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馳 浩 衆議院議員 永田町通信 120
 

『一人係長?』

 ある日新聞を読んでいて、耳慣れない言葉が気になった。
 「霞ヶ関の一人係長」だ。
 なんだそりゃ?
 役職の一つが係長。 係長には所掌業務があって、部下が何人もいる。
 その部下のリーダーとして陣頭指揮の采配をふるうのが係長。
 ……とイメージするのが普通じゃないの?
 その係長が一人だなんて、どういうこと?
 もしかしたら部下から除け者にされて、窓際族になっている係長のこと?
 そこで実情を調べることにした。
 一人係長の新聞記事を参考にしながら、政府に対して質問主意書を提出。

 一、各府省庁において、アルバイト職員を除いて正規の職員たる部下が全く存在しない、いわゆる「一人係長」は何人いるのか?
 二、現在の国家公務員の定数削減計画を維持しつつ、早期勧奨退職を推進してでも、必要とされる新規採用者の人数を確保すべきではないか?

 つまり、一人係長の実態から、公務員人事管理のあり方について踏み込もうとしたのである。
 組織において人事とはエネルギー源。 常に新陳代謝が必要であり、そのために評価も必要。
 とにかく霞ヶ関の官僚人事は前例踏襲のお手盛り硬直型と称される。
 それでは納税者の理解は得られない。

 そのよどんだいびつさを糾すのが国会議員の責務。
 そう意気込んで答弁書(政府見解)を待ったら、ビックリ仰天!!(平成22年4月1日現在)
 一、一人係長の数(多い順)
 国土交通省8347人、、農林水産省6924人、厚生労働省3057人、経済産業省1597人、国家公安委員会1773人、防衛省1030人、財務省890人、法務省773人、総務省471人、内閣府本府468人、文部科学省452人、金融庁308人、環境省288人、公正取引委員会100人、外務省74人、消費者庁59人、宮内庁19人。

 二、人事のあり方について
 天下りあっせん根絶。 総人件費抑制。 民間企業との人事交流拡充し意識改革……と。
 その挙げ句、閣議決定において、平成23年度の新規採用数は半減させると発表した。

 おいおい、大丈夫かよ?
 そんなことしたら、逆ピラミッド型の組織となることは必定。 活性どころじゃない。
 で、かんじんの一人係長のあまりの多さに不信が増大したので、決算行政監視委員会において、一番多かった国土交通省の辻元晴美副大臣(当時)に「おかしいんじゃないか?」と詰問した。
 辻元さんは、最初こそ「国交省は仕事の量も多く、守備範囲も広いものですから……」と官僚答弁に終始していたが。
 「国交省の係長の三分の二が一人係長。 こういう横ならび昇進の悪い慣行を見直すことこそ、政権交代の意義じゃないのか?」
 と、火をつけたら、関西弁で本音を語り始めた。
 「おっしゃるように統廃合を含めて、常に組織のあり方がいい方に進んでいくように議論していかなあかんと思うし、変えていかなきゃいけないと思います。」  と。

 あたりまえのことだ!!
 公務員は身分を保障された終身雇用。 だからといって人事考課も評価も甘くして横並び昇進させることは断じてあってはならない。
 ましてや、一人係長が当然のようにのさばっていては、活性化につながらない。
 民間企業ではありえないことだ。
 そこで私はきっぱりと提言した。

 「額も数も減らして、質を高めるべき!! 一人一人の人件費を減らして、最低限必要な公務員を確保した上で、資質向上を目指しましょうよ。 そのためにも、まずは総理大臣が総人件費の一割削減を宣言すること。 そして天下り根絶を内閣の方針とすること。 その上で、組合に団体交渉権を与え、不服審査もしましょう。 同時に、国家公務員ばかりでなく、地方公務員の人件費も同時に削減の対象にしましょう。 そうしないと組織が硬直化します。 競争がなくなると優秀な公務員も育ちません。 生首を切れないわけですから、能力や実力を評価した上での人事管理を進めるべきです。」

 じっと聞き入っていた辻元副大臣も、
 「人の配置や働き方の采配をどう振るうかが組織が生きるか死ぬかの分かれ目だと思います。 閉塞感を突破していく上で組織のあり方を見直して行くことがとても大事と思います。」
 と、ようやく政治決断の重要性を理解して前向きの答弁をされた。
 一人係長が当たり前のように引きつがれている横並び自動昇進の霞ヶ関は、やっぱりおかしい!!


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