「人間会議」 Vol.2 2001.6.1発売
哲学を生活にいかす総合誌
発行予定 季刊(3月・6月・9月・12月)の1日発売


やさしい家族 〜親の存在と役割〜 インタビュー

プロレスラー議員はただいま子育て
奮闘中!

 リーちゃんの朝シャンはパパがする!

 子育ては楽しいっスヨ!自分が遊んでもらっているっていう感じですね。
 今朝も一緒にお風呂に入ってきたんです。昨日の夜も入ったんだけど、取材があるから。
 ねっ、リーちゃん。シャンプーとリンスもしてきたから、いいにおいがするね。
『ウン!パパ』

 リーちゃんとは、馳さんの一人娘鈴音(りおん)ちゃん(3歳)のことだ。抱き上げた娘の髪の毛にパパが鼻をクシュクシュッとこすりつける。

 食事はもちろん掃除や洗濯は、高見さん(妻でタレントの高見恭子さん。妻をこう呼ぶ)が全部やるよ。仕事のとき以外に外食はほとんどしないし、リーちゃんもママの作ったものなら大嫌いなニンジンでも食べられるんだよね。

 インタビューの場所は永田町の衆議院議員会館。取材当日はベビーシッターを頼めなかったので、リーちゃんも一緒に“ご出勤”である。ミスコピー用紙の裏に落書きをしたり、糊で広告の紙をはり合わせて遊んでいる。
 『リーちゃんが来ると、とても和やかな雰囲気になるんですよ』と秘書たちも言う。

 

託児所が欲しい!!

 子育てのことなんて、全然考えていなかったよね。高見さんもタレントとして、家で原稿を書くこともあるし、テレビやラジオの仕事、それにパーティーに出席することだってある。

 俺だって、朝早くて夜遅い仕事だから。娘に会えないと、事故とかケガとか、常に心配があります。でも自分の視界の中にいれば安心じゃないですか。だから、ここ(議員会館)に連れてくるんです。そんな議員はいませんが(笑)。

 自分は国会議員だから、家庭とは、一番離れた立場であると感じる部分もあるんですが、子どもが生まれたことによって、逆にそういう所に目がいくようになりましたね。少し前に参議院で橋本聖子さんが産休を取りたいという話があったでしょ。男性議員で唯一賛成したの、オレ(笑)。
 だって、永田町に三つある議員会館には託児所すらないんですよ。秘書や職員のことを考えたら、3000人も働いている場所に託児所がひとつもないなんて。作ろうと思えば場所も確保できるんですね。だから(託児所をつくる)運動もしたけどなかなかうまく広がらなかった。でもあきらめてはいませんよ。来年度予算を決める時期にまた動こうと思っています。子どもを職場に連れてくるようになったことで改めてわかったことって多いですね。

 

一日一回 思いっきりひっぱたく

 家にいるときは、ビデオ屋さんに行ってビデオを借りて・・・昨日はドラえもんを借りたのかな?それを10回も20回も一緒に繰り返し見させられる。見たあとは、体によじ登ってきたりするから、放り投げたりしてね。あとは、散歩に行くくらいかな。近所にコンビニがあって、お買い物をして帰ってくる。一緒にいるだけで楽しいよね、そんなことだけど。
 女房と行きたいとは思わないけどね(笑)。

 意識しているといえば、『リオンちゃん可愛いね』とか『リーちゃん愛してるよ。大好きだよ』とか、常にほめること。

 それから一日一回は、本気で泣かせる。張り倒すんですよ。本気でこう(頭を張り手で倒すしぐさをする)ね。たとえば、夜遅くまでビデオを見ているとか、食べたものをペーッて吐き出したりとかね。それから乱暴な言葉づかいで、パパに『おまえー』なんて言ったら、思いっきりぶん殴る。ガツンとね(といってテーブルを握りこぶしでガツンと叩く)。顔が真っ赤になるぐらいにね。

 やっちゃいけないことはいけない。ルールは必ず守る。そういうときに絶対許してはいけないんです。落書きで壁やテーブルを汚したなんて、そんなことでは怒りません。思いっきり怒って散々泣かせた後は、思いっきり抱きしめてやる。そこがポイントですね。

 

親も生きがいを持て!

 国会議員になってから、再びプロレスラーとしてリングへ。どちらが本職?

 どっちが好きかって?そりゃプロレスに決まってるさ。国会議員としての仕事は使命感からやっていることであってね。それに体力的にも両立できる自信がついたから。もちろん、家族がいる訳だからケガをしないように練習もしっかりこなして試合に臨んでいるよ。

 俺も高見さんも忙しいけれど、3人そろって一緒にご飯を食べて、公園に遊びに行って、電車に乗って渋谷の東急の屋上に行って乗り物に乗って遊んだり、伊勢丹で買い物したりね。スターバックスに行ってコーヒーを飲んだりもしますよ。そういう時間をもつ意味が、子どもにも敏感に伝わってるんじゃないかな。

 リーちゃんに、パパとママとどっちが好き?って聞くと、パパとママとリーちゃんって言いますから。前はね、全く関係ない「みかん」とか答えていたんです。バナナとリンゴどっちが好き?って聞くと、「リンゴ」って言うのにね(笑)。

 

馳パパの“公園デビュー”

 公園デビューはね、いつだったかな?トコトコ歩けるようになった時期。丁度春暖かくなったころだったな。普通のジャージ姿で行ったんだけど。平日の昼間ってさ、お父さんっていないじゃない。だから「体の大きな男がちっちゃい子どもを連れているって、いったい何者かしら?」みたいなね。お母さんたちの冷ややかな視線が怖かった(笑)。
 (リオンちゃんを)滑り台で滑らしたり、バネのついた馬の遊具に乗せて遊んだり。そんなことをしていると、「ああ、自分も親なんだな」って思いますよね。

 周りのお母さんたちもなんとなく話したい雰囲気でね。
 『お嬢さんですか? おいくつですか?』なんて、話し掛けてくるんですよ。
 『36歳です(当時の馳さんの年齢)違うっちゅーの。1歳3ヵ月です』なんてボケと突っ込みをいれながら答えたり(笑)。

 でも、そうして話し掛けてくるということは、お母さんたちが自分の子どもをほめて欲しいからだということがわかった。だから、こちらから話し掛けてあげる。
 『おいくつですか? 名前は? 今朝何を食べたの?』とかね。お母さんたちの空気って独特のものがありますから。子ども中心にして話をするから、少しずつ会話が成り立つ訳ですよね。普段はお母さんたちと話す機会なんてないからこうした時間は貴重です。

 子どもができて以来、選挙が楽しくなりましたね。目が子どもにいっちゃうの、街頭演説のときも。俺たちの未来は現実的な未来だけど、子どもたちにはまだ見えない未来がある。そう考えるとワクワクするじゃないですか。選挙のときも、
 『皆さん、お子さんをどのような環境で育てたいですか。自分のお孫さんをどう育てたいですか』って話かけるとみんな顔が変わる。経済対策や外交の話をしているときと全然違うもんね。その後に、引きこもりや不登校、児童虐待やドメスティックバイオレンス(夫婦間暴力)の話をすると、皆さんも、直接ではなくても自分と関係する問題として話を聞いてくれる。つまり、子どもを通して、社会の問題とかかわっていこうと思えるんですよ。

 鈴音ちゃんをこういう風に育てたいっていう理想はありますか?

 ない。なるようにしかならないよね。今のように一日一回は、思いっきり殴りつけて、人にいやな思いをさせることは絶対にしちゃいけないと。それから挨拶はきちんとする。うるさく言っているから、誰にでもきちんとできるようになってきています。人見知りもしないし。あとは子どもが成長していく過程で、こういう方向に行きたいとか、こういう道が合っているんじゃないかって見えてきたら、そのときに援助してあげればいいだけですよね。人の役に立って喜ばれるような、思いやりのある女性になって欲しいですね。


馳浩 in Mediaメニューへ戻る



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