官庁ニュースの専門誌 月刊「時評」 平成16年7月号 掲載


政務官 日誌

政務官に欠かせない、臨機応変な対応

日記をつけて頭を整理

★政務官として行政に身を置いた感想からお伺いします。

 行財政システムとしては非常に優れた組織であり、組織を構成する優秀な人材が多い、それをまず実感しました。あと意外に思ったのは、食堂をはじめ諸設備が質素なことですね(笑)、ゆっくり食事を楽しむ間もないほど多忙であることのあらわれでしょうが、職場に潤いというか、もう少し遊び心がほしいかな、と。

 

★政務官は教員免許を持ち、かつプロレスラーとしてリング上で活躍した後国政に出るという異色の経歴をお持ちですが、就任以来これらの経歴が政務官の仕事に活かされたと実感した点などは。

 プロレスに関して言えば、その場の状況に合わせた臨機応変な対応ですね。文部科学省としては厚生労働省や環境省との連携が最も多いのですが、政務官の役割はまさにこうした省庁同士の連携において調整や折衝にあたる、その部分に求められていると思います。

 

★政務官は制度改革論をはじめ様々な角度から教育問題全般に対して持論を展開されていますが、そうした多方面の活動に傾注するための秘訣やコツのようなものは。

 毎日、日記を書いているのがコツといえばコツです。国会議員になって以来、朝から晩まで会議に出席し、いろいろな分野について答弁を求められる日々が続きますから、常に問題を把握し、頭を整理させておく必要があります。日記はそうしたスケジュールの確認と、明日やるべきこと、今週のうちに考えておくテーマ、という具合に短期的スパンのなかで取り組むべき事がらが整理されるのです。これを毎日続けることで、一か月から一年先というもっと長期のスパンで、自分のなすべきことを展望できるようになります。

 

★日記の習慣はいつから?

 20歳のとき、私が大学生の頃からつけています。ゼミの恩師より、「教員になるべき人間は記録をつけるということに臆病になってはいけない」と教えられまして。そのとき、必ずボールペンで書きなさい、消しゴムを使ってはいけない、常に緊張感を持つように、とも言われました。以来、今はパソコンを使っていますが、とにかく毎日書いています。

 

★他に議員活動のうえで気をつけていることなどは。

 酒を過ぎないことですね。体調管理という面もありますが、教育論にしろ政策論にしろ、酒を片手に語り合うべきではないと思います。政治家が政治を語るのは本業ですから、酒を呑みながらでは本業はなしえません。またその他の体調管理としては、近くのジムで泳いだり、また母校・専修大学のレスリング部の監督をしているので、週に一度は学生に胸を貸しています。一週間のうち最低3回は身体を動かしていますね。

 

★学生の様子はどうですか。とかく「最近の若者は」と言われがちですが。

 一生懸命なのもいれば適当なのもいる、それは昔も今も変わりません。ただ彼らを取り巻く社会環境が変わっているので、いろいろな面で世相にあわせた生活のあり方を指導しています。練習を終えたあとの食事の席などでは、将来どうするのかという話を必ずします。自分は将来何になりたくて、そのためにはどうすればよいのか、何を人生の目標に定めるべきなのか、それを考えさせるのが監督である私の仕事です。まだ彼らは自分の描くものを言葉に出来ないことが多いので、できるだけ会話を通じてその気持ちを具体化させていくようアドバイスしていきます。

 

 「資料を見ないで説明を」

★では、職員の人たちと接するときに気をつけていることなどは。

 なるべく、資料を見ないで説明するよう求めています。資料の内容が頭に入っているかどうか、つまり当人が政策に対してビジョンをもって仕事をしているかを問うているわけです。職員個々が仕事をどう把握しているかを聞き、そのうえで次にどうすべきか、考えや意見を開くようにしています。実際に資料なしの説明を求めても戸惑う様子は見られなかったし、皆それぞれビジョンはいくつも想定しているのです。それをこちらが引き出すような話をしなければいけない。例えば現在、河村大臣の肝煎りで子供の居場所作り″新プランを進めていますが、放課後児童健全育成事業の位置づけでとらえると、厚生労働省の学童保育と重なる部分があるし、地域のボランティアの方々との連携も必要です。こうした横の連携をつなげ、発展させることが日本の教育政策にどのようなプラス効果をもたらすのか、そうしたビジョンを描ける政策の立て方をしているのかを日々会話を通じて確認しています。

 

★教育関係以外で最近力を入れているテーマなどはありますか。

 地元からの声としては、介護をはじめとした福祉関係がやはり多いですね。これは少子高齢化の進行のなかで要・介護者の増加だけではなく、産業面から見た介護・福祉をどうとらえるかを意味しています。私の地元・金沢には、景気の波が東京より3年遅れて到達するのですが、現状の回復傾向を見るとリストラなど生産コスト低減による増益がほとんどです。そうなると、一定の規模をもつ新たな雇用の受皿作りが要請される。公共事業が見込めない今後、クローズアップされるのが介護であり、続いて環境、観光、デジタル家電なのでしょう。分野に限りがあるものの、とにかく地域活性化に結びつく発想がいま求められています。

 

★古都・金沢などは他の地域に比べ、観光資源の豊かなところに見えますが。

 確かに歴史と文化の町ですが、それをどうソフトとして提供していくかが問題です。同時に、観光客と並んでいま力を入れているのが、各種学会や研究会の誘致です。これはまとまった数の人が来る。先頃も常陸宮殿下・妃殿下をお招きした第八回アジアー太平洋電子顕微鏡学会を開催しましたが、集客はもちろん地元・金沢をアピールする絶好の機会になりました。この学会という分野をもっと注目したいと思います。

 

★政治信条や座右の銘などは。とくに政務官は古典に精通しているので、引用するとしたら?

 基本的な政治信条は、「子を育て、妻を労わり、親護ろう」。これは教育に関わる基本的なスローガンとして、私の中で変わることがありません。

 座右の銘としては、論語の冒頭にある

學而時習之、不亦説乎、

有朋自遠方来、不亦楽乎、そして

人不知而不慍、不亦君子乎、「人知らずして慍みず、亦た君子ならずや」ですね。

周囲が自分の本当の価値を認めてくれなくても不平・不満を言わない、認めてもらえない自分を反省し、認めてもらうよう努力すべきである、日々自分を戒める大切な言葉です。 


◇ 「時 評」 (昭和34年発刊)◇ 毎月1日発売! 定価:(457円+税)

「霞が関」に関する唯一の総合情報誌として、創刊以来40年わが国最大の発行部数を誇る月刊専門誌。

毎号、1府12省庁の官僚の素顔と政策に迫り、同時に全省庁のホットな人事動向をあますところなく掲載。


馳浩 in Mediaメニューへ戻る



メールをどうぞ


ホームページへ