営業店実務と法律の専門誌 

「バンキング」Banking 5  平成11年5月1日発行
視点
コミットメントライン法案成立過程

 自由民主党は、貸し渋り対策の一環として企業が金融機関に手数料を支払って融資枠を設定してもらい、その限度内でいつでも融資が受けられる『融資枠(コミットメントライン)契約』の解禁について検討を進めてきた。塩崎恭久(愛媛県)、林芳正(山口県)らの若手参議院議員が中心となって法律案の細部を詰め、3月23日、ようやく国会で成立した。

 コミットメントライン契約については、欧米で一般的な手法とされているが、日本では金利の上限を定めた「利息制限法」や「出資の受け入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」に抵触するおそれがあるとの理由から事実上禁止されていた。手数料が金利とみなされるからである。

 コミットメントライン契約が解禁されることによって、大企業が貸し渋りを警戒して不必要に手元資金を借りる動きがなくなり、中小企業にも資金が回りやすくなること、融資枠を設定した企業の信用力が高まることなどが期待される。そのために利息制限法、出資法の特例措置の検討を進めてきたところ、参議院において各派共同提案として提出されたのである。

 自由民主党内では、金融制度問題調査会のもとに塩崎座長によるプロジェクトチームを作り昨年来議論してきた。要は借りる側(大企業から個人まで)と貸す側(都市銀行から町金融まで)の基準をどうするかで法務省、大蔵省、通産省間の意見調整が難しいため、政治決着としたのである。

 結局、借りる側は「商法特例上の大企業(資本金5億円以上または負債総額200億円以上)」とすることにし、貸す側の金融機関については峻別しないことになった。借りる側が大企業に限定されるのであるから、貸す側も自ずとその規模が限定されてくるであろうとの配慮による。ただし、中小企業についてもその対象とするかどうかの検討を要するため、法律の施行後2年を目途として見直しがされる。

 本来ならば企業にとって資金需要が必要な決算時期に間に合わせるために平成10年末までに法制化したかったのであるが、国会運営の問題もあり3月23日成立となったのである。

 さて、これによって金融機関同士の競争も激化することを期待する。手数料と審査能力の見合いになるわけであるから、正々堂々と各金融機関同士がしのぎを削ってほしい。

 金融問題を政治問題として扱うとき、つくづく思う。民間競争原理の世界にわれわれ政治家や政党や立法府がどこまで関与したらよいのか、といった部分である。金融機関といえども業態別に考えなければならない時がある。法律の網や予算措置を一律に投網の要領でかけるわけにはいかない。

 塩崎議員、林議員など取りまとめにあたった方々の労を多としたい。これからの金融関連法案は、機動性ある議員立法が注目されるようになるはずだ。

 

馳 浩(参議院議員)


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