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永田町通信 56
 

『売られたケンカ』

 衆議院予算委員会の集中審議で質問に立った。NHKのテレビ中継が入っており、通常は閣僚経験者が立つのであるが、テーマが「政治資金について」というところもあり、国会対策副委員長として、国会運営の裏方役をつとめる若手の私に白羽の矢が立ったのである。

 その質問の冒頭に、私は
 「民主党からいろいろ言われておりますので、売られたケンカは買いたいと思います」 と宣言した。

 ここで言う売られたケンカ、という言葉の趣旨は以下の通りだ。
 まず、迂回献金についての自民党関係者に対する一方的な決めつけに等しい質問が続出していたことだ。

 自民党は、迂回献金はない、と発表している。にもかかわらず次から次へと迂回献金だと決めつけて、イメージダウンを狙う質問が相次いでいた。政治資金収支報告書に記載されている献金者名と金額と日付けのつじつまをつき合わせれば、いくらでも迂回献金と指摘できるのであれば、それは民主党の議員に関しても同様の事例がいくらでも指摘できるのである。

 また、質問通告を事前にせずにいきなり委員会の現場で、政治資金収支報告書に基づく質問も相次いでいた。答弁する側からすれば当然「資金の流れ」については事実確認をし正確に答えなければならいのに、いきなりその場で質問してその場で答えさせ、その答弁内容を、さも鬼の首を取ったかのような態度で悪しざまに追求されては、答弁する方もたまったものではない。

 さらに売られたケンカの決定的なことは、日歯連事件に絡み、橋本元総理はじめ6名の証人喚問に応じなければ全ての審議を拒否すると戦術にでてきたことである。

 それはあまりにも、理不尽ではないか。
 政治と金の問題が重要案件であることは論を待たない。しかし、自民党も民主党もすでに政治資金規正法を倫理選挙特別委員会に提出しており、この委員会において論議すれば良いのである。何も国家予算を審議することが目的の予算委員会で、他の重要案件も数ある中で「証人喚問」を人質にとって審議拒否をちらつかせる国会戦術は、どう考えても党利党略と言わざるを得ない。

 そこで、私はあえて泥仕合に持ち込むことで、この問題を倫選特委においてこと審議すべき課題であるとの論陣を張ることにした。テレビ中継が入る以上、泥仕合に持ち込む以上、私は刺激的なフレーズを多用した。

 「もっと他にやることがあるじゃないか」「売られたケンカは買いたい」
 「マスクマン名前は国民改革協議会。マスクを脱いだ正体は民主党。」
 「今どきプロレスラーでさえこんな姑息なやり方は使わない」
 「国民の皆さんは知らないんですよ。どうして自民党の質問時間が1時間で民主党が2時間もあるんですか。議員数に応じて公平にして下さいよ。委員長!!」
 「一般社会ではこれをマネーロンダリング」

 ……

 案の定、大反響を呼び私も自民党も民主党も、いや、国会の権威さえ失墜させかねない低いレベルの質問と酷評された。景気回復も道半ば、北朝鮮問題もこう着状態、社会保険制度の抜本改革についての3党合意はいまだ実行されず……国政に対する国民の期待は裏切られるばかりのこの時に、他にやるべきことは一杯あるだろうが!! 一体テレビ中継を使って何をやっているんだ!! そんなことを議論させるために馳を選んだんじゃないぞ!! イイ加減にしろ!! とまあ、惨々である。

 私も傷付いたが、何よりも国会審議正常化の声が世論の大勢となった。折悪く、証人喚問の実現しないことで審議拒否を続行していた民主党に対しても批判が向けられることになった。結局。国会対策委員会の与野党の代表者によって理性的な話し合いが行われ、泥仕合を避け、「外交、経済」に関する集中審議を開催することによって正常化するこになった。ひとまず、ヤレヤレ、である。

 私は思う。日歯連問題では、橋本元総理自らが、疑惑に対して進んで答えるべきである。民主党は、東京地検に告訴しているのだから真相究明は司法判断に委ねるべきである。そして与野党とも、協力して政治資金規正法を改正すべきである。何よりも大切なのは、政治資金をありがたく謙虚な気持ちで使わせていただく「政治家改革」である。

 私も次回はもっとマトモなテーマで予算委員会に登板して、汚名返上したい!!(了)


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