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永田町通信 102
 

『サバイバル』

 国会議員になりたい。
 そのためには、選挙に勝たねばならぬ。
 その前に、まずは候補者として認めてもらわねばならない。 これが一筋縄ではいかぬ。
 国会は政党政治。
 無所属では、飼い殺しも同然。 個人的に動くことは可能でも、国家の意志決定に中枢としてかかわることはできない。
 明確な野党ならば、一定の集団の中で立法活動などの交渉組織の一員として活躍できる。
 政府や与党を攻撃することで、国民の声を代弁するという大切な役割もある。
 いずれにしても、政党の公認候補に決定するまでのプロセスには、大変な労力を要する。

 そういう意味で注目の選挙区が富山3区。
 現職は、萩山教厳代議士(比例当選だが。)
 そこに敢然と名乗りを挙げたのは柴田巧県議、48歳。 3期目を迎える中堅県議。
 さらに、意欲を示したのが、橘慶一郎高岡市長。 父親の橘康太郎前代議士も一時は返り咲きをねらったが、息子の意欲の前に、手をひっこめた様子。

 さて、ここからが大問題。
 いったい、誰が、公認となるか、だ。
 実は、私は3名ともよく知っている。
 だから困っているのだ。

 「他人の心配するより、自分の選挙が危ないのだから、いちいちかまうな!!」
 とも言われる。 でも、生来が心配性な性質なので、とても気になるのだ。
 なぜかというと、富山3区内の小矢部市は私の生まれ故郷であり、金沢の親戚の養子に入る8歳まで住んでいた。
 そのご縁で小矢部後援会があり、なんとその後援会長が渦中の柴田巧県議。
 ちなみに、大先輩の萩山教厳代議士を前回の郵政解散で熱烈に支援したのも柴田さんであり、今回は骨肉の争いとなっている。

 また、富山3区の中心的都市といえば、高岡市。 北陸自動車道と東海北陸自動車道が交差するようになり、北陸新幹線の新駅も5年後には開通する。 高岡市は富山西部地域にとっては産業基盤強化のために、企業誘致のために、交流人口拡大のためにと、自他ともに認める中心都市。 そこの現職市長がこれまた48歳で衆議院選挙の公認候補に意欲を表明したとあらば、それこそ台風の目玉。 有権者に与えるインパクトは大きく、今、富山3区は寄るとさわるとこの公認問題で、蜂の巣をつついたような大騒ぎとなっている。

 どうしてこのような混乱に拍車がかかっているか。 その震源地は、日本一の自民党王国をこの地に樹立(?)した、綿貫民輔代議士の離党→国民新党結成にある。  なんともまぁ、小泉純一郎は罪作りなことをしたもんだ。
 郵政民営化断固反対と共に生きる綿貫先生は、とうとう次回は富山3区から出馬しないことを宣言してしまった。 比例区だけでがんばるそうだ。
 「じゃあ、3区の綿貫信者はどうすれば良いの?」と、右往左往。 疑心暗鬼。 政治不信……
 かつての巨大なリーダーシップを誇った綿貫さんがいないがゆえに、自民党の公認候補えらびも錦貫票を横目にみながら膠着状態。
 そこで。
 12月の寒いある日、私は小矢部後援会 朝食会を企画した。 残念ながら柴田会長には、時節柄出席を見合わせていただいた。
 居並ぶ40名近い幹部に、私は正直に告げた。
 「富山3区の選択肢は4つ。 ・現職優先 ・調整の話し合いで一人にしぼる ・調整の上で、予備選、負けたら出馬見送り ・誰も公認せずに無所属で競わせ、生き残った者を追加公認。 それぞれに一長一短はあろう。 従って、1人でも多くの党員や有権者が納得する選び方が必要だと思う。 選び方のプロセスが万人に明らかでなければ、それこそ政党政治が根幹から不信を買う。 そして何よりも、候補者本人の強い情熱とビジョンが共有されるかどうかだと思います。」
 と、一気に申し上げた。

 それは、そもそも国会議員とは何ぞや、という自分自身に向けての問いかけ、発破でもあった。 誰のために政治家になろうとしているのか、だ。
 当選は手段。 目的は何なのか、である。
 国会議員となって、この日本の国の平和を守り、秩序を守り、経済を発展させ、暮らしやすい世の中とするために具体的に何をどうするかと語れるか、行動できるかどうかなのだ。 その覚悟を有権者は見ているのだ。
 世論におもねり。 大衆迎合政治家を求めているのではないのだ。 この国をどうしようとしているのかが問われているのだ、と。

 私は富山3区の切実な問題を心配しながらも、自分自身のことを第3者的に見つめている。 国会議員となって、この日本の国をどうすべきかを熱く論じ、伝え、実行できるような政治家でなければならないと思い知らされているのだ。
 まさしく、この国のサバイバルなのだ。


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