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永田町通信 67
 

『どうなる県庁跡地!?』

 「へしない」
 金沢弁で言うところの、待ち遠しい、まだるっこしいという意味。
 新県庁舎が完成、移転完了したにもかかわらず、5年経っても跡地整備の全体計画が県民に示されない現状は、まさしく「へしない」のである。
 「審議会政治」
 「決断しない知事」
 などと陰口を叩かれる谷本知事にとっても目の上のたんこぶ。よりによって県選出国会議員の森喜朗前総理や馳浩文部科学副大臣からは「セントラルパーク構想」がしきりに出されるし、山出保金沢市長からは「何も作らんと広坂通りから金沢城公園の石垣が透けて見えるのもひとつの見識」などと公言される始末。

 お得意の審議会政治の答申は「南ブロックを残し、一対の椎の木との景観を守るべし」との結論。しかし、ちまちまとした建物を登録文化財として残してろくでもない利活用策を作って税金を投入するよりも、いったんすーっきりと全て取り壊して、緑地整備とある程度の駐車場整備をし、金をかけるようなことはしなさんな、という意見も、今は亡き先代の中西陽一知事の腹案。

 いろんな意見にふりまわされている感のある谷本知事。このままでは県民のためにならないので、まずは谷本知事と県選出国会議員で意見交換会をして現状打破をはかることになった。時は平成17年12月21日の朝。
 県連会長である私が気を利かしたつもりでホテルの会議室を用意したら、森先生から変更の連絡。同じホテルでも、40階のレストラン個室、それも、180度展望できる素敵な個室で朝食まで準備してくださった。

 部屋に一歩足を踏み入れたとたん、パァーッと眼下に広がる赤坂と六本木の街並み。遠くには富士山も望める。窓に近付いて真下を見おろせば、東京御所。ポカーンと口を開けて絶景に見入る谷本知事と国会議員。
 「森せんせい! すんばらしい景色ですね。東京の中心地がこんなにキレイだとは思いもよりませんでした。」 と、ヨイショではなく心から感動する谷本知事。腕組みをしてながめている。

 「それに、朝ごはんまで御馳走になっちゃって、いいんですか? ごっちゃんです!」 と、相変わらずお調子者の馳浩。沓掛哲男大臣は日頃の忙しさを忘れて静かにお茶を飲み、岡田直樹参議院議員や北村茂男代議士などは、まるでおのぼりさんのよう。それを見てニコニコ笑顔の森前総理。私は、その様子を拝見しながら、ははーん、なるほど、と思った。

 気配りにかけては日本一と自他ともに認める政治家、森喜朗。なぜに直前になってこの場所に変更したのか、その深い意図がわからなかった。しかし、早朝のこの眼前に広がるパノラマを見て、すぐに得心することとなった。
 まずは、谷本知事に対する敬意。
 年下であり、政治の世界では後輩であり、一回目の選挙で応援しなかったとはいえ、今では石川県という一国一城の主。多忙を極める知事を呼び出して意見交換するには、それにふさわしい場所が必要との配慮だ。

 2つめは、この景観。
 都心部に緑地帯を広大に整備し、セントラルパークとして活用することが、いかに都市の品格を高める象徴となり、市民の憩いの場を提供することになるか。それは、このレストランからの景観を一望すれば一目瞭然。つまり、暗黙のうちに、
 「県庁跡地は無駄金使わずに、セントラルパーク整備」案はいかがか、との意思表示。

 どういった思惑があるかは当然その場では詮索することはなく、素晴らしいパノラマのおかげで6名ともごきげん気分でおだやかに話しは進んだ。結論としては、
 ・県庁跡地整備については、自民党石川県連、県議団において方向性を出す。
 ・その方向性を、県議会の特別委員会の議論に生かす。
 ・その結果を受けて、谷本知事が決断する。
 ・南ブロックを残すも残さないも選択肢。
 ・この件については、県政懇談会などにおいて国会議員は知事攻撃をしない。

 となった。最後は笑顔でお互いに握手をかわしてそれぞれの仕事に向う和やかさ。
 「それでもオレはセントラルパーク」 と森先生はおっしゃるが、それは一つの有力な選択肢。県民の税金を使っての整備をする以上は、議会与党の自民党と、議会の特別委員会が一義的な責任を負うのは当然。

 後は、どこまで知事が腹をくくるか、でもある。当然、そのプロセスにおいて、県都金沢市の山出市長がどういう見解を示すかも重要なポイント。県庁跡地は県の持ちモノとはいえ、金沢市の中心市街地。空洞化しないように機能集積も必要。
 さぁ、どうなる、県庁跡地!?(了) 


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