馳浩の
   永田町は、ほっかむり・・・

 

平成12年3月22日大阪新聞掲載


 

まるで駄々っ子?

 

 『こんな交渉事を覚えたところで、一般社会に出て役に立つのか?』

 国会内の控室で、吉村剛太郎国対副委員長が苦笑まじりにボツンとつぶやいた。同席していた私は心の中で(役に立つはずねぇじゃん!)と答えた。他のだれもが私と同じ答えであることは、顔色に出ていた。その場には、しらけた重苦しい空気がただよう・・・。

 ことの発端は、つるしを下ろす、下ろさないの民主党によるかけ引き。

 つるし、とは国会用語。本会議での提案理由説明を省略して、各委員会に法案を付託することを『つるしを下ろす』という言い方をする。つるしを下ろさない、またはつるしをかけるという野党の国会戦略は、当然審議の引き延ばし作戦。

 共産党もしょっちゅうつるしをかけることはある。でも、それには筋の通った理由がある。法案の内容に異論があったり、議会運営の前例や原則がゆがめられそうになったりしたとき。だから、筋道を立てて説得すればつるしを下ろすことに応じてくれるので与党としては対応しやすい。良識的だ(頑固だけど)。

 ところが今回の民主党のつるしを下ろさない理由は「?」なのだ。理屈が通っていない。

 文教科学委員会で、民主党提案の議員立法(30人学級法案)をお経読み(これも国会用語。趣旨説明のこと。提案者が用意された文章を棒読みするだけなので、まるでお経を読んでいるみたいだから)させないと、他の委員会に関係する法案をすべてつるしにかける、というのである。これじゃまるで、他の法案を人質にとって自分の党に有利な議員立法を取引材料にかけ引きをしかけてくるなんて、国会の私物化じゃないの? と首をかしげたくなる。

 3月末のこの時期は、年度内に成立させなければならない日切れ法案や、予算を執行するために必要な予算関連法案がどんどん衆院から送付されてきて、参院はてんてこ舞い。ほとんどが全会一致の法案で、形式上の手続きとして審議をするということはみんなわかっているのに、民主党だけが30人学級法案のお経読みが終わるまで他の法案のつるしは下ろさない、と突っ張るのである。

 まるで、駄々っ子?

 民主党の言い分はこうだ。「この30人学級法案のお経読みは前国会からの約束だ。だからお経読みをしろ」。そこで与党としては「じゃあ、お経読みの後に審議しますか?」と問うと、「いや、それは、ちょっと・・・」と口をもごもご。そりゃそうだ。過半数がないのだから成立の可能性がないのに審議を続けても実りがないことは民主党自身がよく分かっている。とにかく民主党は30人学級法案を国会に提出していますヨ、というパフォーマンス。

 結局、お経読みをさせることで、他のつるしを下ろしてもらうことで決着した。でも、このかけ引きが一週間も続いた。はぁ・・・。

 

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