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馳 浩 衆議院議員 永田町通信 126
 

『幼保一体化?!』

 議員会館のお向いさんに、民主党の小宮山洋子さんがいらっしゃる。
 黄色いスーツがシンボルマーク。
 キャリアウーマンの先駆者であり、三人の子育てをしながらNHKのアナウンサーを長らく務められた。
 もう民主党議員の中でもベテランの部類。
 私とはお互いに参議院在籍時代からの旧知の仲。 とりわけ10年間に及び児童虐待防止法の超党派勉強会メンバーとして論戦を展開した間柄であり、戦友でもある。
 「馳さん、ちょっと、お話ししない?」
 と、お誘いをいただき、
 「じゃ、お茶でも飲みながら!」
 と、お部屋に出向いた。
 テーマは、幼保一体化。
 小宮山さんは担当の厚労副大臣だ。
 民主党のマニフェストには、「社会全体で子育てを! 幼保一体化!!」とのスローガンが踊り、その第一人者と自他ともに認めるのが小宮山さん。
 長いつきあいであり、単刀直入に聞いた。

 「財源どうするの?」
 「子ども子育て支援勘定をつくって、そこに一つにまとめるのヨ! 消費税かなぁ…」
 「なるほど。 で、具体的な事業内容はどうするの? 所管する役所はどこ? 総額でいくらかかるの? そんな垣久的な財源あるの?」
 「子育てに関する予算は、一つにまとめるのよ!」
 「イメージはわかるんだけど、今ある保育所の運営費交付金と、幼稚園の私学助成や就園奨励費って、所管が違うじゃないですか。 厚生労働省と文部科学省で。 それは設置の根拠法が違うからですよね。 児童福祉法上の保育所と、学校教育法上の幼稚園。 どうするんですか? 法改正は来年の通常国会に間に合うの?」
 「将来は、子ども家庭省にして、行政組織を一つにすべきなのよ。」
 「将来っていつですか?」
 「それは、今議論しているところなの!」
 ……(そんなスケジュール観で大丈夫?)
 私だって、もう国会に15年もいるのだからバカじゃない。
 小宮山さんのイメージするところの「子ども家庭省」 「子ども関連予算一本化」だとか、「社会全体で子育てを! 親の働き方に関係なく、全国津々浦々、同じようなサービス提供」という理念はよくわかる。
 しかし、予算を一本化したからといって、行政組織を一元化したからといって、それが本当に子どものためになるのかどうか、はなはだ疑問だ。
 「だって、政権交代したのよ! 自民党政権でできなかったことを今やるのよ!!」
 と、たたみかけてくる小宮山さん。

 なるほど、小宮山さんのモチベーションは政権交代にあったのか、と今さらながらに思い入れの強さに敬服する。
 「でもね、参議院はねじれてますよ。 具体的な行政所管の姿も、ましてやサービス内容も、何と言いましても財源の総額も確保策も明らかにできなかったら、法案は成立しませんよ。 絵に画いた餅になっちゃいますよ!」
 「だ〜から馳さんに相談してるんじゃないの。 馳さんは私たちと同じ考え方でしょ?! いっしょにやろうよ!!」
 「ちょちょ、チョット待ってよ。 相変わらず強引なんだから。 子育てにもっと予算をかけようとか、親の働き方によって子どもの居場所や幼児教育に差があるのはおかしいという部分は同じかもしれません。 でもそれは、幼児教育の無償化政策を提唱してますし、平成19年から認定子ども園制度をスタートしてますし、幼稚園での預かり保育などの子育て支援事業を拡充して、子育てが孤育てにならないように多様な選択肢を増やしています。 それが自公政権の流れです。」
 「それじゃダメダメ、ダメなのよー! 0歳から5歳までの6年間、全国どこでも安心して預けることのできる一体化施設が必要なの。 幼児教育の内容も今より充実し、認可や指定された施設で質の高い子育てサービスが提供されるようにしなきゃ!」
 「でも、子育ての責任はまず親ですよ。 ましてや0、1、2の3歳未満児は、まずは親元で育つことが大切じゃありませんか?」
 「子どもは、社会全体で育てるのよ! だから子ども手当も必要なのよ!!」
 ……
 決して小宮山さんと私は仲が悪いわけではないし、子ども政策については共鳴する政策も一致点もたくさんある。
 しかし「子どもを育てる一義的責任は親にある」と、いう私の理念は、具体策を詰めていくと、「子どもにとってより望ましい選択肢が全国どこにいても提供されること」であり、一律的なサービスが公的に提供される幼保一体化とは違う。 ましてや垣久財源のない政策にはもろ手をあげて「ハイそうですね!」とは言えない。
 イメージではなく、理念と選択肢と垣久財源の争点で、小宮山さんと論争したい。
 何度でも言う。 子育てはまず、親の責任だ。


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