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馳 浩 衆議院議員 永田町通信 146
 

『王国復活』

 ロンドン五輪が閉幕した。日本選手団の活躍を総括しておきたい。
 メダル数。
 金メダルは、目標の15?17に、はるか及ばず、7個。
 柔道の不振が響いた。
 TV観戦をしていて、国民の誰もが思ったのではないか、パワー不足を。
 正しく組んでキレイに技を掛け合うという理想の闘い方は、させてもらえなかった。
 男子柔道に至っては、全く歯が立たず、金メダル数ゼロ。
 昨年までの世界選手権やワールド杯で量産していた金メダルが、何故にゼロだったのか?
 五輪の本舞台で勝ち切れなかった戦略不足と言わざるを得ない。強化方針の見直し必至。

 女子で唯一金メダルに輝いた松本薫選手は、旺盛な闘争心と攻め続ける無尽蔵のスタミナが特筆されよう。足技も有効だった。
 日本代表が獲得した7個のうち、過半数の4個がレスリング競技だった。さらにそのうちの3個が女子。
 その強さの秘密は何か?!
 3つ挙げられる。
 まず、世界一の練習量とその質。
 福田富昭会長は、世界に先駆けて女子レスリングの強化に取り組んだ。それは20年前。
 少年少女レスリングクラブを各地に発足させ、有望な選手を早くに発掘し、全日本の強化コーチがジュニア世代から一貫指導。
 数年後に世界レスリング連盟の理事、そして副会長に昇り詰めた福田さんは、五輪種目に女子レスリングが採択されるように、各国理事にロビー活動を徹底。首尾よく男子階級数のワクを少なくしてその分を女子の四階級に割り当てた。

 二つめに、プロアマ交流があげられる。
 普及に必要なのは世間の注目。当時ブームを呼んでいた女子プロレスのオーディションにこぼれた10代の女の子を片っぱしからアマレスにスカウト。それでも足りず、女子プロレスラーの若手をアマレスの全日本選手権にひっぱり出し、テレビ中継まで仕掛けた。これによって強化の底辺が広がったことは言うまでもない。

 三つめに、私財を投じてまで新潟県の過疎地の廃校を買い上げ、女子専用の道場を作ってしまったこと。
 人里離れた道場と合宿所には、携帯電話の電波すら届かない。楽しみは何ひとつない。
 山道はかっこうの基礎体力トレーニングの場。ここで、男子でも耐えられるか、というほどの鍛錬をしているのだから、精神的にも極限までしごき抜かれて強くならないはずがない。

 小原日登美、吉田沙保里、伊調馨の3選手はこうした環境の中で、子どもの頃から才能を見出され、一貫指導とスパルタ教育によって世界の頂点へと登りつめた。
 小原は五輪階級に妹がいたことで、うつ病になるまで思い詰めた。しかし、両親や夫の支え、自衛隊体育学校のサポートでよみがえった。

 世界の強豪に研究され尽くした吉田は、そのさらに上を行く組み手を会得し、安定した試合運びで危なげなく優勝した。三連覇。
 三連覇をなしとげたもう一人の伊調は、女子レスラーでただ一人男子の代表クラスの合宿に参加。それまでは受けのレスリングスタイルだったのに、組み手で崩してタックルに入るという男子並みの超攻撃的スタイルを確立。「理想のレスリングを貫きたい」という求道者のモチベーションを維持し、三連覇。

 男子レスリングで24年ぶりに金メダルを獲得した米満達弘は、佐藤満強化委員長が、10年がかりの一貫指導で強化してきた最高傑作。
 このレスリングチームばかりでなく、卓球女子や、アーチェリー女子団体やフェンシング男子団体など、文部科学省の強化策が実を結んだ。マルチサポート事業(全額国費)の成果を出し切ったのがロンドン五輪の好結果。
 まさしく、NTC世代の勝利。
 アテネ五輪後に、小泉純一郎元総理の鶴の一声で3年で完成した、ナショナルトレーニングセンターを軸とした強化策の勝利だ。
 では、これからどうすべきか、の課題も。

 @この勢いで、2020年東京五輪を、復興五輪のテーマで開催を勝ち取ること。

 Atoto法を改正し、スポーツ強化&普及のための安定的な財源を確保すること。

 Bスポーツ基本法の理念のもとに、スポーツ振興は国策であると国民の理解を得ること。

 C各競技団体の世界連盟に日本人理事を多数輩出し、イニシアチブをとること。
 以上のバックアップ体制で、日本国民は、スポーツを通じてさらに健康的で生きがいのある生活を享受することができる。
 「スポーツは人類共通の文化である」
 新しいスポーツ基本法全文の一行目にあるこの精神を実現し、世界平和に貢献すべきなのだ。


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