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永田町通信 86
 

『負けたらボロ雑巾?!』

 参議院選挙が終わった。
 安倍自民党はボロ負けだった。
 つられてか、与党の公明党も議席減。
 野党の小沢民主党のみが一人大勝。
 同じく野党のはずの共産党も社民党も減。
 ということは、日本国にも二大政党制が定着しつつある結果とも言えようが。

 しかし、選挙の実相は、「赤勝てー! 白勝てー!」の政策論争とはいかなかった。
 「自民党がだらしないから民主党にするか!!」
 と、いった類の消極的選択がはばをきかせていたようでもある。

 「今度ばかりは、自民党に入れたくない!!」
 との声もたくさんいただいた。

  私は石川県選挙区の選対本部長をつとめていた。 わずか公示1ヶ月前に出馬を表明した民主党候補に4,000余票差で惜敗の結果となった。 票差だけで言えば惜敗の感はあるのだが、全国的に見た選挙の流れから判断するに、惨敗としか言いようがない。
 安倍政権も発足時には70%の支持率をいただいていたのに、選挙時は22%。
 まるで秋の夕日のつるべおとし状態。これは一体なんなんだろう?

 そして、続投表明したこれから何を目標とすべきなのだろうか?
 私は国会対策の現場にいて、野党の抵抗ぶりを肌で感じていたのだが、三つの大きな風が吹いたのは間違いなかった。

 ・ 憲法改正阻止の風。
 ・ 天下り規制に反対する霞ヶ関の風。
 ・ 公務員制度改革や教育再生に反対する自治労や日教組の風。

 以上3つの逆風に、年金記録不備の社会保険庁労働組合の風と、過疎地域の格差不満の風がダメ押しをした。
 さらに決定的だったのが、相次いだ閣僚の失言、放言と、事務所費問題と、赤城農水相(当時)のバンソウコウ。
 これでもかこれでもかの逆風だったし、言い訳や説明から入る選挙に、勢いはつけられなかった。何よりも、保守王国と言われる石川県においてすら、自民党支持者のうち76%しか固め切れなかった。

 つまり、前回、郵政小泉解散の総選挙において自民党に票を入れた4人に1人は、民主党候補に今回入れたわけだ。
 このふりはばの大きさを、率直に受け止めて反省した上で、さてこれからどうしたら良いのだろうか、ということだ。
 私は思う。まずしてはならないこと!!

 ●人事……年功序列、派閥横断、族議員復活という、旧自民党体質の復活は、してはならない。適材適所、老壮青、スペシャリストの登用という、小泉路線の継続をしないと、派閥親分がこそこそと動きまわるような人事では、国民の期待から大きくかけはなれてしまう。

 ●政策……バラマキ公共事業復活論は、これはもう、絶対してはならない。 かといって民主党がマニュフェスト提唱する公共事業五十%削減論も非常識。 都市と地方の経済格差や過疎過密の地域格差を公共事業で穴埋めしようとの発想は、すでに過去の遺物。 防災や環境や全国交通ネットワーク整備などの特化された公共事業を、より絞り込んで予算化するならまだしも、野放図な財政出勤に頼るような先祖返りをしてはならない。

 では、そんな中で、負けてボロ雑巾状態の安倍総理がすべきことは、何か、だ。

 1つは、経済成長戦略の継続だ。 構造改革や規制緩和を継続し、経済成長の果実(雇用の確保、国も地方もの税収増)を国民生活の満足度に結びつけていくこと。 小さな政府、大きな未来の経済政策だ!!

 2つめは、国益を守る安全保障論議だ。 平和という果実は無料でもなければ、どこかで誰かが国家のために流している汗によって築かれている。 ましてや、一国平和主義はあり得ないのだから、二国間、地域間、そして国連主導という、三つの安全保障機能に我が国が主体的に関与していかねばならない。 自分の国は自分で守る、というあたりまえのシビリアンコントロールを機能させるためにも、防衛省の強化や、集団的自衛権四類型論は、積極的に国民世論を喚起しなければならない。 テロ特措法延長論議にしても、参議院第一党の民主党も、抵抗野党ではなく、責任政党として、政策案の賛成、反対、修正の論点を国民に示さねばならないだろうし。

 3つめは、やっぱり憲法改正論だ。
 政局中心主義ならば、民主党もおいそれと改正論の土俵に上がってこないだろう。
 しかし。

 安倍さんだからこそ、何がどうなろうとも、あるべき日本国の国家論として、憲法改正の論点整理と草案提示の作業はやり続けなければならない。戦後初めて、改正の道筋に踏み込んだ首相は安倍晋三だけだ。遠く長い道のりの一歩をしるした安倍さんだからこそ、憲法改正の旗を下ろしてはならない。これこそ、国家の様相を問う骨格のはずだからだ。(了)


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