馳浩の
   永田町は、ほっかむり・・・

 

平成12年4月12日大阪新聞掲載


 

森首相はこんな人だ!!

 

 4月7日の参院本会議場午後2時。巨体を揺すって森喜朗首相が入場してきた。期せずして自民党・公明党・保守党の議席から拍手と歓声がわき起こる。うれしそうにていねいにおじぎをする新首相。「いよっ、親方ー!」とか「カンロクあるゾー!」とか「太りすぎだゾォ!」などと与党席からやじが飛ぶ。からかわれているのに、ニコニコとそれを受け流す。念願の総理大臣のイスに喜びを隠し切れないところがかわいらしい(?)。

 いよいよ、所信表明演説。この日を待ちかねていた地元石川県からは、傍聴席に支援者が多数駆けつけている。そちらへも目で合図をし、議場内の顔見知りの議員にも、与野党を問わず黙礼を返している。小渕さんゆずりの気配り型の総理大臣だ。

 実は私は森氏直系の子分。5年前に当時、幹事長だった森さんに発掘されて参院議員選挙に立候補した私にとっては政界の師匠にあたる。そして、公務多忙な森首相、瓦力防衛庁長官を支える自民党石川県連会長をつとめさせてもらっている。百戦錬磨の県議の中で私が会長の任を全うできるのも森首相の後見役あってのこと。公私ともに全幅の信頼を寄せているゆえんが、親分子分の関係だ。

 森首相はきげんの良い時とそうでない時がはっきりしている。例えば必ず自分でかけてくる電話でも、最初の一言で、その腹の虫の居所がすぐにわかる。

 「モシモシ。あー、森ですが、・・・」という時は、ハッピーな時。声も軽やか。

 「あのネ、・・・」といきなり用件から始まる時は要注意。何かトラブルが発生してきげんの悪い時だから、注意して対応しないとゲキリンに触れかねない。でも「あのネ」から始まる電話は信頼できる身内(秘書や家族同然のおつきあいの人)にしかしないので、私も「あのネ」と低く抑えた声の電話を初めていただいたときに、少々ビビッたと同時に、俺もようやく身内扱いにしてもらえるようになったか、とうれしくもあった。

 そんな感慨に浸りながらも、私は新総理を冷静に自席からチェックすることを忘れなかった。地元が同じであり、同じ政党であり、同じ派閥であるだけに、身内ぼめの気分にばっかり酔っていてはいけない、何か気付いたことがあればすぐにお伝えしなければ、との親心(子心?)がムクムクと頭をもたげてきたのである。

 案のじょう、心配していた欠点を発見した。感情が表情にあらわれやすい、という欠点だ。所信表明演説の中で「図らずも総理指名をいただき・・・」と「天命と思い・・・」の部分で野党席から「筋書き通りだろ」「やりたかったんだろ」のやじが飛んだら、露骨にそのやじの方向にガンを飛ばしてにらみつけたのである。小渕さんなら天をあおいで探呼吸して受け流したのに。これでは野党からすれば攻撃しやすい、挑発しやすい人物と受け取られてしまう。どうか、からだのように、おおらかに柳に風と受け流せるように、と願うばかり!

 

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