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馳 浩 衆議院議員 永田町通信 114
 

『政治利用』

 いや〜な気分にさせられた。
 これが政権交代か?
 それで政治主導か?
 憲法まで持ち出してまくし立てる問題か?
 そう。
 平成21年12月15日の特例会見の一件だ。

 天皇陛下と、習近平中国国家副主席との会見は、本来ならば日中友好のいしずえとして歓迎されなければならない外交案件になるはずだった。 事実、和やかなうちに会見は行われた。
 しかし、この日程に到るプロセスが、せっかくの会見の本来の意義を台無しにしてしまったのだ。
 いわゆる1ヶ月ルールの問題と、日程に政治的、外交的な思惑が入っていた問題。
 1ヶ月ルールとは、こういうこと。

 宮内庁は、陛下の体調や多忙を考慮し、期間1ヶ月を切った会見要請は受けない、というルール。
 にもかかわらず、鳩山首相や平野官房長官が宮内庁に圧力をかけて、1ヶ月ルールを破ってしまったのである。
 外務省が時系列で明らかにした日程調整は次のとおり。

 1) 年初来、中国要人訪日打診あり。
 2) 今秋来、習近平訪日アレンジ要請あり。
 3) 11月23日、中国側から外務省に訪日日程が示され、天皇会見の要請あり。
 4) 11月26日、外務省から宮内庁に引見願いを出したが、宮内庁は1ヶ月ルールにより困難と回答。
 5) 11月27日、宮内庁から外務省に対して引見不可能と回答。 外務省から中国大使館に対して引見不可能と伝達。
 6) 11月30日、外務省は不可能と判断。

 …本来はここで終わるはずだったが、中国側が猛烈な巻き返しをはかる。 そこに日本側(鳩山首相、平野官房長官、小沢一郎民主党幹事長)がどう関わったか、だ。
 7) 12月3日、中国外務省が日本の大使に引見を要請。
 8) 12月9日、中国大使館が日本の外務省に引見を要請。
 9) 12月10日、引見決定。
 10) 12月11日、羽毛田宮内庁長官が「天皇陛下の政治利用の懸念がある」と会見。
 11) 12月15日、会見実現

 これはまだ外務省が口頭で説明した事実ではあるが、詳細を詰めるには宮内庁と内閣官房が把握している情報を公開させなければならない。
 ここで問題すべきは、12月3日から12月10日までの間に何の圧力(政治的意図)が働いて、引見が決定したかだ。
 実際には、会見は5日前に決定しているのであり、1ヶ月ルールを大きく逸脱した。
 12月10日、何があったか?!
 わかっている事実は、小沢一郎幹事長が率いる600名余の大訪中団が、北京において胡錦涛国家主席に謁見していたことである。
 小沢さんの顔を立てるために、宮内庁の1ヶ月ルールを破ったとしたならば、言語道断。
 こういう前例(特例)を作ってしまうと、
 「中国は特別!」
 「中国の国家副主席が天皇陛下と会見をすると、次期国家主席のお墨付き。 胡錦涛さんが副主席のときもそうだったから。」
 と、国内外に示してしまうことになる。

 つまり。
 1ヶ月ルールを強引に破ったこと。
 天皇陛下と習近平さんの会見を政治的、外交的に利用したこと。
 この2つの論点において大問題なのである。

 憲法第一条には、
 「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」
 とある。
 どうだろう。
 今回の事案は、見事なまでに日本国の象徴や日本国民の主権や、日本国民の総意という領域に踏み込んでしまった問題ではなかろうか!!
 この騒動が発覚した翌日、小沢幹事長は記者会見し、羽毛田長官を批判した。
 「政権交代したことを理解していないのではないか。 憲法にも天皇の国事行為には内閣の助言と承認が必要だとある。 辞職してから言え!」
 と、いうような暴言を吐き、あろうことか、
 「陛下に聞いてみれば会いましょうと、おっしゃるに決まっている。」
 と、発言してはならない領域に踏み込んでいる。

 あり得ない。
 鳩山首相や平野官房長官は、本当に自分の判断で宮内庁に1ヶ月ルールを破らせたのか?
 中国の政治的外交思惑に気がつかなかったのか?
 小沢さんは、やりすぎだと思わなかったのか?
 憲法第一条を理解できなかったのか?
 だとすれば、即刻内閣総辞職だ。


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