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永田町通信 85
 

『ここで一句!』

 国政報告界に参加するたびに思う。
 もっとわかりやすく、インパクトのある言葉選びをして、政策を伝えられないかな、と。

 政治家がマイクを握ると、自分だけがわかっているような演説を延々とくり広げる。
 これは失格。
 行政用語や永田町にしか通じない難しい隠語が使われるものだから、せっかく聞きに来てくださる方々には、心にストンと落ちない。
 これではもったいない。

 そこで工夫をして編み出した馳流が、「ここで一句!!」作戦。
 元教師。
 それも、高校で古文と漢文の先生をしていたわけだから、当意即妙、的確一語の一句をひねり出すのは大好き。
 好きこそ物の上手なれ?

 五七五の一句だと、演説も短く切り上げることができるし、聴衆もコピーが印象深く残るので一石二鳥。
 今般の参院選でも、こんな一句でわかりやすい政治をアピールした、つもり。

〈出陣式〉

  『逆風を 受けてスクラム 夏の汗』

 ○まさしく、年金記録不備問題や社会保険庁の労使もたれ合い体質やしょうがない発言や事務所費問題……もういい加減にしてほしいほどの逆風が吹き荒れた参院選。 風をたよりの政党もあれば、逆風に耐えてでも国政の責任を果たさねばならぬ政党もある。 そして、候補者本人にしてみれば、自分とは関係のないところから吹いてくる逆風や横風。 追い風に乗ることのできる陣営はラッキーだが、そうではない候補者にとっては苦戦。 苦戦だからこそ、関係者一同がスクラムを組んで汗を流さなければならなない、と、戒めの意をも込めての一句。 政治は、一人の政治家だけがスタンドプレーをして派手なパフォーマンスをしたり世論をミスリードしてはならず、国益を考え、国民の立場でスクラムを組まねばならない、との気持ちも込めた。

 

〈街頭演説で!!〉

  『自民党 大きな反省 小さな政府』
  『気をつけよう 甘い言葉と 民主党』

 ○多くの聴衆を動員しての街頭演説では、相手陣営をアジり倒し、自陣営を鼓舞する必要もある。 琴線にひびく刺激的な単語があると、どよめきを誘うこともできる。 対句の要領を使えば、比べることによるわかりやすさも演出することになる。

 自民党は、閣僚の相次いだ失言や事務所費の処理問題で「大きな反省」をしなければならない。 どんなにご立派な政策を並べ立てて実行力や解決力を示すことができても、政治家自身が信頼を失ってはどうにもならない。 この人たちにこの国を託したいと思われなければ投票行動には直結しない。 反省を形に示して法案や財制や税制に反映させなければ、選挙で安倍内閣の実績とビジョンを問う資格がない。

 と同時に、「小さな政府」を目指すという内政の理念と具体策(地方分権、公務員制度改革、規制緩和、経済成長戦略)をこそ、国民に評価していただきたいとの意思表明だ。 

 2大政党制を目指すと豪語する民主党に対しては、痛いところも攻撃する。
 「できない約束をしてはならない」
 「実行可能なマニュフェストを示せ」
 という主旨で、「甘い言葉」と一言で斬ってみた。そのネタはいくつもある。

 ○国旗、国歌法で採決が半々に割れた

 ○防衛省設置法で党内意見がまとまらない

 ○憲法改正草案の取りまとめもできていない

 ○支援を受けている日教組への配慮

 ○バラマキ農政

 ○基礎年金財源消費税論
 などなど。

 つまり、国家存立の理念や国防や教育や公務員制度について、党内の意思統一がされておらず、財源のウラ打ちのない政策論ばかりだ、との指摘だ。
 この手のコピーは街頭演説でこそ通用する。
 いちいち長々と専門用語を交えて解説していては、せっかく来て下さった支援者も、こむずかしくて腕組みをしてシラーっとしてしまう。
 ここは、小気味よく一句謳い上げてから、時間の頃合いを見計らってその場の空気を推し量りながらわかりやすい単語で解説をするのである。

 政治は、生きた言葉を、いかに心の奥底に届けることができるか、のくり返しでもある。
 万人に通用しないお題目を延々としゃべり続けても、時間の空費となるばかり。
 政治家になりたい人は、芭蕉や一茶や良寛和尚の古典をひもときながら、内政や外交をコンパクトに伝える勉強をしてみるのも、一興ではないだろうか。


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