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永田町通信 52
 

『どうする三党合意?!』

 台風23号の爪跡が生々しい10月21日。   

参議院では予算委員会二日目。

 延々とくり返される、南野法相に対するイジメにも近い質問。貴重な質問時間を使い、国政の重要課題の論戦舞台となるべき予算委員会で、「看護連盟からの献金をどう使った」だの「日歯連の捜査報告をどこまで聞いているか」だので怒声を張り上げる質問者。異和感を覚えてしまった。

 昨日、日本列島を覆い尽くし、横断して行った台風23号が、いったいどんな被害をもたらしたか、事前に防げなかったか、被災者対策はどうすべきか、災害に強い国土作りは、などなど、緊急に協議すべき、国民の生命と財産を守るための前向きな論戦をするのが国会議員の本職ではないのか!!

 にもかかわらず、南野法相罷免に向けて、あげ足を取ろうとするような質問で大声を出しているようでは、野党として本当に政権担当能力を備えていると自己主張している民主党らしくないゾ、と指摘せざるを得ない。この臨時国会に世論が期待している論戦の上位は、マスコミ調査によるといずれも社会保障制度改革と景気対策。
 いくら政府発表、日銀発表で景気回復を言われても、「将来の安心」が見えなければ個人消費拡大にはつながらない。

 公的年金制度、介護保険制度、医療保険制度と将来の生活設計を左右する社会保障制度の財政的な安定と、公明正大な運営の仕組み作りこそが、国民が国政に寄せる最大の関心事である、ということに、与野党の対立を越えて取り組まなければならないのではないか。そう考えると、今から6年前の、いわゆる金融国会における管直人民主党代表(当時)の政治姿勢と、最近の岡田克也代表のリーダーシップの違いを比較せざるを得ない。

 当事、未曾有の金融危機に直面していた日本の金融機関、経済界を救うために、管直人代表は「政局にはしない」と高らかに宣言して、小渕総理(当事)と話し合いに応じ、金融安定化法を成立させた。政策新人類と呼ばれた枝野さんや塩崎さんや石原さんが大活躍した。あの当事、野党第一党の代表として「政局にはしない」と表明した管さんは国家国民の生活を第一に考えて判断したと評価されたし、そんな管さんを政治オンチと斬って捨てたのは当事の小沢一郎自由党党首。その小沢さんも、その後自自公に参加し、そして今は民主党の一員であることは皮肉な結果だが。

 金融国会において政治がダイナミックに主導権を取った、官僚相手にリーダーシップを発揮したケースがありながら、今の民主党の三党合意に対する出方を見ていると、国民の期待から大きくかけ離れていると言わざるを得ない。

 小泉総理も、本会議での岡田氏や横路氏の代表質問に対する答弁や、予算委員会の長勢甚遠氏に対する答弁で、何度も「三党合意は重い。年金制度一元化の問題については、最低保障年金は税でまかなうとか、所得比例年金の保険料負担の格差とか、自営業者の所得捕捉のための国民総背番号制などなど、議論すべき課題が多い。だからこそ、三党合意に基づいて、国会において、また自公民の三党間で協議をし、平成20年度までに結論を得てほしい。」と答えている。

 連合の笹森会長も、「この社会保障制度改革についての問題は、国会対策や政党間の争いを超えて、国民全体の課題として民主党も三党合意に従って与党と議論してほしい。」と表明している。民主党最大最強の支援組織である連合の会長があえてこう表明せざるを得ないほど、三党合意に署名した当事者の岡田克也氏の動きはにぶいのである。 

 何故なのか?!

 何故そんなに「政治と金」問題ばかりに追求して(それももちろん大切だが、政治倫理審査会でも十分議論できる)、三党合意を真摯に履行しようとしないのか。衆議院の厚生労働委員会に、小委員会を作って課題を議論しようとしないのか、政局に固執するのか。金融国会での管直人氏の判断が、今、国会内で、永田町では再評価されている。それは、岡田克也氏の国会戦略と比べられてのことだ。与党をやり込めてダメージを与え、イメージを落とし、政権を奪取する作戦も、よいかもしれない。

 しかし、世論を真っ向から受け止めて、今、何をするべきか国民生活に安心と安定を与えるための国会対策はどうあるべきか、岡田代表は管直人さんから勉強しても良いのではないか?!(了)


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