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永田町通信 54
 

『困った純ちゃん・・・・』

 

 「小泉さんと仲直りしたらしいじゃないですか、タカラヅカ観ながら。郵政民営化の党内手続きもうまく運びそうなんですか?」

  臨時国会が終了し、税制改正や予算編成作業まっただ中の12月中旬、森派昼食会の意見交換会で玉沢徳一郎さんがこう切り出した。

 「郵政民営化の党内手続きについては、今日はちょっとやめておこう。前段のタカラヅカについてだがねェ、実はこういうことなんだ」

  森喜朗先生がこういう切り出しで、話しはじめる時はご機嫌な証拠。座談の名人でもあり、小泉さんの感情の機微を心得ている兄貴分らしく、身ぶり手ぶりでオンステージが始まった。

 「韓国側の要望で、来年10月にタカラヅカの韓国での上演が決まったんだよ。それで、日韓議連が主催するもんだから、会長のこの私がこないだの東京公演に呼ばれたんですよ」

  フムフム、それで!?

 「それで、何故か似つかわしくないと思うんだけど、国会議員でタカラヅカを応援する議連があって、その会長が青木幹雄さんなんですよ」(森さんもあんまり青木さんのこと言えないじゃないの……と福田康夫さんの小声の野次あり)

 「(野次を気にせず)私と青木さんで東京公演に招待を受けたら、その話を聞きつけた宝塚出身の扇千景議長と公明党の松あきらさんも一緒にいくことになったんですよ」

  それで!?

  「それで、その話を扇さんが何かの会合の時に小泉閣下にしゃべっちゃったら、閣下が『俺も行く!!俺も行く!!』ってついて来ちゃったんですよ、呼んでもいないのに!!」

  総理のことを閣下と皮肉ったり、呼んでもいないのについて来ただなんて、相変わらず仲が良いのか悪いのか不思議な関係だ。

 「それでね、宝塚公演に来る観客なんて9割近く女性ばかりなんですよ。そんな中に私と青木さんが招待席に入って行っても、お客さんは『ナニよあのオジサンは!!』てなもんよ、実に冷ややかな視線。ところがですよ、純ちゃんが客席に入場してきたら、ヤンヤヤンヤの大喝采ですよ、気分の悪い」

  気分の悪い、と言いながら、笑顔ですよ、森先生!!

 「そいでもって純ちゃんの野郎、いつものように右手を高々と挙げて四方八方に嬉しそうにあいさつするもんだから、余計に大歓声で、気分良くなりやがって、こんちきしょう!!」

  それじゃただのおじさんのジェラシーじゃない、森先生!!

 「公演の途中さぁ、マドロス姿のスター役が、こう、パァーッと見栄を切りながら舞台から俺達の方を指差すんだョ、かっこよく。俺だ、いや俺を指差してくれたんだ!!と俺と青木さんで言い争いしてたら、またしても小泉のヤロー、勝手にサーッと右手を挙げてそのマドロスさんに応えるもんだから、場内大騒ぎよ、ふんとにもう!!」

  って、あーあ、こりゃもう、子供だよ……。

 「それでね、公演終了後に夜の食事会が開催されることになったんだ、出演者も呼んで」

  ほう、それで!?

 「そしたらまた、呼んでもいないのに閣下が俺も行く、俺も行くってついてきちゃったんだよ、まったくもう」

  まったくもうとか言いながら、終始笑顔の森先生。こういう憎めない座談を嬉しそうにするもんだから、永田町界隈には人気が高いのであり、マスコミからは冷たくされるのであろうか。

  ま、それは良いとして、最後にこう言い放ったのである。

 「困った純ちゃんだょ……」  と。

  閣下と呼んでみたり、あのヤロー呼ばわりしたり、3ヶ月もわざと会わなかったりしながらも、結局は森喜朗にとっては「困った純ちゃん」なのである。それも本当に困った純ちゃんなのではなく、「世話の焼ける弟分」のようなのである。

  この微妙な関係こそが、未来の政局を占う鍵であると気がついたのは、その場にいた議員全員であるのは間違いない。

  郵政民営化にしても、年金問題にしても介護保険制度にしても、対北朝鮮政策にしても、対中国のギクシャクした関係改善にしても、しかりだ。

  困った純ちゃんを前面(全面!?)に押し出しておきながら、政府与党内、時には対野党対策において主導権を握ろうとする。そんな意気込みと使命感が垣間見られた、ようなエピソードであったのだが……。

  でも、総理の方が一枚上手かな!? (了)


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