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新連載 馳浩の快刀乱筆
平成10年6月14日富山新聞掲載 |
いよいよW杯サッカー大会がはじまった。初出場する日本代表チームの活躍に期待したい。日ごろサッカーに関心のない人も、これだけマスコミ報道に接するとにわかファンになってしまっているようである。また、日本という国を意識しないで暮らしている私たちは、日の丸を意識し、君が代を大きな声で歌い、大いに国民としてのプライドを刺激されるものである。なるほど、ベルリンオリンピックの時にヒトラーがスポーツを国威発揚に悪用したこともむべなるかな、とうなずける。
国を挙げての熱狂の中、水を差すようなひとつの事件が私たちの心の琴線をゆらした。
カズ、北沢、市川の日本代表もれである。
6月2日の登録メンバー22人の中にこの3人が入らなかったことである。スイスでの合宿中に外すのならば、最初から彼らをスイスまで連れて行かなくても良かったじゃないか。とりわけ日本チームのレベルアップに貢献してきたカズをこの時期に帰国させるなんて可哀そうじゃないか、との同情論が出ている。
私は、良くぞやった、の意見である。
余りにも国民は頭に血がのぼり過ぎている。だって、若いあんちゃんがボールを蹴っ飛ばす優劣を競うスポーツじゃないか。それもチームスポーツである。ましてやカズはプロだ。
代表メンバーから外れたのは単に実力がないからである。W杯に臨む日本チームの戦術的な構想に入っていないだけである。現在のチームにドーハの悲劇とかこれまでの貢献度とかリーダーシップとかは全く関係ないはずだ。ましてや、大会直前であろうと、6月2日が最終登録というルールがあるのだから岡田監督はそのルールに従っただけである。同情論を叫ぶ人たちは思い入れが強すぎる。その過度の思い入れがスポーツ選手を甘やかしたり、スポーツをゆがめてしまうことが多い。ここは淡々と岡田監督の人事をたたえるべきだ。
そうは言いながらもカズの心中を一句。
カズはまだまだ やれるぞと 梅雨の空 エッセイスト・小矢部市出身
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