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永田町通信 44
 

『派閥とグループの違い。』

 「民主党さんも、派閥がしっかりしていれば古賀潤一郎さんの事件は起きなかったかもしれないのにね!!」
と森派昼食会にて森前総理がため息をついた。続けて、こう問いかけた。

 「最近こんな記事を見かけました。わが派の若手議員の発言です。『もう派閥の役割りは様変わりした。選挙や日常の政治活動への票とカネの面倒見は、幹事長室の機能となった。派閥は、あえて言えば情報交換の集まりだ。』とね。さぁ、果たしてそうなんでしょうかね。」
 と目は笑わずに、口元だけゆるめてその発言をしたらしい若手を見すえてこう続けた。「票とカネの面倒を見なくても良いのであるならば、私も派の会長としてこんな楽なことはありません。派のパーティを開かなくてすみますし、選挙や後援会活動の弁士として全国をとびまわらなくてすみます。自分のことだけ考えていれば良いのなら、まさしく自分の選挙区のためにだけがんばります。でも、そういうもんじゃないでしょ、現実は。」

 そう静かな口調で言われると、誰も反論し辛くなる。

 「今、イラクへの自衛隊派遣や北朝鮮の拉致解決問題、来年度予算審議、国会運営において、政治の矢面に立ってこの国を支えている人材は誰ですか?」

 ………。

 「小泉総理、福田官房長官、安倍幹事長、中川国対委員長、町村総務局長。ざっと挙げただけでも、政府と党と国会の要を、わが派出身の人材が現実に血みどろになって毎日支えているんですよ。この方々が表に立てるのも、ここにいる、皆さんの総意があり、下支えがあってのことでしょ。何もポストや金を配ることが派閥の目的じゃないんです。この国を支えるために、どんな理念を打ち立てて多くの国民の共感を得るか。そのための政策をどう作り上げるか。そして最も大切なことは、どんなチームワークでそれを実行に移すかでしょ。だから、一人でも多くの仲間を増やすために選挙活動の側面支援をし、政治資金を集めるために身をけずるんでしょ。」

 この頃には、一同、ふむふむ、とうなずく。

 「パーティを開けば、皆さんもパーティ券を努力して売るでしょ。そのためには企業に行って交渉して応援してもらうでしょ。派閥の会費だって、毎月皆さん払っているでしょ。そうやって、苦労を分かちあって、初めて仲間としての連帯感ができるし、政治家としてのキャリアがつみ重ねられて行くんじゃないんですか。政策だって、スペシャリストがこんなにいるから、自分の苦手な分野についても気軽に教えを請うことができるんでしょ。一人の政治家が、財政から税制、農政、社会保障、環境、教育、商工と何から何まで選挙区の面倒を見なきゃいけない時代に、派閥にこんなにスペシャリストがいるからこそ、何かあったときに相談に乗ってもらうことができるんじゃないですか?」

  確かに、そうだ。国会の暗黙のしきたりなども、永田町のカケ引きなども、私は森派の先輩からそれとなく教えてもらったっけ。

 「今回の古賀潤一郎さんも、ある意味で気の毒ですよ。民主党に派閥があり、仲間がいて、新人議員に対して候補者の段階からアドバイスしていれば、次から次へとこんなみっともないスキャンダルに巻き込まれなくて済んだはずです。ましてや、スキャンダルになったとしても、どうマスコミに対応したら良いか、どう、身を処したら良いかは、仲間が親身になって相談に乗ってくれて、ここまで叩かれずにすんだはずです。見てごらんなさい。誰も民主党の幹部はからだを張って古賀さんを守ってやろうとしなかったじゃないですか。あんな薄情な人間関係なんですかネ。政治家同士、もっと同じ政党の仲間としてあたたかくしてやれなかったんですかね。」

 そこで誰かがチャチャを入れた。

 「森会長、民主党にもグループはありますョ。」
 すかさず切り返す。
 「グループでしょ、グループ。派閥、という言葉のイメージが良いか悪いかは別にして、自民党の派閥とは、その機能も結束力も人材育成能力も責任感も全く違うじゃないですか。言うなれば、民主党のグループは大学のテニスサークル。自民党の派閥は一本スジの入った体育会ですかね。政権を担う人材を輩出するという気迫が違いますよ、根性が!!」

 この、森会長独特の言い回しに、一同大笑いしながらも、納得。
 派閥とグループの違い。
 もしかしたら、政権を支える根底に、この問題が横たわっているのかもしれない。民主党のグループが、マスコミから岡田派、前原派、小沢派、横路派、菅派などと呼ばれるようになったら、要注意、かも。 


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