INTERVIEW
月刊教職課程 99年4月号 

プロレスも政治も全ては教育、文化の継承です


教師の頃の思い出は挙げたらきりがない

 オリンピック出場からプロレスラーへ転身、そして国会議員の道へと華々しい経歴をおもちの馳さんですが、以前は国語の教師をされていたそうで。

 はい。今でも、1コマ1コマ思い出に残っていますね。古典の授業中に屋上で俳句を作ったり、白文を一緒に声を出して読んだりとかね。それからクラブ活動、せいと指導。思い出は挙げたらきりがないですよ。また僕の場合、ただでさえ体が大きいし、声も大きいから、やっぱり生徒は怖いんだろうね。「おい!」って呼んだだけなのに、「先生に言われると脅迫されてるみたいです」なんて女子生徒に言われたこともありますよ(苦笑)。

 僕が高校生の時に公民を教えてもらっていた先生が校長先生になっておられて。怖いけど本音で話してくれるから人気のある先生でね。プロレスラーになるときも、親身になって僕の人生を考えてくれて、プロレス入りに賛成してくれた。校長先生にはプロレスラーになるいいチャンスを与えていただいたという気持ちですね。

 

学校教育の基本は、読み書き、算盤、友人関係

 学校教育のあり方について、馳さんご自身はどのようにお考えですか?

 学校教育のあり方は、”読み書き、算盤、そして友人関係”の基本を身につけさせること。ものを読んで理解でき、考えていることを書いて表現でき、足し算引き算ができ、そして友人たちとはけんかをしながらも仲良くやっていける。この基本が円滑にできていれば、あとは家庭環境や地域環境がその子供の個性をつくっていく。そういう意味では、あまり多くの事を学校に要求すべきではないとも思いますね。基本を教えるという部分が学校教育の原点ですから。

 ”個性の尊重”が叫ばれていますが・・・。

 ”個性の尊重”をあえて言う必要はないと思いますよ。本当に個性の尊重と言うなら、1人の先生が子どもを見る数は5人が精一杯。だからといって、1クラス5人にするべきではない。なぜなら集団生活は学校でしかできないわけだし、何十人かの集団の中で、ある時はリーダーになり、ある時は集団の一員として一歩引くことを身につける。これは学校教育において、社会性を培う意味でも大事なことだと思いますよ。

 

言葉 実体験の”引き出し”!を持て

 では、教師に対してはどんな資質が求められるとお考えですか。

 1対40と生徒を見ては駄目。生徒から見たら必ず1対1の関係なんだから。この理念をわすれちゃいけないと思う。双方向性が必要だから教員の技術って難しいと思うね。

 もう一つはどんな質問に対しても答えられるような言葉、実体験の引き出しを持ってほしい。教師自身がいろんな所を旅したり、いろんな人に会ったりして豊富な経験を身につける。そして子どもたちが興味や疑問を持ったときに、その経験を話してあげる。いろんな職業について、高齢者や障害者について、他の国々について・・・。そうすることで、「今私たちはどんな世界に生きていて、日本はどういう体制で、日本人とは何なのか」といったことを子どもたち自身が考えていくようになる。そういった意味では、教育っていうのは文化の継承ですよね。

 現在、国会議員としてどんなことに取り組んでおられるのですか?

 環境ホルモン問題、ダイオキシン対策の法案作り、ODA基本法作りなどに携わっています。

 教育関連では、青少年健全保護育成条例の問題。各都道府県によって条例の内容が違っているので、全国一律にした方がいいのではないかと。今の状況ですと、条例の緩い方に風俗業者が流れたりします。それに風俗営業法や刑法の猥褻規定など、各法律によって適用が曖昧な部分が多いので、その部分を今論議しています。教育、環境、ODAを3本柱として政務には取り組んでいきたいと考えています。

 

全ての基準は”自分自身とは何なのか”

 プロレスラーとしてはこれからはどんな活動を?

 選手の保障問題、移籍制度の整備、交流試合などを通じた各団体間の懸け橋作りが夢ですね。

 自分個人としては、今は非常勤レスラーとしてやっているわけですから、そんなに多くを望んではいません。ベルト挑戦などもすべきでないと思いますし。ただ、リングに上がる以上は誰も国会議員と思わないような体をつくるし、また逆に国会で仕事をしているときは、誰もプロレスラーとは思わない・・・。そうなるのが理想ですね。

 異種格闘技戦は認めないという馳さんですが、リング上でのプロレスラー、国会での議員。これら異種の仕事が、馳さん自身の中で格闘しあったりはしませんか? 

 それは全然ないですね。全部がリンクしていますから。それはやっぱり教育ですよ。文化の継承です。国会議員なら、日本の文化というものを制度的に継続していくため、国民の民意を反映させていくのが仕事だし、プロレスにしたって、文化として、日本人のよさを肉体的に表現したり、その可能性を追求していくものである。教育はまさしく文化の継承ですから。そのためには、どれだけ日本人を理解しているか、その歴史を理解しているか、また、リングに上がる以上は自分の肉体がコントロールされてるかを理解してなければいけない。全て基準は一つであって、「自分自身は何なのか」の確認作業を毎日するというのが基本ですよね。

 これからもご活躍を期待しています。お忙しいところ有り難うございました。

(於 参議院議員会館)    


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