第1回 私だけじゃないモン!


 国会議員の幼稚な言いのがれ

 「どうして私ばっかりそんなにいじめるの。他の人だってやってるじゃないの。私だけが責任取らされるの、イヤや」

 と開き直られたりしたら、あなたは一体どうやってその事態を乗り切ろうとしますか?

 それにしても、こういう幼稚な言いのがれ術が、まさか国会議員の口から聞かれようとは思いませんでした。

 与党の疑惑追及で、舌鋒するどく切り込んでいた彼女の、自らの秘書疑惑に対応するしどろもどろの記者会見は、およそ「らしくない」ものでした。

 最初の会見で疑惑を全否定。

 と思ったら、次々と事実関係が明るみに。

 マスコミの追及が厳しくなるや否や、一転して疑惑を認めて謝罪とおわび。

 しかし、疑惑追及していた側が立場がかわって「おわび」だけですむはずもなく、辞職を要求されるハメに。

 ここで出て来たホンネの一言が「私だけじゃないモン」だった。

 ・・・・・おいおい、そりゃないだろう、と私は思った。

 私だけじゃないモン、とみんなの前でグチる前に、やるべきことがあるでしょう。

 疑惑を追及して与党議員に辞職を勧告していた以上は、まず、自分が辞めるのが先でしょ。そして、他の人だって、と言うのなら、誰と誰が、何を、どうやって不正しているのかを明確にすればイイじゃない。そんなことは国会議員を辞めたってできるでしょ。

 そして、記者会見での発言がくるくるくるくる変更とならないように、自らの疑惑の真相を包みかくさず公表すれば良いだけのこと。

 そこで、だ。

 私は何もこの女性を糾弾するために紙数を尽くしているのではない。

 あなたのまわりにいる「私だけじゃないモン」症候群に、いかに対処すべきかを考えてみたいのだ。

 

 相手の話を聞いてあげよう

 世のお父さんお母さん、学校の先生、社長さん、上司の皆さん方に言いたい。

 あなたは、子どもや生徒や部下から、
 「私だけじゃないモン。他にも悪い人がいるモン。どーして私ばっかりいじめられるの、悪く言われなきゃいけないの!! 悔やジー・・・・・」

 と開き直られて責任のがれをされたらどうします??

 私だったら、こうします。

 まずは、頭ごなしに叱らない方が良いでしょう。こういう開き直りタイプは「あーいえばこーいう」が身についています。叱りつければつけるほど、必ずその言葉尻をとらえて反撃されてしまうことになるでしょう。時によっては、逆襲を許してしまうのがオチ。そこでうろたえちゃったりしたら、もう相手の思うツボ。叱っていたはずが、逆に食ってかかられて、あなたが謝らざるを得なくなる可能性もあります。だから、頭ごなしに叱りつけて感情的にさせてはいけません。逆上させてはいけません。

 とにかく、話を聞いてあげる姿勢は見せて、「私はあなたの味方なんだよ。あなたの言い分も理解できますよ。もっと言いたいことを存分に言ってごらんなさい。あなたの不満ももっともなことで、怒りたくなる気持ちはわかるよ。私も同じ立場になったら、そりゃ腹も立つよ」

 と、ある段階、ある時点までは同調することが必要です。

 それはどうしてだと思います!?

 それは、開き直りをするタイプには2つのタイプがあるからです。

 「根っからのウソつき型」と「プライドが高くて自己正当化型」の2つです。

 「ウソつき型」は、顔で泣いて、腹の中ではペロッと舌を出して相手を小バカにする性質の悪さがあります。ウソをつく自分に酔ったりもします。ついには、ウソにウソで塗り固めた虚偽が、本人にとっては真実になってしまっていて、どれが事実かわからなくなることもままあります。そうなると真相はヤブの中。あいまいなままに何も解決しないことになります。だから、話を聞いてあげる姿勢を見せ続けることによって「それ以上」の悪質なウソの上塗りをさせないようにするわけです。爆発させないための抑止力としての役割をあなたが演じるのです。

 それはキツネとタヌキの化かしあい。とでもいうか、心と心のウラの読みあいになるわけですから、相手に揚げ足を取られないような(つまり、言質をつかませないような)細心の注意が必要です。

 あくまでもおだやかに、そしてまっすぐに目を見つめ、母親のような無償の愛情を演じ切らなければなりません。人間誰しも、逃げ道をふさいでしまってはいけません。言いわけ、という逃げ道は残しておいてあげましょう。まさしく、出口を閉じて追いつめられたネズミは、追いかけてくる猫にもかみつきますから。

 「プライド型」は、心の中では自分が悪いとわかっていても、素直にあやまちを謝罪できないだけです。こういうタイプには、言い分を言わせるだけ言わせて「ガス抜き」をしてやれば大丈夫です。謝りたいんだけど、頭ごなしに叱られると、ムクムクと日ごろのプライド がバリヤーとなって本心を覆い隠してしまうだけなのですから。

 

 「プライド型」は人情にモロい

 こういう意地っぱりにはプライドをこちょこちょとくすぐってあげること、つまりほめ殺し攻撃が効果あります。そりゃ、ほめられた方が人間気分は良いものです。良い気分になったところでバリヤーが解ければ、素直な心で「ゴメンね!」と言えるものです。その一言を口に出すことができるムード作りをしてあげることも、私は教育の一環だと信じています。

ていねいな言葉つかいで問いかけ、返事に耳をかたむけるのです。包み込むようなほほえみ(嘲笑は、ダメよ)で同調し、さとすようにいたわりの言葉を一語一語ゆっくりと語りかけましょう。「あなたの本心はわかっているわ。あなたは本当は素直な人だもの」と静かに、うなづすいあげる作業が必要なのです。その上で、落ち度を一つひとつ客観的な言葉で指摘し、本人の口から「そりゃそうだわねぇ・・・私もいけなかったわ。他人のことを言えた義理じゃないわね。ごめんなさい」と言わせるのです。 

 「プライド型」は本来人情にモロいものです。他人の心の中が読める人ほど繊細な感情の持ち主です。その本来の姿を導き出してあげるような教育的指導(というと押しつけがましいか。接し方、というべきかナ?)が必要です。

 人間誰しも、弱味をつかれたくないからこそ「私だけじゃないモン」の常套句が口をついて出てしまうのです。

 他人の弱味を理解する、してあげようという立場になって、接していきたいものです。

 もちろん、このことは、辞職もしないでまだ居座っている与党側の「アノ人」にも向けられているんですけどね。


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