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永田町通信 73
 

『人財立国の教育現場』

 閉会中の国会議員って、気の抜けた炭酸水みたいなものだ。ほっときゃ味が薄れる。
 自分から進んで日程を見つめて動き続けなければ、何も回転していかないし、誰も相手にしてくれない。休もうと思えば際限なく休めるのだし。

 小泉総理の判断で、数年ぶりに長い夏休みをいただいた衆参700余名の国会議員。
 その一人として、私も自覚をもって日程を立てた。

 文部科学副大臣を拝命している以上は、役所にこもって事務処理や決裁ばかりしているわけにはいかない。
 教育全般とスポーツ振興の分野を担当するように小坂大臣から命を受けているのだから、これはもう、現場を視察するしかない。
 通常国会では、特別支援教育を充実し、障害児教育を進展させる法案が成立した。また、三位一体改革に絡んで教員給与の国庫負担が2分の1から3分の1に引き下げられ、財政力の弱い地方自治体は青息叶息。教育基本法改正の審議では、ゆとり教育についての評価や、教育行政の責任論まで噴出していたし。

 そこで、さっそく7月に入って視察に出かけて来た。現場の努力を目の当たりにし、教職員や児童生徒の声に耳を傾けてきた。
1.京都府京丹後市網野町。

 東京駅から電車を乗り継ぐこと6時間。痛む腰をさすりながら、網野高校と網野北小学校を視察した。小中高と、レスリングの一貫指導で有名で、オリンピックメダリストも輩出している。中学生と高校生が同じ道場で同じ指導者のもとで練習しており、ジュニアからの一貫指導の成果が見られた。しかし、中学校には部活動としてレスリング部がなく、クラブチームの様相。おそらく財政的な課題があるのだろう。学校体育と地域のクラブスポーツの融合という印象。こんなやり方も、強化有効策と考えれば、全国でも参考にしていけるであろう。一村一品運動ならぬ、一村一スポーツ方式で地域おこしも可能だろう。

 網野北小では、少人数での算数の授業を拝見。分数の足し算。教員の力もあるのだろうが、できる子ができない子に積極的に教えてあげていて「学び合い」の効果が表れていた。

 これは京都式少人数授業だそうだ。やはり、学習塾の少ない地方ならではの人的配置なんだな、と学力向上に寄せる教職員の熱意が感じられた。総じて、いかに特色ある教員を充実させるか、学力を向上させるか、教職員の加配にかかっており、
 「馳副大臣!!来年度予算編成では、教職員の定数改善で、加配をお願いいたします。教育力の格差解消の最善策は、力のある教員を養成して現場に張り付けることです!!」 との陣情が多かった。

 その翌日。東北新幹線に揺られて米沢駅へ。米沢駅から車に乗り換えて山道を走ること1時間。新潟県との県境にある小国高校へ。

 こちらも、小中高と一貫教育を推進している地域。過疎地域における公教育の生き残り策は、地元の小中学校との連携が主流のようだ。地元の大学教授が高校生に直接指導したり、小学生が高校にやって来ていっしょに学校行事を楽しんだり、タテ割り交流活動を開いたり。

 いずれも、児童生徒の「学ぶ意欲」を導き出す工夫であり、「何のために学ぶのか!?」とのモチベーションをたかめる方策でもあるような印象を受けた。なんとかしてやりたい。都会の子どもにはまけたくない。過疎地域のこどもにもしっかりと学力を身につけさせ、生きる力を養うサポートをしたいとの、教職員や保護者や地域の皆さんの熱い気持ちが伝わった。

 そして。
 翌週には、東京都大田区の田園調布中学校のサマーフェスティバルを視察した。こちらは都会の中の過当競争にさらされている公立中学校だ。学区内の小学校2校からは、半数以上の7割が私学の中学校に進学するそうで、公立中学校の存続すら取り沙汰される地域。

 住宅密集地に中学校が建っており、騒音問題を抱えている。今年からは全教室にクーラーが入ったそうで、やはり財政の豊かな自治体は教育に金をかけられてうらやましい。図書購入費なんて通常の10倍の400万円とか。
 義務教育の小学校とはいえ、当然かもしれないが、全国一律の教育条件の下で子どもたちが学んでいるわけではない。地理的・物理的な条件不利地域も多い。
 しかし教育の質に差があってはならないし、差の出ないように教員育成に力を入れ続けることが「人財立国」日本の使命であると視察を通じて教えられた。

 国会議員の仕事は、閉会中をいかに過ごすかによってこそ、国益に貢献できるかどうかだ。何よりも、現場に出向いて聞く耳を持ち、大局的に国益を判断することだ。(了)


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