「週刊宝石」 平成12年3月2日号
南原清隆の裏リンたま

Round 39 戦う参議院議員・馳浩
通が認める“プロレスの名人”馳は、新日から全日へと戦いの場を
移した現役唯一のレスラー。彼の目に両メジャーはどう映っている?


 (南原)参議院議員にして現役プロレスラーの馳浩選手。全日、新日、両メジャーで現在のトップレスラーと直接肌を合わせたのは、彼ひとりでしょう。
 僕個人としては、新日時代の「vs蝶野正洋」戦が好きでしたね。テクニシャン同士の深みのある試合。あらゆる手練手管を駆使する蝶野を、馳は逆手にとった心理戦に持ち込んで、まさに丁々発止の攻防は見応えがありました。
 やっぱりファンとしては、単刀直入に「新日と全日、実際に試合してみてどーなんですか? 違いはあるんですか? 選手のレベルは?」というようなことを聞いてみたいですよね。

 

馳先生のレスラー通信簿100点は、三沢と武藤

 

全日と新日、リング上で感じる雰囲気の違いは?

 ん〜、全日の会場は、お客さんが腰を落ち着けて試合を観ているね。逆に新日は、身を乗り出して観ている。だから、全日の会場にはおおらかさがあるし、新日の会場には殺伐さがある。ちょっと全日の会場は元気がないかなあ。お客さんが安心して観てるっていうのもあるだろうけど、若い選手が、もっと元気を出せばいいと思うな。
 ただ、ファンの人たちを大切にするという意味では、全日の姿勢は素晴らしい。全日はリングサイドも一般のファンで囲まれているんだけど、新日はスポンサーや関係者が多い。できれば、もっとファンの人たちがリングサイドで観戦できるようにしてほしいね。

“プロレスの先生”として、現役トップレスラーに点数をつけてください。

 基準として、新日の武藤(敬司)と全日の三沢(光晴)を100点としよう。新日は、蝶野が98点、橋本(真也)が97点、(佐々木)健介が90点かな。全日は川田(利明)が99点、小橋(健太)が98点、田上(明)が97点、秋山(準)が90点だな。人それぞれ見方が違うかもしれないけど、俺の感じだから。

インディーズ団体のレスラーは、何点ぐらいになるのか?

 ひと言でいうと、レスラー個人の基本的な能力差が大きすぎる。ん〜、まあ、赤点だな(笑)。

武藤、三沢を100点とする理由は?

 その懐ろの深さ、レスリングの幅の広さ。オールラウンドに対応できる。
 両メジャーともに年間100試合以上やるなかで、会場に足を運ぶお客さんにとって当たり外れがあっちゃいけないんだ。地方会場であろうと、東京ドームであろうと、後楽園ホールだろうと、常に期待以上のものを出せるのが、団体を引っ張る看板レスラー。その部分で、やっぱり三沢と武藤は頭ひとつ抜けている。対戦相手や会場の大きさを計算に入れて試合を組み立てる“プロレス感性”を持っているということだ。

三沢との初シングル戦(1月9日、馳がエルポー封じの執拗な右腕攻撃であと一歩まで追い込んだ)で、改めて体で受けた印象は?

 楽しかったよ。なんて言うのかな、腰の切れがいいよね。よっぽど腰使ってんのかな(笑)。
 見た目の筋肉というより、体の裏側の筋肉の充実を感じたね。レスリングにとって重要な背筋、腰の強さ、下半身の重さ、そういうところだ。だから、引きが強いし、技の的確さも生まれる。そのへんも武藤と共通するところで、肉体面も2人はズバ抜けているんだな。
 あと、三沢はよく“受けの天才”と表されるけど、あれは試合中相手をよく見ているから。自分の体の位置とか、お客さんの目線まで注意している。それが体に染み付いているのが、素晴らしいと思ったね。

プロレスの楽しさとは?

 死にそうにしんどい練習中、リングに上がる直前の緊張感、試合で相手に思いきり殴られたときとか、全部楽しいよ(笑)。終わって飲むビールもうまいし、退場の花道でお客さんが体を触りに来てくれるのも嬉しい。いろんな要素があるよ。まあ、会場に来てくれたファンの人たちと一体感を持てたときが、喜びでありプロレスラー冥利に尽きる瞬間ってところかな。

プロレスファン最大の関心事『全日vs新日』交流戦は、噛み合うのか?

 『三沢vs武藤』、観たいよねえ。リスペクトし合ってるレスラー同士が戦えば、そりゃあ深みのあるいい試合になりますよ。あとは『川田vs橋本』『小橋vs蝶野』『永田(裕志)vs秋山』とかね。そのクラスになれば、初顔合わせでも間違いなくレベルの高い試合をする。
 ただ、お互い会社組織だから、交流戦で盛り上げるというよりは、さらなる個々の選手のレベルアップ、団体の強化に力を注ぐのが本道だと思う。そのうえで10年に1回ぐらいぶつかるっていうのが、いいんじゃないかな。
 もうひとつの方法としては、合同興行。それぞれの選手が直接戦わなくとも、新日と全日の試合を交互にやるとかね。ファンは1枚のチケットで両メジャーを楽しめるし、選手も刺激になる。そういう“交流戦”もいいよね。

モノマネ芸人・神無月が『リンたま』でも馳選手の真似で人気を集めているが、観たことは?

 1回だけ。ありがたいことですよ。わざわざ4万円かけて特注のタイツとシューズを作ったらしいじゃないですか。似てると思うし、女房(高見恭子)にもウケてましたよ(笑)。俺のとこに来たら、Tシャツぐらいあげようと思ってるんだよね。

読者のみなさんへのメッセージ。

 プロレスは、肩の力を抜いて楽しんでください。そのなかから生活への活力やエネルギーを得てもらえれば、すごく幸せなこと。国会の状況次第ですが、次は全日のサマーシリーズに上がるつもりですので、よろしくお願いします。

 

南原)まったく違う世界で仕事を全うすることは、想像以上に大変なことでしょうが、これからも国民(特にプロレスファン)のために頑張ってください。期待しています。

 


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