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永田町通信 58
 

『中国を逆利用すべし』

 中国問題こそ、売られたケンカを買いたい。そんな衝動に駆られる。4月17日に訪中した町村外相は、反日デモに関連して
 「愛国無罪と言えば何をやってもいいのか。破壊活動はいかなる背景でも認められない。中国政府は国際ルールにのっとって、誠実かつ迅速に対応してほしい」 と要求した。

 あたりまえのことだ。

 わが国は経済交流をはじめとして、あらゆる分野において中国に反日デモを仕掛けられる理由は何もない。

 友好関係を進展させ、東アジア地域の平和をになう重要なパートナーとして大切に外交関係を結んでいるにもかかわらず、一方的に反日デモを突きつけられたのでは、当惑を、怒りを感じざるを得ない。

 町村外相が示唆する「いかなる背景」には三つあろう。

  ○小泉首相の靖国神社参拝

  ○歴史教科書の検定

  ○東シナ海の試掘権

 以上三点は、常に中国側が反日の理由に持ち出して中国の国内世論を喚起するポイント。

 それに対していちいち日本政府は説明し続けているにもかかわらず、聞く耳を持たずに自国の主張ばかりを押しつけ、あげくの果てにはデモの暴徒化すらも日本の責任とあげつらうあつかましさ。

 幸いにも小泉総理が「冷静に冷静に。お互いの立場を理解し合って、友好関係を発展させて行くことが両国の国益にかなう」 と大人の発言をしていることで日本国内の世論は先鋭化していないが、本音は今すぐにでも怒鳴り合いをしたいところだ。

 中国政府の真意、というか戦略を深読みすれば以下のような論点が挙げられようか。

 1. 愛国教育を徹底することによって、国内の不満分子(経済格差や台湾問題)を反日でまとめあげる

 2. 自国の覇権主義を確立し、アメリカの影響力に対抗する

 3. 資源エネルギーの確保こそ国家命題

ということであろう。

 1. に関して言えば、十四億人にならんとする人口を、国家としてまとめあげて行くための最重要課題として教育を位置付けていることになる。中国国内には、数多くの政治課題が山積みしており、寄せ木細工のようなものだ。それを中国共産党が一党独裁で支配している。その寄せ木細工の接着剤となっているのが反日教育であり、国定教科書であると断言しても過言ではない。

 だからと言って、歴史的事実をゆがめたり誇張したりして、ことさらに日本をターゲットに攻撃して良いものではない。中国の歴史認識と日本の歴史認識はおのずから違う。小泉総理の靖国神社参拝しかり。教科書検定問題しかり。だからこそ、町村外相が提唱した「歴史共同研究」の検討会を設けて土俵の中で論じ合うことは有効な手段。

 2. に関して言えば、今回の反日デモを中国政府が容認している背景は、アメリカを牽制していることにつながる。北東アジアの平和、安全保障に関しては、在日米軍や在韓米軍の役割ではなく、中国国防軍がリーダーシップを握る、との強い決意の表れである。

 そして、何故に中国が軍事力(とりわけ海軍力)の増強に執心し、国威の誇示に務めているのかを探ってみれば、それは3. の石油問題にたどり着く。

 中国は90年代半ばには、石油輸入国に転じた。驚異的な経済発展を支え続けるためには、安定的に、大量の資源エネルギー供給を確保し続けなければならないのである。パイプラインの整備されていないアジアにおいては、中東諸国からの石油を運ぶタンカーのシーレーンを確保しておくことこそが、国家の生き抜いて行く最大の道なのである。

 全ての道は石油に通ずる、とも言えよう。

 中国政府が、どうしてこんなに異常とも思える反日教育にこだわり続けるのかを分析すれば、やっぱりそこには石油が存在するのだ。中国は、日本の背後に控えるアメリカに、自国の主導権や命運を握られたくはないのである。自国の命運を握る石油は、何としても中国が主導的に確保し続けたいのである。だからこそ、日本を国連の平和を左右する安全保障理事会の常任理事国には入れたくないのである。

 それは一党独裁の国家が取り得る唯一の政治的戦略でもあろう。

 反日デモは中国自身の国際的地位をおとしめ、自滅させるものであり、中国政府が沈静化させよう。その奥底に潜む国家戦略こそ、日本が逆利用すべき外交のタイミングでもある。(了)


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