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馳 浩 衆議院議員 永田町通信 117
 

『まきこvsレスラー』

 高校無償化法案の国会質疑が佳境に入った頃、田中眞紀子委員長はこうおっしゃった。
 「ハセさんの言ってることもその通りよね。 こういう法律が日本で作られて、世界から笑われたり、後ろ指を差されたりしちゃダメよ。」
 と。
 が衆議院の文部科学委員会で政府答弁を明確に求めた論点は以下のとおり。
 ・理念がないじゃないか。 教育費の負担軽減と教育の機会均等を言うならば、所得制限をした上で低所得者に限定した授業料無償化や減免制度で十分。 その方が財源に余裕も出て、就学援助制度創設や、給付型奨学金創設や公私間格差解消ができるんですよ。 そもそも莫大な税金使って、学力向上策や公共心育成の具体案が一つもない。 バラマキありきの制度論じゃ、本末転倒。

 ・朝鮮高校には出すんですか、出さないんですか。 法律には「高校の課程に類する課程を有し、文部科学省令で定めるもの」としか書いてない。 これじゃ白紙委任であり無責任。 民族教育や外交上の差別には反対。 でも大臣は、朝鮮学校は「高校の課程に類する課程を有する」かどうかは、確認する制度も法律もないからできないと答弁しているじゃないですか。 私だったら確認できるような努力を政治主導でしますが、大臣は現状ではできないの一点張り。 こんなあいまいさでは採決に応じる環境にない!

 ・公立高校の留年者や越境入学者など、公平性の観点から有償となる生徒がいる。 しかし、そもそも公立は無償となっているのだから、有償化して授業料を払ってもらうためには自治体独自の条例がいる。 でも、衆議院で審議しているのは3月中旬。 この後は参議院でも審議が残っている。 これでは4月1日からの制度開始に条例が間に合わない。 法律には、条例に基づいて自治体負担が生じる場合には国が交付金を出せることになっている。 でもその交付金の算定基準すら決まっていない。

 ・日本に住んでいる外国人の子どもには支援金が出るけど、海外に住んでいる日本人の子どもには出ない。 税金の使い方として不公平。 海外に住んでいる日本人にも機会均等の理念はあてはまるはず。 制度としておかしい。

 ・無償化の基準額は118,800円(年間)。 しかし、東京都の基準額はそもそも122,400円で、大阪府は144,000円。 差額負担が生じます。 文部科学大臣は「激変緩和措置をします」と言うけれど、それがいくらなのか、今年だけなのか不明確。 東京も大阪もこれからどうすりゃいいのか不安です。

 ・公立は無償化で私立は支援金。 これじゃ、1対4が0対3の比率になるだけで、私立の授業料負担感は残ります。 低所得層の私学在学者への減免制度拡充こそが必要です。

 ・・・・・・

 この指摘に対して、田中眞紀子委員長は「その通り!」と賛同をしめして下さった。
 「じゃあ、こうしましょう。 与党筆頭理事の笠浩史さん(民主党)、野党筆頭理事のはせ浩(自民党)、そして田中委員長が三者協議をした上で、採決の時期を決めましょう!」
 との私の提案に、笠さんも田中さんも同意し、「とにかく文部科学省も政府側もていねいに明確な答弁しなきゃ、笑われちゃうわよねー!!」と、のたまっていた。

 ところが!!
 そのことを朝の理事会で約束したにもかかわらず、わずか3時間後に約束は反故。
 共産党の宮本たけしさんの質疑が終了した時点で、民主党の首藤(すとう)理事が挙手をし、緊急動議を発言。
 「これで質疑は終局とし、採決する動議を提出します!」
 まんまとやられた。
 だまし討ちだ。
 そしてなんと、あろうことか田中眞紀子委員長は、この緊急動議を強行採決してしまった。
 「強行採決反対!!」
 「言ってることとやってることが違うじゃないか!」
 「ウソつき!」
 と、この巨体をゆらして抗議をしたが、後の祭り。 採決は強行されてしまった。
 私の指摘した論点に、政府はゼロ回答。

 おかしい! 本当におかしい。
 莫大な国民の税金を投入する、60年ぶりの教育システム大改革が、こんな非民主的なやり方で強行採決されてよいのだろうか?
 良いはずがない。
 民主党はマニフェスト至上主義で、生煮えの政策を次々と強行採決している。 子ども手当もデタラメぶりが明らかになった瞬間に質疑打ち切って強行採決。
 全ては夏の参院選前に、お金を配るためなのだそうだ。
 これじゃ、国会軽視もはなはだしい。
 マスコミも「まきこVSレスラー議員」という次元で、報道している場合じゃない。
 この国の倫理が揺らぎ始めているというのに!


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