自由民主 2004年8月17・24日 合併号掲載
【議員にクリック】

クリックする人:猪野 浩二さん(会社員) 川岸 淳一郎さん(自営業)

クリックされる人:文部科学大臣政務官 馳 浩衆議院議員

 

『国立スポーツ科学センター見学』

 

科学の力でメダルラッシュへ
 いよいよ8月13日、スポーツの祭典・アテネ五輪が始まる。日本はいくつの金メダルを獲ることができるだろうか。五輪発祥の地で戦う日本代表選手たちへの期待は大きい。わが国にはそうしたトップアスリートたちをスポーツ科学、医学、情報の面からサポー卜する「国立スポーツ科学センター」(東京都北区)がある。その最先端の研究施設を見学しながら、レスリング日本代表としてロサンゼルス五輪に出場し、現在は文部科学大臣政務官を務める馳浩衆院議員に、猪野浩二さん、川岸淳一郎さんが聞いた。

国立スポーツ科学センター・メモ

所 在 地

東京都北区西が丘3−15−1

竣   工

平成13年10月

総 工 費

274億円

建   物

鉄筋コンクリート、地上7階、地下2階

建築面積

5,936 平方メートル

述べ面積

28,500 平方メートル

トップ選手を万全サポート 日本選手強化の玉手箱

施設見学

 国立スポーツ科学センターは、日本のトップアスリートの強化を科学的に支援している。

 まず一階の陸上競技実験場。練習場ではなく実験場である。「壁際にある三コースは直線で百メートルあります。途中に埋設されている圧力板で脚の力の掛かり具合が分かり、また、映像と合わせてフォームの矯正に役立っています」と案内してくれた同センター川原貴スポーツ医学研究部長。測定機を使用した最先端強化法に「そんなに進んでいるんだ」と見学者。

 片隅のネットに目を留め「あれは何ですか」との質問には、「あのネットに向かってハンマーを投げると、初速と角度で投げた距離が分かります。室伏広治選手も時々来て測定しています」(川原部長)。

 地下一階ではボート・カヌー実験場で足が止まった。一番使用しているのはカヌーで、「水流で強弱の負荷が掛けられ、艇の揺れ、力の掛かり具合、左右の力の違いが瞬時にグラフに示され、技術と体力の向上につなげています。その甲斐あってアテネ五輪には五人も出場します」(川原部長)。
 その効果を聞いて、一同「すごい」と感心していた。

 その後、最上階のレストランへ。自分の選んだメニューをパソコンに入力すると、何が不足か画面に表示され、栄養士がアドバイスしてくれるようになっている。台の上に10本以上並んだペットボトルに興味を持ったのが馳議員。「このミネラルウォーターは」と尋ねると、「アテネで売っているミネラルウォーターです」と栄養士。

 「向こうで仕入れたのですか」「はい。ギリシャのものは硬度が高く、選手によってはお腹をこわすこともあるので、硬度が低く日本の水に近いものを現地で選べるように展示してあります」

 「値段は?」「選手村では無料です」「日本から飲み水は持っていかないの?」「それは選手個人に任されています」と飲料水問答。体調を維持し、持っている力を出し切るために細心の配慮がされていることが分かった。

 ここで見学者から「ドーピングの心配はないのですか?」との質問が出た。「何でも口にすると困りますので、メディカルチェックのときにどんな薬を飲んでいるかなども調べ、薬については選手団が管理、選手は勝手に薬を飲まないようにしています」という川原部長の説明に、「野球や自転車などプロ選手が出場する競技はどうなのですか」と馳議員。「プロ野球ではドーピングは禁止されてはいませんが、全員チェックしています」ということで日本選手のドーピング対策も万全のようだ。

 続いて5、6階では「ここで一番自慢の設備」(川原部長)という低酸素宿泊室を見学。80室のうち72室は、各室ごとに標高1800から3000メートルまでの酸素量に調整ができ、居ながらにして高地トレーニングの効果が得られる「外国にもこれだけの設備はありません」と川原部長も胸を張る。

 部屋そのものはビジネスホテルのシングルルームくらいの広さだが、「選手がパソコンを持ってくればインターネットにも接続できるようにもなっています」という。
 IT環境にも対応した設備に馳議員と見学者は「へぇー」と感心しきりだった。

 三階で注目を集めたのは研究体育館。天井に設置されたカメラで撮影したものを壁の二つの大型スクリーンにすぐ映すことができるもので、「バレーボールやバスケットボールのフォーメーションなどのチェックに使われています」。

 スポーツ科学の最先端を詰め込んだこのセンターは、日本のトップ選手強化の玉手箱であることを実感した。

 

 

Q 国立スポーツ科学センターの役割は何ですか?

A スポーツを科学的に分析し、国際競技力の向上と発展に生かそうということです

 川岸 見学させていただいて素晴らしさが分かりましたが、この施設の役割は何ですか。

 馳  国立スポーツ科学センターの目的は一言でいうと、スポーツを科学的に分析し、国際競技力の向上と発展に生かそうということです。

 猪野 宿泊施設はあっても強化合宿所ではないわけですね。

 馳  趣旨は研究所です。ですから科学部には大学院などからきた役30人の研究員がいますが、任期は一年更新で最長三年です。若い研究員の働く場所を確保する意味もありますが、長くやると研究も停滞してしまう恐れがあるからです。
 データを生かして競技力向上や普及発展につなげるには5年くらいでもいいかな、3年は短か過ぎるかなと私は思っています。

 猪野 スポーツ科学が進んでいるのはよく分かりましたが、メンタル面のサポートが少ないような気がしましたが。

 馳  大事な視点ですね。いわゆる五感をフル活用して競技力向上に生かすという点では本来の趣旨にかなっていますが、人間の第六感というか精神面でモチベーションを高める工夫も必要ですね。自分を磨く修養の場も必要だと思います。

 川岸 そういう面では外国に遅れているということですか。

 馳  研究体育館が一つしかないなどの施設の遅れもありますが、競技力向上のために何を必要としているか、競技力向上に不可欠な人間力向上には精神力の支えがないといけないわけです。人間は、限界を超えるのには精神力が絶対条件ですから。

2004 アテネ五輪

開  催  地

ギリシャ・アテネ

期      間

8月13〜29日(17日間)

実施競技、種目

28競技、301種目

日本選手代表

312名(7月20日現在)

Q この施設によって、素質ある子どもたちの発掘にもつながりますね?

A 集めた情報を教材としてビデオ化し、小・中学校の総合学習で活用も

 川岸 こういう施設が一般に広まれば、素質ある子どもたちの発掘にもつながるのではないですか。

 馳  それは言えますね。いろいろな所とオンラインでつながっていて、例えば競泳の北島康介選手のトレーニングはこうですよ、筋力はこうですよ、このフォームだから速く泳げるんですよと、全国の子どもに分かるようにできれば子どもたちのモチベーションが高くなりますからね。

 教材としてビデオ化して全国の小・中学校で総合学習の時間に生きる力を蓄えるため見せるとか、雨の日の体育の時間に見せてあげるのもいいですね。オンラインでトレーニングの内容や取り組む姿勢、研究者やコーチの姿を見せれば、それがそのまま教材になりますし多チャンネル化されたら各競技のレベルに応じた解説のチャンネルを作るのもいいですね。そうすれば五輪や世界選手権を見る楽しみが増えるでしょう。

 

Q スポーツ報奨金については?

A 必要ですが、選手が人間としてわが国の発展に何をもたらせるかが、実は一番大事

 川岸 五輪といえば、メダル報奨金をどう思われますか。

 馳  五輪のメダリストがいかに国民を勇気づけるかを考えると、私はむしろ年金制度にした方がいいと思っています。「メダル年金」で満65歳になったら、金メダル一個につき毎月30万円、銀メダルは20万円、銅メダルは10万円で全額国庫負担とか。

 川岸 いいですね、選手はやる気出ると思います。外国では家をもらったり、一生面倒みてもらったりで、それに比べると日本は安いですから。

 猪野 でもスポーツは報奨金が出るから頑張るものじゃない。
 選手が結果に満足できればそれでいいと思います。年金制度を作っても、受け取るかどうかは本人に任せた方がいいのではないですか。

 川岸 金メダルの報奨金300万円という話を新聞で見ましたが、私はもっと多くして「お、やったな」という方がいいです。今まで評価が低過ぎたと思います。

 馳  こういう議論が出ること自体が日本的なんです。日本の武士道精神から言えば報酬を求めて自己を磨くということはあり得ない。道を極めるためであって生活の糧を得るためではない。これは日本独特の精神文化で、これも一つの考え方でしょう。
 ただ、現在のスポーツを取り巻く社会環境や社会的な影響力を考えたら、五輪でメダルを獲った選手に対する報奨制度はあっていい。いずれにしても、それを目標にして生きて欲しくはないですね。

 女子マラソンでニ大会連続メダル獲得を達成した有森裕子さんが非政府組織(NGO)を作り、カンボジアの地雷で足を失った子どもや貧しくて学校に通えない子どもたちに走る喜びを伝えたり、イベントを開いたり、機材を提供したりしています。メダリストとして一つの生き方だと思いますね。

 またスポーツに強くなるだけでなく、厳しい環境の中で学んだ選手が、人間としてわが国の発展に何をもたらせるかが、実は一番大事なことなのです。
 国立スポーツ科学センターを見学して日本のスポーツ政策、アスリートを取り巻く環境を理解してもらえたと思います。スポーツはただ強ければいいというものじゃないということを分かっていただければありがたいと思います。

 わが党としても政府としても、できる限りスポーツ科学センターやナショナル・トレーニング・センターの整備を進め、日本のスポーツ振興に努めていきます。
 最後に、アテネ五輪への期待をどうぞ。

 川岸 選手には悔いのないように頑張って欲しいですね。あとは結果がどうあれ拍手です。

 猪野 ここで練習した成果が、結果として出ることを期待しています。


クリックを終えて

 川岸 淳一郎さん こういう施設があることは知っていましたが、雑誌で読むのと実際に見るのとでは大違いでした。日本のスポーツ科学の現状がよく分かりました。
 馳先生は人柄も体も大きく、気さくで話しやすかったです。私はプロレスが大好きでプロレスラー馳ファンだったんです。馳先生のような議員が増えてくれたらいいと思いました。国民の意見をざっくばらんに聞いてくれそうですから。

 猪野 浩二さん 楽しかったし、勉強になりました。今私は家の近くのスポーツジムに通っていますけど、日本のトップアスリートをサポートする施設は次元が違うと感じました。
 馳先生は想像していたより気さくでスポーツに対するすごい情熱を感じました。先生の言われる武士道の精神とここの科学がうまくマッチしたら、日本のスポーツレベルはもっと上がると思います。 


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