『山賊四天王?』 「いやぁ〜、まるで山賊みたいやね、この4人は!」
くったくのない大笑いをしながら頭をかいている武田良太代議士。
その場のパニック状態の空気を和らげるには、もってこいの表現だったかもしれない。
もちろん、その4人が山賊そのものを意味するのではない。
あくまでも「山賊みたい!」だ。
迫力のある大声といい、一気呵成に攻めこもうとする度胸といい、後先を考えない無謀な戦略といい、まさしくブレーキの壊れたダンプカーだ。総裁選挙の立候補にこぎ着けたは良いけれど、全くの準備不足な西村やすとし陣営。
活動資金もなければ、名簿もない。
運動員もいなければ、事務員もいない。
組織もなければ、後援団体もない。
何よりも総裁選を仕切る、参謀がいない。
困った。すいせん人集めの中核となった不肖馳浩が、選対事務局長をつとめざるを得ない有り様。
こういうパニック状態に置かれて、はじめてわかったのは、
「やっぱり派閥の役割って凄い。 自民党は中選挙区時代に派閥が総裁選で権力闘争を行ない、その活力で生き残って来たんだな・・・」
ということ。
しかし、今は昔の物語り。
今じゃ小選挙区制。 そして野党。 マスコミの扱いもベタ記事。 トップニュースは鳩山新政権の華々しい新閣僚の動向や国連外交。
鳩山首相にまで「自民党もがんばってほしい」と、同情される始末。
でも、ぐちってばかりいられない。
「置かれた状況で、ベストを尽くす」が信条。
総裁選スタート翌日から、もうシルバーウィーク。 党員電話作戦をチンタラやってる場合じゃない! ここはもう「マスコミの露出」にしぼって闘うしかない。
「じゃあ、どうやってテレビ論戦をリードするかだ。 俺たちがディベート訓練やってあげるから、ここに西村呼んでこい!!」
と、目を血走らせて獲物を狙う山賊のように気勢を挙げていたのが、古家圭司、山本有二、衛藤晟一。
その3人に負けず劣らず(?)強引に戦略を前に進めることになった馳浩。
この4人の様子を横でながめていて、その余りの勢いに気圧されて「山賊四天王」と名付けたのが、武田良太さんだったわけだ。候補者の西村やすとしさんは、まだ3期生。
いくら東大〜旧通産省出身のエリートとはいえ、キャリアがものを言う永田町では、かけだしのペーぺー。
「西村ぁ、もっとワンフレーズで強く!! いちいち説明が長いんだよ。 あれじゃテレビ観てる人がチャンネル替えちゃうぞ!!」
「ハイッ!」
「西村ぁ、もっと新保守主義を打ち出せ!! 谷垣さんも河野もリベラルなんだから、本来の自民支持層に安心感を訴えるんだょ!!」
「ハイッ!」
「西村ぁ、町村派退会しろ! もう派闘の力で闘う時代じゃないんだょ。 総裁の力強いリーダーシップで清新な人事をやるんだ。 自民党の世代交代をアピールするには派閥解消!!」
「ハイッ!」
・・・・・・かわいそうに、というか、先輩のおっしゃることもごもっともな一面もあるのだが、西村さんは町村派を退会する派目に。
ことほどさように、山賊軍団の中に放りこまれた西村さんは、いけにえの小羊状態(?!)
でも、元々が勘の鋭い西村さん。 吸収力と状況判断は抜群。
興奮状態の山賊四人衆の荒っぽい叱咤激励を素直に聞いていたのかいないのか。私は、全国の自民党都道府県議に電話作戦を行っていたのだが、徐々に応援の声は広がっていったようだ。
「谷垣さんじゃ今までとかわりばえしない。 河野さんは礼儀知らず。 西村さんはなかなかいいね。」との好感触を得られるようになった。
そして迎えた投開票日。
結果は、議員43票と、党員票11票。
正直言って、善戦健闘。
やはり無名すぎたし、準備期間がなさすぎたし、テレビ闘論が弱すぎた。
でも、議員票では2位につけたし、党員票はドント方式だから11票しかなかったが、得票は50000票弱であり、目標の10%には届いた。
事務局長の当初の目論見どおり、「自民党の若手スター作り」と「党内世代交代」を印象付けることは、最低限達成できたようだ。
民主党連立政権がもてはやされている。
だからこそ、政権交代可能な2大政党の存在は絶対に必要。
だからこそ、自民党若手が自立しなければならない。
道のりは長いだろうが、国家国民のためにも、希望を持って前向きにがんばらなければならない。