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永田町通信 79
 

『ようやく!!』

 一月は新年会めじろ押し。
 その中でもひときわ鼻息も荒かったのが、「石川県防衛協力諸団体新年互礼会」だ。県内で活動する、航空自衛隊小松基地や、陸上自衛隊金沢駐屯地の諸君を激励する諸団体の顔合わせ会。

 会場内正面には日の丸。
 日の丸のとなりには、「祝 防衛省」の垂れ幕。出席者一同にとって、ようやく待ちに待った省昇格を成しとげた新年の幕開けだ。

 関係者あいさつが、その高揚感に輪をかけた。まずは、谷本知事。
 「ようやく国際貢献も本来任務になった。 県内では、ナホトカ号重油流出事件のときに、凍てつく能登半島の海岸線で油の除去にあたってくれたのが自衛隊の皆さん。 いざという時に県民の為にからだを張って危険な任務に取り組み、防災の最前線で活躍して下さる自衛隊は、県民と共に歩む、頼もしい存在です。 これからも誇りをもって訓練に励んで下さい。」
 と、これまでにないねんごろなご挨拶。

 続いて指名されたのは、この私。
 「かつての五十五年体制のままでは省になれなかったでしょう。 国政において野党第一党の民主党には、前原誠司さんや野田佳彦さんなど、若手有力議員に自衛隊の理解者が多くいます。 もはや自衛隊を違法違反と声高に攻撃する勢力も国会にはほとんどいません。やはり、時代の要請です。」
 と申し上げると、一同うんうんとうなずいて下さるのであった。

 さらに続けて、イラクのサマワ支援の陣頭指揮を執った、ヒゲの佐藤正久さんのことを紹介した。
 「参議院の比例代表に立候補するヒゲの佐藤隊長。 かつては防衛代表は背広組と制服組にわけられて呼ばれましたが、佐藤さんは現場組です。 サマワの現場で、イラク人を相手に交渉をし、柔軟に現地の要求を受け入れ、日本の後方支援を成功させた手腕は、これまでの自衛隊組織の命令系統に大きな可能性をもたらしました。 これぞ、危険な地帯、状況においても的確に即応性を発揮する自衛隊ならではの貢献でした。」
 ピラミッド型の組織論に風穴を開けたヒゲの隊長の決断の数々は、まさしく時代の要請する政策官庁に脱皮すべき防衛省のあるべき方向性を示唆していると言えよう。

 「ところで金沢駐屯地のY司令。あなたはヒゲの佐藤さんとは防衛大学第二十七期の同期生ですよね!!」
 と、壇上からいきなり話しを向けられたY司令は、気をつけをし直して背筋を伸ばし、
 「ハイッ。寮でも同級生でありました!!」
 と、敬礼をするのであった。

 「あなたは公務員ですから、これ以上は言いません。 でも、私が何を申しあげたいかは、お察しの通りです。 ぜひとも試練に立ち向かう同級生の心の支えになってあげて下さい!!」
 と、深々と頭を下げると、会場につめかけた協力諸団体の皆さんが、どっと歓声を上げるのであった。

 最後に、返礼としてあいさつに立ったのは、小松基地のH連隊長。
 「皆さんの御支援のおかげで省となりました。 ありがとうございました。 これまで私たち自衛官は、多くの場面で、庁のままで気の毒な身分ですね。と、同情されていました。しかし、私はそうは思いませんでした。 気の毒なのは自衛官ではなく、国民の方だと思っていました。 国防を担う役所が防衛庁のままで、責任を果たすことができるのか、ということです。 ですから、防衛省となって喜ぶべきは、国民の皆様方であると思っています。 しかし、私たちは自衛隊員であり、軍人ではありません。 私たちが軍人と呼ばれるような国防意識を国民の皆様に持っていただけるようになった時、本当の意味で信頼を持たれ、誇りを持って日本の国のために働ける環境が出来あがるのだと思います。」
 と、切々と訴えられた。

 その毅然とした言葉に、自衛隊の応援団を自認している協力団体の誰もが、
 「これからが、本当の意味での国民意識に根ざした自衛隊を作り上げ、支えて行くことだよな!!」
 と、誓い合うのであった。

 国防は、国家最大の福祉である。
 この、あたりまえの事実を皆で共有しあえるように、よりいっそうの政治の理解と国民の支援が必要であろう。


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