馳浩の
   永田町は、ほっかむり・・・

 

平成12年1月19日大阪新聞掲載


 

官房長と神経戦

 

 国会開会前の一週間。永田町は依然として静かだ。私もプロレス巡業の合間をぬって資料整理や日程調整のために参院議員会館にやってきたのだが、すれ違ったのは斎藤十朗議長のみ。その議長にしたって、うちの愛娘、りおんちゃんを「かわいいね−」といってあやしはじめちゃって。そのへんの好々爺って感じ。 ま、国会きて子守りしている俺も俺だけどね。ここが共働き(女房=タレントの高見恭子=はNHKでテレビ収録だって)のつらいところよ。はあ・・・。

 そうは言うものの、事務所にいればいたで、次から次へと来客。きょうは労働省、文部省、科学技術庁、経済企画庁、通産省の各官房長が、通常国会で提出予定の法案説明にやってくる。こうして自民党の国会議員は、いち早く役所から情報をもらい、官僚からヨイショされて、霞ヶ関のいいなりになってドツボにはまっていくんだよなあ・・・と、心の中では思っていながらも、さりとて国会は政府与党一体の中で運営されている事実は事実。与党の国会議員か政府の代表(大臣、政務次官)になっているのだから、われわれヒラは下支え役をしっかりやらねばならないわけだ。本音と建前のはざまだ。

 にしても、各省庁の官房長はまるでコメツキバッタのように頭を下げ、腰を折り、法案の説明にやってくる。そして私のような38歳の(国会では)洟垂れ小僧にまで、最大級のけいごとヨイショを駆使して、ごきげんうかがい。最初のころは、何も事情をしらない私は有頂天になったりしたものだ。しかし、永田町にいること5年目ともなれば、高級官僚の下心も少しは見抜けるようになってきた。そう、彼らは本心から頭を下げているのではなく、いかに与党の情報を集めて自分の役所の仕事をスムーズに進行させるかのために、国会議員を手玉にとっているだけなのである。これが本音だ。

 公共事業の割り振りの権限を握っている建設相のお役人なんて、その辺のところは心得ていて、事前に選挙区の道路事情や河川改修の情報を握っておいて、それを小出しにしながらわれわれ国会議員をウマく操るのだ。

 われわれだって地元一丸になって継続している公共事業関連の情報は一分でもはやく欲しい。ギブ・アンド・テークではないが、お役人だって自分の所管の予算や人員をちょっとでも多く確保して権限を強化したい。それが人事の際のポイントになるのだから、ますます官僚機構は肥大化する、という悪しき構造なのである。だから私は、官房長が法案説明にきても、必ずナンクセをつけたり、宿題を出すようにしている。ポイントは、行政改革に逆行していないか? だ。

 これから10年かけて公務員を20%カットしていかなきゃいけない時代に、政治家が見過ごしておくと、また勝手に独立行政法人や外郭団体を作って公務員の付け替えをやりかねないな、高級官僚って、まったく油断がならない。

 そんな水面下の腹のさぐりあいをしながら、通常国会一週間のこの時期、官僚は与党国会議員の顔色をうかがって頭を下げているのである。神経戦だ。

 

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