特別支援教育の情報誌 月刊
実践
障害児教育 2006
Vol.402
平成19年度にはいよいよ制度が変わる特別支援教育。
その充実に向けて、国会論戦で浮きぼりとなった問題点について数点記しておきたい。
まず、マンパワーの充実。
折しも、公務員の削減や、人件費の圧縮という政府の方針のあおりをまともに受けてしまったのがこの障害児教育の分野と言えなくもない。
学校教育法を改正し、特別支援学校に衣替えし、そして発達障害児への支援を強化しようという文部科学省の機先を制されたことだけはまちがいなかった。
しかし、そんな厳しい財政事情の中でも、小坂憲次大臣(当時)とわたしは一律の人件費削減論に真っ向から反対し、予算編成の過程においてマンパワーの充実こそが障害児教育を充実させるための最優先課題であると答弁した。
とりわけ特別支援教育コーディネーターと介助員の確保は喫緊の課題。
教職員の研修ももちろん重要ではあるが、日常的なサポートを必要とする子どもたちに、安心して学校生活を過ごしてもらえるような加配をしなければならない。
更に、もっと充実されるべきは「排除されないこと」という理念の実践だ。
それは、大きな意味をもつ。
社会活動から障害者が排除されないこと、という理念の実践の徹底だ。
障害者本人や保護者などがもつ疎外感をふっしょくするためにも、よりいっそう交流活動や共同作業を深化させたり、インクルージョン(統合)教育を可能な限り進めなければならない。そのためにも、認定就学制度において、省令で「保護者の意見を十分勘案すること」と改正された意味は大きい。
もちろん、通常学級において障害児が排除されないように条件整備を充実すると同時に、特別支援学校の教育内容がよりいっそう充実されることは重要だ。
その中でも、高等部を卒業した後の就労支援がポイント。
教育の目的の一つには、卒業後に社会に出て、生きがいをもって働くために学ぶ、という要素がある。
障害児の保護者は、卒業してしまうと社会から見はなされてしまうのではとの危機感が常にある。その不安にこたえるためにも、特別支援教育のメニューの中に、実践的な職業トレーニングが組みこまれるべきである。
社会の一員として、お互いが支えあい、共に生きがいをもって働く。
そういう社会を構築するためにも、特別支援教育は待ったなしなのである。
馳浩 in Mediaメニューへ戻る