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新連載 馳浩の快刀乱筆
平成10年6月21日富山新聞掲載 |
第142通常国会が6月18日に閉幕した。私が所属する参議院においても、午前11時10分から本会議が開会され、最後の斉藤十郎議長のあいさつによって158日間の会期を終えた。そして、その直後に議場内の誰ともなくもれた言葉が「いよいよだなぁ・・・・」である。この一言には二つの意味が含まれている。
まずは、任期満了で引退される長老議員の無事つとめあげた安堵の気持ち。年長の故をもって林田悠紀夫議員(京都)が謝辞を述べられた。「これからは国民の一人としてこの国の行方を案じて行きたいと思います」とのあいさつに、議場はしんみりと聞き入った。
蜷川(にながわ)革新政府を一新した京都府知事の時代。そして国際問題のご意見番として取り組んだ参議院議員時代。長い政治家生活を終えて市井の一員に戻る心境はいかばかりか。本会議後に私の事務所にあいさつにお見えになり、「これからは若い馳君たちに参議院の未来を託すよ」との激励を下さった。
もう一人印象深い引退議員は、共産党の上田耕一郎議員(東京)。委員派遣で沖縄に同行した時のこと。米軍基地内で海兵隊の司令官と質疑応答の際、上田議員は冒頭のあいさつでこう切り出した。
「海兵隊の皆さんには、我が国を守るためにこうして日夜精励されていることに対して深く心より感謝と敬意を申し上げます。」
もちろんこの後には日米安保反対の意見が続くのであるが、相手に礼儀を尽くす上田議員の政治姿勢は、若い政治家にとって常に範となるものであった。
もう一つのいよいよの意味は「選挙」という闘いを目前に控えての決意のあらわれ。私たち参議院議員は6年間の任期中に何を国家のために貢献したのか、これから何をなそうとしているのかが問われる選挙だ。
国会閉会にあたり去りゆく老兵に一句はなむけとしたい。
万緑を 願ひて去りぬ 参議院 エッセイスト・小矢部市出身
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