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永田町通信 91
 

『谷間の二日間』

 「ガソリン値上げ隊、ガンバロー!!……あっ間違っちゃった、値下げ隊だったっけか。」
 なんともまとまりのない決起集会の映像だった。
 民主党が総力を挙げる(はず)のガソリン国会に向けての値下げ隊決起大会のガンバロー三唱は、苦笑いで幕を開けた。
 その後のテレビニュースでも、菅さん、鳩山さん、安住さん、川内さん、高山さんと、声を出せば口々に「値上げ隊」と言い、あわてて口をおさえて「いっけね、値下げ隊だった」と言い直す映像ばかり。

 本当に、ガソリン税値下げで解散総選挙に持ち込む気迫ありやなしや、と不安を残す一日だったように印象付けられた。
 その日は谷間の1日目。1月16日。
 前日に、128日間にわたる再延長国会を閉会したばかり。
 テロ対策新法(海上補給支援活動法)を衆議院で再議決されてしまい、国会運営に課題を残して幕を閉じたばかり。
 気を取り直して、1月18日からの通常国会開会日に向けての谷間の2日間。

 民主党は大々的に党大会をアピールの場とすべく、若手議員を中心にガソリン値下げ隊を結成したにもかかわらず、かんじんの足下からしてこの緊張感のなさ。
 加えて、党大会後の記者会見でニュースとなったのは、小沢一郎代表の逆ギレぶり。
 再議決の本会議をすっぽかして、大阪府知事選挙に出かけたことを記者諸子に追求され、謝罪するどころか、
 「どうして野党代表が欠席したことだけをあんたたちは問題にするの? 総理や大臣だって本会議にでないことあるでショ。 この法案はたいした法案じゃない。」
 と、バッサリ斬って捨てて、自分を正当化しちゃったもんだから、しまらないの二重奏。

 ガソリン値下げ隊の軽さといい、国会議員の本来任務である本会議欠席の正当化といい、本当に生活が第一とスローガンを掲げている政党の「火の玉となって一丸」の姿とは思われない。
 国会と国会の谷間がわずか2日間しかない中でのニュースの出し方としては、民主党のバラバラ感ばかりが浮き彫りとなった。

 明けて1月17日。
 この日は自民党大会。
 伊吹幹事長の差配により、例年とは違い、ゲストスピーカーに先にごあいさつをいただいてから大会ははじまった。
 公明党の太田代表に大きな拍手が。
 「GDPを上げる、給与所得を上げる。 この2つの大目標を達成するために、国民のための政治を行うことが国会に課せられた使命。 安倍前総理が強力に進めて来られたイノベーションの拡大もその1つ。 私は福田総理とお会いするたびに、国民生活に安心をもたらすための対話の政治を実現することこそが、ねじれ国会における責任の取り方だと話し合ってきた。」
 ともすると、現在の自民党内では、はれものにさわるような扱いを受けて来た安倍前総理の功績をたたえながら、福田総理とハラを合わせてねじれ国会を乗り切ろうという決意にあふれた力強い演説であった。

 御手洗日本経団連会長からは、
 「国民主体、国益優先の政治をしてほしい。 そのために物心両面の最大限の支援をおしまない」
 との表明があった。
 これを受けて福田総理からは、
 「国民の立場になって国政の責任を果たす。 選挙も怖くない。 そんな思いで生活者のための政策を進めて行く。」
 と、いつものように静かに語りかける、じわーっとしみ入るようなあいさつであった。

 ふだんの党大会ならば、もっと威勢の良いことばがとびかったのかもしれないが、昨年の参議院選で惨敗し、隠忍自重の国会運営が続いていかざるをえない現状では、極めて危機意識の強い党大会とならざるをえなかった。

 午前中で党大会が終了した後は、午後からはすぐに党本部で政策勉強会が開催された。
 消費者問題調査会、そして原爆症認定を早期に認定するための議員懇談会。
 いずれの会合に出席しても、閉会中の気のゆるみはなく、政策実現に向けての熱気が満ちあふれていた。
 民主党は政権交代に向けて解散総選挙に追い込むための押せ押せムード。
 自民党はワキを固めて守りの態勢。

 わずか2日間の谷間ではあったが、与野党ともに政治休戦とは名ばかりの火花の散る2日間であった。
 ガソリン税暫定税率延長反対の民主党方針には国民新党は反対。 民主党内にも異論は絶えないし、代替財源論も不十分。
 さりとて与党は原油高対策を出して守りの説明に終始。 シーソーゲームのような対立に明け暮れるのではなく、どこかで折り合わなければ、それこそ生活の混乱をあおるだけになってしまう。


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