、宮沢派のホープとして社会保障分野を中心に活躍。旧富山1区では三塚派の長勢甚遠氏と選挙区調整で激しく火花を散らした。

 葬儀委員長の加藤紘一自民党幹事長の弔辞のしめくくりが参列者の心の琴線に触れた。「請い願わくは、全ての思いを洗い流して、安らかにおねむりください。私は住博司という有能な政治家がいたことを決して忘れません。」

 おそらく、私事に言及しての精一杯の表現であったろう。私も親しくさせていただいただけに無念やるかたない。住先生の周辺がプライベートなことで騒がしい時、よく国会議事堂内の図書館で一人調べ物をしている姿に出くわした。面相を崩さぬ人だが、静かに力なくほほ笑む表情は、悲しかった。

 昨年来、自民党本部において、医療保険改革や、公的年金制度改革に取り組まれていただけに、その結果を出す前にこういうことになり、残念でならない。

 奥田敬和代議士。石川1区。70歳の大往生。

 石川県の保守政界を常に森喜朗自民党総務会長と二分し、政治に緊張感を生み出す策士だった。

 日本レスリング界の草分けでもあり、私にとっては大先輩。私が石川県から初のレスリング日本代表としてロス五輪に出場した時は、相好を崩して喜んでいただいた。それが政治的に対立する立場になろうとは。からだは小さいが闘魂のかたまりのような人だった。民主党の大団円も奥田先生のリードあってこそ。後見人を失った羽田孜幹事長の心中はいかばかりか。

 死亡が選管に確認されて40日以内で補選が行われる。ということは、富山、石川両県の今年の夏はさらに熱く、暑くなるということだ。これもまた生きた政治の宿命か。まずは北陸の発展に殉じた二人の政治家に一句ささげる。合掌。

ふるさとや 露と消え行く 蛍かな

エッセイスト・小矢部市出身

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