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馳 浩 衆議院議員 永田町通信 113
 

『野党自民党』

 「ハセさん、野党になったらヒマでしょ?」
 と、行く先々で決まり文句のように問われる。
 決まって私はこう答える。
 「人数が少なくなってねぇ……よけいに忙しくなりましたよ!」
 と。 もちろん強がりでもある。
 もし、あのまま自民党が与党のままであったならば、議員歴からしてそろそろ大臣かも、と期待しないではなかった。 取らぬタヌキの皮算用、ってやつだ。
 でも現実は、野党。
 悲哀をかみしめながらも、与えられた任務を精一杯はたさなければならない。

 国会では、何が変わったか。
 まず、要望や陳情を持って来られても、
 「よっしゃ、任しとけ!」
 と、胸を叩いて引き受ける立場ではなくなった。 公共事業の箇所付けも、介護保険の制度改正要求も、実現力はなくなったのは事実。
 だからといって、無用の長物になったわけではない。
 野党なりの攻め所はあるはずだ。 あるのだ。
 その1つが議員立法。
 2つめは国会質問。
 3つめは質問主意書を内閣に提出し、1週間以内に答弁書をもらうこと。
 実は、この3本の矢作戦こそ、自民党が攻守交替を求めていくための最大の武器。
 政権交代まで与党であったわけだから、要領はわかっている。 自分たちがやられたことをやり返すばかりでなく、「自分たちの力」で勉強を積み重ねて、国民の声の代弁者として発信していけば良いのである。 そのくり返しで、信頼を回復していかなければならないと思うのである。

 臨時国会に私が用意したのは以下5本。
 (1) PTA青少年教育団体共済法
 これは、PTAや子ども会などの団体が、小額短期の共済事業を法律のもとで、公平公正に継続するために必要。
  平成17年に保険業法が改正され、無認可の共済事業は運営できなくなった。 「新たな法律のもとでやらせてほしい」とのPTA団体の要望を受け止めて、議員立法としてまとめることになったわけだ。

 (2) スポーツ基本法
 昭和36年に制定されたスポーツ振興法。 しかし、時代は変わった。 Jリーグやアンチドーピングや地域スポーツクラブなど、スポーツをとりまく環境は大いに変わった。 しかし、スポーツの振興を規定する根拠法がたいして変わっていないので、全面的に書きかえることとした。 障害者スポーツも、スポーツの範ちゅうとして入れることとし、パラリンピック振興にも力を入れることとした。
 「あらゆる場所で、あらゆる機会に」スポーツに親しめるようにとの理念を入れて、国策としての位置付けを明確にした。

 (3) 義務教育段階の外国人学校支援法
 日本国内にも外国人はたくさん生活している。 定住外国人の義務教育レベルの児童生徒は14万人ほど日本国内に在住しているが、そのうち4万人ほどが学校に行っていない。 地方では社会問題にすらなっている。 だから、せめて地方自治体が支援を認めた外国人学校に対し、予算の範囲内で国も経常経費を助成できるとした。

 (4) 障害者虐待防止法
 すでに児童と高齢者については、虐待防止法が成立している。 そもそも児童福祉法や老人福祉法で対応できれば良かったのだが、残念ながら想定を超えた犯罪が相次ぎ、社会問題となり、対処せざるを得なくなった。 障害者についても同様。 家庭内や福祉施設や事業所における障害者に対する人権を侵害するような虐待は、悲惨を極める。 社会全体に警鐘を打ち鳴らす意味でも「何人も障害者を虐待してはならない」との一般規定も入れた。

 (5) 海外美術品公開促進法
 海外の美術品を日本で公開しようとしても、「ワケあり」のモノがあり、万が一差し押さえを受けたらたまらないという理由で公開を拒否されることがある。 例えば中国と台湾の外交関係に絡む問題。 日本政府の責任において、差し押さえなどがなされないようにする公開促進法。

 以上、ここ数年、与党の議員ではあったけれど、現場の声を吸い上げて練り上げた政策を議員立法にまとめあげた。
 憲法第41条にもこう明記されている。
 「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。」  と。
 そう。 その通りのはずだ。
 小沢一郎幹事長は原則民主党からの議員立法を禁止したそうである。
 それは、憲法第41条の精神をふみにじる方針であり、立法府軽視でもある。
 与党だから、野党だから、でエラそうにしたり卑屈になったりする必要はなかろう。
 野党だからこそ、自民党にできること。 やらねばならぬことはたくさんあるはずだ。


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