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永田町通信 45
 

『険悪な関係!?』

 霞が関の役所同士というのは、どうもいまだにタテ割り意識が根深いようだ。   

 選挙区の支持者から、学童保育支援の陳情をいただいて、その対応をしていた時のてん末を紹介しておきたい。

 石川県で学童保育の組織化に長年取り組んで来られたAさんから、こんな陳情をいただいた。

 「馳さん。1997年の児童福祉法改正の際にはご尽力いただいてありがとうございました。児童健全育成支援センターの充実というような文言を条文に入れていただいたおかげで、全国でも飛躍的に学童保育の設置が進みました。」

 「良かったですね。これもまた働くお母さんの支援策ですから、もっと拡充できるように厚生労働省と財務省と総務省にお願いするように致します。」

 「そこで、なんですが。ぜひ、指導員の制度化とか、空き教室の利用についての財産処分の制度化をして、学童保育の定着化をお願い致します。指導員の平均年収は150万円前後であり、生活して行くのも大変なんです。」

 「ほー。実態を全国調査した上で、どのような対応ができるかを関係省庁と協議します。」
 と答えて永田町に戻った。

 

 私は現在、国会議員であると同時に、文部科学大臣政務官として政府の一員。さっそく根回しに入った。

 我が文部科学省の政務官室に、担当課長とともに厚生労働省の児童家庭局の学童保育担当課長を呼んで、両省の取り組みの実態を事情聴取することにしたわけだ。

 ところが、集まったメンツの空気が険悪で、どうも重くるしい。話が私の期待通りに弾まないのだ。私が、
 「学童保育の現状やいかに?」

 「学童保育制度の今後の数値目標やいかに?」

 「学童保育推進議員連盟を作ろうと思うのだが、応援してくれそうな国会議員のメンツやいかに?」
 などと学童保育のことばを連発するたびにムッとする、文部科学省のお役人さんがた。

 「じゃ、また後日協議しましょうか。」と散会したその翌日のこと。

 

 我が省の担当課長が、何と上司である生涯学習政策局長とともに抗議にやってきたのである。
 「政務官、困りマス 」

 「え、な、何が?」

 「河村文部科学大臣の目玉政策は、子どもの居場所づくりです。本年度から3年間かけて取り組む、極めて重要な政策です。」

 「それで? 何が困るの?」

 「ですから大臣を支える政務官としては、この子どもの居場所づくりの支援をしていただきたいのに、厚生労働省所管の学童保育に力を入れていただいては、立場がございません。」

 「ん 立場は関係ないでしょ。私は一国会議員であるのですから、長年支援してきた学童保育の充実に力を入れてどこがおかしいの?」

 「…えーと、あのー。学童保育の対象範囲は小学校低学年です。」

 「そんなこと知ってるよ。」

 「子どもの居場所づくりの対象は、平日放課後と、土日祝日も入っております。対象範囲としてはこちらの方が広うございます。」

 「それで 何だって言うのさ。」

 「……放課後児童健全育成事業、ということで、学童保育事業も包括的に支援する、ということでいかがでしょうか?」

 「ん〜〜……それなら確かに理屈に合うな。ならば、学童保育と子どもの居場所づくりの事業を合体させたような先駆的な取り組みがあれば、一回視察に行ってから判断しますから、さがしてみて下さい。ただ、自民党の中で私がどんな議員連盟を発足させるかは、政治家としての私の判断ですからね!」

 と、きつく申し渡した。申し渡したらその翌日には、
 「ありました。品川区のすまいるスクールです!」 と嬉々として報告に来たので、さっそく私は視察に行ってきた。

 

 確かに学童保育との併合型であり、おやつが出ないことを除けば理想的な放課後児童健全育成事業であることはわかったが。

 それにしても、だ。

 あー言えば、こー言う。そして他省庁との政策連携を積極的に進めようとはせず、自分が所管している政策にえらくプライドと正当性を持ちたがる霞が関気質は、手に負えない政治の障害のように映った。

 ただ、私も政治家として手をこまねいているわけにもいかない。省庁間の人事交流や、効率的な政策連携と実行を決断することこそ、永田町に求められているのだから。 


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