ジュニア大特集! 藤波、タイガーから 飯伏まで総登場
Gリング 2008 vol.007


夏目ナナの闘魂小町ドキッ
【馳先生の講義を受けてみたい】 

 4月某日、夏目ナナが永田町の衆議院第一議員会館を訪問。今回のターゲットは、自民党の馳浩(衆議院議員)先生だ。 対談前に、プロレスラー馳浩のド派手なパフォーマンス満載ビデオを観戦してきたナナちゃんだけに、一体どんな人物なのかと興味津々、戦々恐々。 ところが、場所が永田町だけに(?)、なんと永田裕志まで突然の乱入! さあ、一寸先はハプニングの対談スタートだ。

 企画&進行/金沢克彦  撮影/大川昇  友情出演/永田裕志  

 

夏目・・・馳さんって文部科学副大臣さんだったでしょ? 教育問題ですよね。 で、1回、試合の後に倒れはったことあったじゃないですか。

馳・・・・・・そういうまともな話するの?

夏目・・・そうなんですよ。 で、それから女遊びが激しくなったんでしょ?

馳・・・・・・よしなさい、ここ一応、議員会館なんだから! 金沢情報だな、まったく・・・・・・。

  −当時は独身だったから、いいじゃないですか(笑)。

馳・・・・・・まあ、永田君もいま凄い困ってるんですけど、俺のときは1990年だから・・・もうずいぶん前だなあ。 で、脳内出血で倒れて。 倒れたあとは全然覚えてないんだけども。 その後ちょっと後遺症が残ったりしながら。 今でも少し残ってるけど、プロレスができないほどではないから。 いつまた倒れるか分かんないし、脳の中の話だから、わかんないじゃん。 まあ、とりあえず体は元気なんでね。 やる以上は悔いのないように。 自分をさらけ出して試合ができるようにってことで、開き直ってから人気が出るようになったんだよな。

夏目・・・それまでっていうのは、そういう考え方じゃなかったってことですか?

馳・・・・・・要は自分で自分にブレーキをかける時期ってあるわけよ。 まだ体も十分、超一流のプロレスラーほどできてないし。 メインイベントするほどの能力もないし。 それなのに派手な試合やったって、強く見せようとしたって出ないんだから。 むしろ実力がつくまでは派手な技を使わなくても、お客さんが納得してくれるような試合をするように、あえて自分で枠を作って。 あまりメインイベンターとかの邪魔をしないように、自分の役割をきちんとするプロレスラーっていうのかな。

夏目・・・それが一転して、今までの自分は捨て去って、 「いや、違う! 邪魔していこう」 みたいな。

馳・・・・・・邪魔するしないっていうよりも、その与えられたポジションって必ずあるから。 メインイベントとかテレビに映るとか関係なしに、自分が3試合目なら3試合目、4試合目なら4試合目、7試合目なら7試合目で、 「今日、試合が終わって倒れてもいい」 って思えるぐらい納得した試合をやろうっていう発想があったんですよ。

倒れてから女性関係がお盛んになったらしいですね?
プロレスも女の子と遊ぶのも合意が必要なんです(笑)

夏目・・・プライベートでお盛んになったのも、発想が変わったからですか?

馳・・・・・・それ真面目に聞く話なの?(笑)。

夏目・・・違うんです! 私、そういう臨死体験なんてしたことがないから、ホントに、どんなんかなと思って。 私はいま28歳で、前にやってた仕事からシフトして、やっと芸能界でやっていってる感じなんですけど、やっぱり自分の中でいろいろ思うことがあってね。 馳さんの記事を読んだときに、どういう気持ちだったのかなとか、いろいろ聞きたいんですよ。

馳・・・・・・まあ当時、永田が入って来たぐらいの頃かな。 道場でコーチもやっていたから。

永田・・・はい。

馳・・・・・・道場生が7〜8人いたもんな。 だから、練習は一生懸命やれと。 あと、やっぱり商品だからね。 結局、子供たちと若い女の子にモテなきゃダメなわけですよ。見た瞬間に 「カッコいい!」 とか 「素敵!」 とかさ、憧れるようないい商品になってもらわないといけないから。 そういう意味では私生活は好きなようにやっていい、と。 次から次へと女の子を騙くらかしてもいいし、逆に騙されてもいいから、そうやって数こなしていかないと覚えない。 何を覚えるかっていうのが大事なことで、一線があるわけ。 ある一線を超えないといけない部分がプロにはあるわけよ。

夏目・・・ある一線ってなんですか?

馳・・・・・・まあ、ある一線を超えた○○君を道場の下で生活させたことあったけど(笑)。

夏目・・・そうなんですか、その一線ですね。

馳・・・・・・ある一線っていうのは、これは簡単な話だよな。 合意であればいいんですよ。 これはプロレスと通じる話なんですね。 女の子とお付き合いをするとか、女の子に好意を持ってもらうっていうのは、まさしくプロレスなわけよ。 お客さんの前やテレビを通して、たくさんの人に 「永田の試合を観てみたい」 と思われないと、チケットも買ってくれないし、商品として試合もさせられないんだから。 そのある一線のところが理解できるまでは。 で、その一線っていうのは合意がなきゃダメなわけよ。 だから合意を結ぶには、その場の空気を読めなきゃいけないし。

夏目・・・ああ、なるほどね。

馳・・・・・・だから、○○君にも一番大事なところを教えなきゃいけない時に、俺が新日本プロレスを辞めちゃったんだけどさあ。

永田・・・アッハッハッ、名前出せないなあ。

馳・・・・・・いや、ぜひ出しといて。 だから、せっかく営業とか広報とかが積み上げて、試合の場を準備してくれるんだから、その空気をさらに超える試合を見せて初めてナンポなわけよ。 「ああ、次も観に行きたいな」 と。 そのお客さんの期待とか空気をガーッと引きつけるには能力も必要なんだけど、それが分かって初めて合意を超える、ホントに凄いっていうね。 それも一過性のものじゃダメなの。

夏目・・・はい、そう思います。

馳・・・・・・それは東京ドームであろうと、後楽園ホールであろうとですよ。 なんらかの期待を持って来てくれるお客さんに対して、その期待度を試合が始まって下げちゃダメなわけよ。 試合が終わったときに爆発させなきゃいけないんだから。 一番いいのはね、女の子とお互い裸になってね、尻の穴を見せ合うぐらいの人間関係を作れなきゃダメなわけ。 だから合意が必要なんです。 なんか、だんだん調子に乗ってきたな(笑)。 俺がみんなに教えた教訓があるわけですよ、 「心開いて股開け」 とか、 「腰振り合うも多少の縁」 とかね、 「1回会えばお友達、2回会えば兄妹同然、3回以上は愛人関係」 とかですね。

夏目・・・・・・アッハッハハ…はい。

  − 「酒は残って、女は逃げる」 なんてのもありましたねえ(笑)。

馳・・・・・・そうそう、さすが同世代だな(笑)。 そんな真面目に聞く話じゃないけど。 「口は腰ほどにものを言う」 とか。 そのぐらいの空気を作っていくのがレスラーの、それがいわゆる試合を作るとかであって。 そして会社から見れば、安心して永田にチャンピオンを任せても大丈夫だとか。 あるいはワケのわからない外国人レスラーと試合をさせても、永田だったらちゃんとテレビで放映するに値する試合を提供してくれるとか。 そういうふうに自分のことだけじゃなくて、相手選手のこと、試合会場の空気のこと、会社全体のこと、もっと引いた目で見れば、この日本社会におけるプロレスっていうジャンルのありかたを考えたとき、そういう空気を常に読んでおかなきゃいけないんですよ。

夏目・・・合意があって、そのうえで一線を超えるかあ。

馳・・・・・・うん、それは試合を観るお客さんとの合意、あえて言えばプロなんだから、その合意の一線を超えたところをプロデュースするセンスがあるかどうかっていうのは教養がなきゃダメなの。 社会人として、歴史のことも知ってるとか、政治のことも知ってるとか、経済のことも知ってるとか。 たとえば道場での練習が厳しいのは当たり前として、遊びたいときは飲みに行ってもいいし、女の子と遊びに行ってもいいし。 何人と付き合ってもいいし。 でもケツは自分で拭けよと。 それができないと、ホントの魅力のあるプロレスラーにはなっていけないよな。

現役時代は空気を読むのに何を考えていたんですか?
自分の人生観をあからさまにしてリングで出すんだよ

夏目・・・じゃあ、現役のときの馳選手っていうのは、プレイヤーとして空気を読むとか、それは女の子とのこと以外になんかあったんですか?

馳・・・・・・あ、そういうこと聞きたいわけね。 だから、分かりやすくいえば、エネルギーのあり余ってる若い男はですね、やっぱり女の子と付き合いたいわけですよ。 やっぱ楽しいから。 それ以外には、それぞれ人生設計ってあるじゃん。 人生設計のゴールは、死んだあとにどういう評価を残すかっていうこと。 死ぬことがゴールじゃないんだよ。 夏目さんが死んだ時に、夏目さんという人はどういう評価だったのかっていうことを周りがするわけだから。 それを考えたら、自分はどういうふうに評価してもらえるか分からないんだけども、じゃあ自分のできることで、俺の場合は教育の現場にもいたし、あるいはみんなと一緒にプロレスもやっていたし。 プロレスっていうのは50(歳)過ぎてもなかなかできないだろうから、そしたらまたプロレスとは違う社会で生きて評価を受けて、ハッキリ言えば年収600万以上は稼げる人間になっておかないと家族を養えないし。 家族っていうのは自分の女房、子供だけじゃなくて、親もいるわけだから。 プロレス辞めたあとも年収600万ぐらいは稼げるぐらいの、なにがしかの能力がなきゃいけないし。 そういった時に、せっかくいまプロレスラーをやってるんだから。 対戦相手がいて、お客さんがいて、会社があっての俺なんだから、そういう自分の人生観っていうのをあからさまにね、計算しなくても、シナリオを書かなくても瞬間瞬間にそういったものをリングの上で出してかなきゃホントのプロレスラーにはなれないわけよ。 それをずっと考えてた。 そういう引き出しっていうか哲学をどれだけたくさん持ってるかによって評価されるし、プロレスラー1人1人のそういったものが評価されてプロレス業界ってものが評価されるから。

夏目・・・プロレスラーであって、1人の社会人として、ですね?

馳・・・・・・そう。 歴史を紐解くと昭和29年に力道山先生が日本で初めてプロレスをやったわけですよ。 それからテレビが普及するのと同じように昭和30年代に入って、敗戦のどん底の失意の思いから、我が国もアメリカやヨーロッパに負けないように、もっと経済成長していこうと国民みんな頑張ってた時期ですよ。 そのときプロレスっていうのは最高の娯楽だったんだよな。 日本という社会の中でプロレスが果たしてきた役割っていうのはとても大きいんだよ。 国民を励ましてきた、喜ばせてきたのがプロレスだったわけですよ。 そういうものを理解するには、何度も言うけど、プロレスラー自身がいろんな教養や哲学を持ってないとつまんない。

夏目・・・プロレスラーになられて、いま議員さんになられてるじゃないですか。 いつ頃から議員になろうと思ったんですか?

馳・・・・・・あれは忘れもしない1995年だな。 ちょうど平壌(北朝鮮)から帰ってきて、5月15日だったかな、自由民主党本部の4階の幹事長室に呼ばれて、当時の自民党の幹事長の森喜朗さんから、 「実は故郷で参議院選挙の候補者がいないから出てみないか?」 って言われて、3秒考えて 「私でよければ出ます」 と。

レスラーから議員になるとき葛藤はなかったんですか
3秒で決断したよ! 一番大きかったのは北朝鮮の訪問

夏目・・・なんで3秒で答えが出たんですか?

馳・・・・・・3秒で済んだの。 自分が教員だったということと、平壌に行ったことだったな。 あとで自分でもね、 「なんで3秒で答えてしまったのかな?」 って反省したんだけどね(笑)。 その日の夜、家に帰って女房(高見恭子さん)に相談したんだよ。 そうしたら、 「そもそも、あんたは政治家をやるための人生を歩んできたんじゃないの?」  と。 「だって参議院選挙の候補者だよ。 それにどうですかって、普通の人は言われないよ。 言われるってことは、当選したら国会議員になってもやっていけるだろうという将来性をその時点で期待されて声かけてくれたんだから、自分が今までやってきたことと考えてきたことを瞬間的に考えれば、やるっていうのはおかしな事じゃないんじゃない? 私は関係ないけど」 ってね。

夏目・・・はあ、結構クールな感じで(笑)。

馳・・・・・・そうそう。 「私だったら、アンタみたいな人に1票入れたいと思う。 けれども勝てない」 と。 だって政治のことなんて何も知らねえんだからさ。 選挙のことだってなんにも知らないんだから。 「だから普通に考えたら勝てないけど、やってみる意味があるんじゃない?」 と、そんな話をしたわけよ。

夏目・・・でも、そのときの葛藤とかいろいろあったんじゃないですか?

馳・・・・・・だから葛藤は全然ないんだよ。 それよりも、俺はプロレスラーをやってて、その前に学校の教員をやってて、いろいろ矛盾を感じた点とか、プロレスラーになって、そのあとプエルトリコに半年行って、そのあとカナダのカルガリーに1年半かな。 その後も単発で中国、韓国、バグダッド(イラク)も行ったし、ロシアも行ったな、ペレストロイカの直後に。 そういうことをフラッシュのように思い出してきて、俺たちプロレスラーっていうのは、その国のある部分、最低の生活を知ってるわけよ。 その中でも生き抜きながら、その国のいろんな立場の人と交流してるじゃん。 こういう立場を経験した人間も国会議員としてやれればいいんじゃないか、と。 それに、自分が疑問に思ってたことができたらいいな、と。 俺は高校の教員もやってたけど、予備校でも教えてたんです。 大学でも7年間かな、教えてたんですね。

夏目・・・疑問を感じたっていうのは?

馳・・・・・・すげえ簡単なことなんだよ。 ナナちゃん、なんのために勉強するの?

夏目・・・生きるためですよ。

馳・・・・・・まあ、それぞれ答えが出てくるよね。 じゃあ永田、なんのために中学校のとき勉強してたの?

永田・・・それはもう義務教育だから。

馳・・・・・・なんで高校のとき勉強してたの?

永田・・・そのときは考えないですよね。

夏目・・・うん、オカンに言われるから。

馳・・・・・・俺、実はそれが一番の疑問だったんだよ、教員やってて。 なんのために勉強するのか、あるいは学校に行くのかっていう。 教員っていうのはメッセンジャーでしかないでしょ。 だって文部科学省の制度を作り、学習指導要領として、たとえば中学校2年生の英語はこのレベルを教えるとか、小学校2年生の国語はこのレベルを教えるとか、そういうのは具体的に学習指導要領で決まってるわけですよ。 その枠の中でやってて、本来なんのために勉強しなきゃいけないのか。 漠然といえば、よりよき社会人となるようにという教育の目的があるにしても、じゃあよりよき社会人ってどんなことなの? そのための義務教育とか、高校教育、大学教育の中で、教員自身がその二−ズに、保護者のニーズと子供たち本人のニーズに応えているのかな、という疑問があったわけ。 なんでかっていったら、校務文書っていうのがあるわけよ。 「じゃあ馳先生は授業はこれを担当してください。 高校3年生の国語の受験対策の問題集をやってください。 高校1年生の古文と漢文と現代文をやってください。 1学期の中間はここまで、期末はここまで。 2学期はここまで」 と。 つまり教科書全部じゃなくて、 「こことここを指導計画を作って教えてください」 と。 「教える先生によって子供たちが身につける学力に差があってはいけないから、これをやってください」 と、当たり前の話よ。 でも、それだとやっぱり仕事に追われる毎日で、なんのために勉強するのか、なんのためによりよき社会人になろうとするのかっていう大きな目的の答えを、なかなか提示してあげることができないわけよ。 早稲田大学を受験する人は、この程度のレベルの問題を解けるようにしましょうとかね。 それってテクニックじゃん。 知識と教養ってまた違うはずだし。 そういったことについて、日本の文部科学省、当時は文部省だったけど、こんなことでいいのかなって、俺は中学生の頃からずっと思ってたな。

夏目・・・だからそっちに進まれたんですか? 文部科学副大臣になったときって。

馳・・・・・・まずはね。 もうひとつは、やっぱり北朝鮮って大きかったよね。

夏目・・・何を感じはったんですか?

馳・・・・・・日本人って、どちらかというと排他的だからね。 まず相手を認めた上で付き合ってあげようっていう感覚はちょっと薄いよね。 これは俺、アメリカ行ったり、ヨーロッパ、ロシアで生活してて思ったことだけども。 向こうはすべてを受け入れた上で、やっぱり一般社会のマナーっていうものがあるから、そこはちゃんと線を引くっていうような、そういう生活の中での意識っていうのがあるわけだよ。 そういうことを考えたときに、俺たち日本人は北朝鮮とは絶対に国交を正常化しないといけないなと思ったよね。

夏目・・・でも、馳さんが、 「選挙出ます」 って言った瞬間、それはもう 「プロレスを辞めます」 だったんですか?

馳・・・・・・それは悩んだんだよね。 で、長州さんはまともな人だったんですよ。 猪木さんを見てたから、 「お前は猪木さんと一緒になったらダメだ」 と。 つまり、両方やって両方とも中途半端じゃなくて、 「プロレスやってたらお前は超一流になると思う。 せっかく政治の場を与えられたんなら、政治の場でお前は絶対超一流になれるから辞めろ」 と。 まともなんですよ、長州さんは。 そしたら当時の坂口社長と永島(勝司)さんは 「もったいないし、政治活動するにも金かかるだろ。 毎月20万円をアドバイザリースタッフとして払うから、月に1回でも2回でも道場に来て、若い衆の話し相手にでもなってくれりゃいいから」 って。 そしたら今度、俺に欲が出たわけですよ。 やっぱ辞めたくないなっていう(笑)。 長州さんは 「やるべきではない」 ってまともな考え方をしてたから、そこはぶつかったわけで。 会社のほうは長州さんが仕切ってたから、会社の方針で引退を発表されてね。

夏目・・・え、勝手にですか?

馳・・・・・・うん、勝手に発表されて。 それはでも、会社としては仕方ないし、長州さんの考え方は当たり前だから。 で、俺もさらに悪知恵を働かせて、じゃあ会社の発表には従った上で会社を辞めて、全日本プロレスに行くことにしたわけよ。

夏目・・・・・・みんな意固地になってね、 「ほんならこっち!」 みたいな感じですねえ。

馳・・・・・・そう、意固地なわけですよ。 だから、それがおもしろいところでね。 今、民主党と自民党って意固地になってるじゃない。 ホントは一歩引きゃあどっかで折り合えるのに、お互いに選挙を意識して突っ走ってるからさ。

最近のいじめ問題とかニートとか・・・どう思われますか
心を開く、自分をさらす・・・プロレスも同じなんですよ

夏目・・・ちょっと子供の話に戻してもいいですか? 今の子供って、昔にはなかったニートとかいるじゃないですか。

馳・・・・・・やっぱりコミュニケーションがみんなちょっと苦手なのかな。 コミュニケーションっていうのは、さっき冗談で言ったけど、 「心開いて股開け」 なんだよな。 相手に対して心開かないと、やっぱりコミュニケーションってできないし。 あともうひとつは、性善説を取らないとコミュニケーションってうまくいかないと思う。 「この人はもの凄い悪い人だ!」 って思ったら、そりゃコミュニケーションなんてできませんよ。 これちょっと学術的になるけど、コミュニケーションっていうのは3つテクニックがあるんですよ。 これは第一段階がアイコンタクト、第二段階がスピークコンタクト、第三段階がスキンコンタクト。 まず人と人がコミュニケーションを取るには、目を見てちゃんとしゃべる。 で、 「こんにちは」 とか 「お疲れさまです」 と。 日本語の場合、尊敬語、謙譲語、丁寧語ってあるから、その場と相手によって使い分けるっていうのもあるけど、挨拶ができて、言葉を交わすことができる。 で、もうちょっと仲良くなって初めて、こうやって手を触ったりとか(※ナナちゃんの手に触れる)。

  −まだ仲良くなってないって!

馳・・・・・・あ、なってないか(笑)。 つまり、日本人だと儀礼的に言えばまず握手。 アメリカ人とかはハグをするとか。 あるいは職場とか学校なんかで肩をちょっと叩いてやったりする。 教員になるとき、教育心理学で習うんだけど、子供たちと教員とのコミュニケーション、子供たち同士のコミュニケーションを取らせるときに、どういうふうに段階的にそれを進めていくか。 どうやって仲間作りをさせていくかっていうのはテクニックがあるんですよ。 教壇は最近低くなってるけど、特に小学校1年生だとこうやって話すわけ(片膝をついてナナちやんと同じ目線で)。 こうやったら安心するわけです。

夏目・・・ふぅ〜ん。 馳先生の時に、いじめとかはあったんですか?

馳・・・・・・いっぱいありましたよ。 いじめのキーワードを一つだけ教えてあげますよ。 凍りついた目なんです。

夏目・・・えっ?

馳・・・・・・いじめられてる子供は凍りついた目になるんです。 喜怒哀楽の感情が出なくなるんです。 長い間放置しておくと、自閉症、鬱病気味になったりするんですけど。 ナナちゃんもいろんな仕事をして、いろんな人を見てるだろうから、 「この人どうなのかな?」 っていうときに目を見るじゃないですか。 「なに考えてんのかな?」 とか。 いじめっていうのはね、やっぱり凍りついた目がひとつのキーワードなの。 永田にもデビューしたときとかよく話したけど、 「前から2〜3列目のお客さんと目を合わせて試合しろよ」 と。 そしたらレスラーが作った目をしなくても、真剣に試合に打ち込んでる目と目が合えば、他のお客さんが見てくれるんです。 ところがレスラー自身の目が散漫で、あっち見たりこっち見たりポーズ取ったりしてると、お客さんも注意力散漫になっちゃう。

夏目・・・へぇー、そうなんですか。

馳・・・・・・まず凍りついた目っていうのをすぐ、先生がそれを察知しておかないと。 そうすると次に言い訳が始まるから。 言い訳ってね、なんで言い訳すると思う?

夏目・・・隠したいからでしょ?

馳・・・・・・何を隠したい?

夏目・・・バレたらダメなことを。

馳・・・・・・そう、自分を隠したいんですよ。 あれは自分に対して言い訳してるの。 それは相手に対すれば嘘になるんだから。 言い訳だなと思ったら、この人は隠したいことがあるんだな、と。 自分を隠そうとしてるな、自分を外の世界と遮断しようとしてるな、と。 いじめをしてる人、自分のことを守ってくれない人に対しては、自分に嘘をついて自分を隠す、それは自分に言い訳する。 なんでいじめられてるんだろうっていうことを、先生としては、友達や他の先生や保護者とともに一つ一つ、玉ネギの皮をむくように、涙流しながら、その玉ネギの芯を開いたら何もなかったっていうときもあるんだけども、そこに到達する作業をしないと、いじめられっ子は心開いてくれないよね。

夏目・・・馳さんが、もしいま学校の先生になってたら、きっといじらめっ子とか心開いてくれそうですよね。

馳・・・・・・大学を出てすぐ教壇に立ったときよりも、今のほうが教員としての能力はあると思うけども、でも今のほうが当時より年取りすぎてるから、子供たちとのギャップもあるだろうなと思うよ。

夏目・・・私、倒れた後の馳さんって、超エロエロに変身したんだって思ってたんですけど、全然違う!

馳・・・・・・ハッハッハッハ!

夏目・・・だけど試合風景とか観てても、馳さんの顔ってなんか 「ワヒャヒャヒャ」 って感じがしたから、そんな人なんやって思ったんですけど。

馳・・・・・・だから俺、そんな人なんだよ。

夏目・・・そんな人なんですか!

馳・・・・・・俺がそんな人だからプロレスを続けられたんです。 それもやっぱり、頭ぶつけてね、二度とプロレスできねえんじゃねえかって思ったとき、そういう人になったね。 さらけ出して。 さらけ出してても、ちゃんとプロレスのルールは守ることができるわけです。 それがね、できないとダメだよな。 なかなかさらけ出せるようになるまで時間かかるよね。

夏目・・・そうなんや。 なんか今日、いいものもらいました。 ありがとうございます。

馳・・・・・・ああ、やっぱり俺、プロレスもやりたいなあ(笑)。

 

ナナの対談後記

 初めて議員会館にお邪魔させてもらって記念になりましたね。 馳さんの印象は…スポーツマンで知的で、なんか愛に溢れる人でしたね。 男性なのに、母性本能を持っているような感じで。 娘さんがいてるって言ってたじゃないですか? 凄い、いいお父さんなんだろうなあって。 私がビデオとかで試合を観てた馳さんとは印象が全然違ってね、エロさじゃなくて知性ですよね。 固い教育問題の話でも分かりやすいし、もっと聞きたいと思ってしまう。 玉ネギの皮をむくように涙を流しながら…とか、例え方も 「あっ、そうやな」 と思うし。 もう、時任三郎さんに次ぐ、ペストパパ賞を贈りたいですね(笑)。


■Gリング Vol.7

ジュニア大特集! 藤波、タイガーから 飯伏まで総登場

●藤波爾巳インタビュー 〜ドラゴン伝説の真実を語る〜

●ジュニア越境対談!新世代vsレジェンド 獣神サンダー・ライガー×飯伏幸太

●ジュニアのカリスマ 金本浩二特写&インタビュー

●昭和プロレス歴史検証企画 初代タイガーマスクvs小林邦昭

●不滅の虎伝説を継承! タイガーマスク・インタビュー

●21世紀最先端大空中戦ファイター BEST5 ウルトラテクニックを連写分析!

  飯伏幸太、義経、内藤哲也、忍、ザ・グレート・サスケ

●夏目ナナの「闘魂小町ドキッ」 馳浩×夏目ナナ

●マスクコレクション 永遠の虎伝説 タイガーマスク「新日本プロレス」編

 *カズハヤシ、ミラノコレクション、大谷晋二郎、永田裕志、鷹木信吾、谷嵜なおき、棚橋弘至

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