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永田町通信 36
 

『会期延長 ドタバタ劇場』

 「常会は一回に限り、臨時会は二回に限り延長できる」と国会法に明記されている。

 従って、通常国会の会期末が近付くと「延長どうなるのかな? 夏休みとれるかな? 選挙近いからあいさつまわりしたいな!! たまには外遊して息抜きしたいね。いやいや、家族サービスもしておかないと……」などとかまびすしいことといったら、ない。

 今回は二つの大きな要因があって、延長か否かが政局の駆け引きの材料となった。

 それは、イラク支援新法と自民党総裁選。

 ブッシュ大統領との首脳会談で、イラク復興に向けた協力を約束した小泉さんにとって、自衛隊員を派遣して顔の見える支援を実現させるためには新法が必要。

 訪米、訪ロ、そしてサミット出席を終えて国内に戻り、ようやくイラク支援新法の中味を詰めて国会に提出できたのが6月13日。

 会期末は18日だったから、ギリギリセーフで間に合ったようなもの。政府の作業としてはいささかドロ縄気味の法案取りまとめ作業となってしまったのには理由が二つある。

 一つは、フセイン政権が打倒され、米英軍が制圧したとは言え、いまだゲリラ戦や突発的な局地戦が展開されるイラクに自衛隊を派遣して大丈夫なのか、戦闘に巻き込まれて今の武器使用基準で間に合うのか、といったそもそも論。もう一つが、大量破壊兵器もいまだに見つかっておらず、イラク戦争の大義さえ揺らいでいる国際世論もある中で、さらに米英に協力してしまうのか、との厭戦気分。

 この第一の理由については与野党双方にあった。しかし、最終的には「そうは言うものの、イラク復興のために何もしないというわけにはいくまい。日本の国力に応じた支援はすべきだろう」との世論に助けられて、新法は取りまとめられて国会提出の運びとなった。

 もうひとつの自民党総裁選をめぐる駆け引きは、権力闘争、人事抗争も絡んでいるだけに余計複雑だった。

 9月30日に任期の切れる小泉総裁の描く戦略は、国民の支持率頼み。

 50%を超える高支持率を維持するためには、できるだけ長く延長をして解散権をにぎり、同時に抵抗勢力の多数派工作を抑えるために手足をしばっておきたいところ。国会開会中、それも外交上の重要案件であるイラク新法の審議中に、自民党内で派閥抗争や利敵行為なんてできるはずもないから、政局は小泉中心に動かすことが可能。唯一の心配である参議院の審議確保については、森前総理を通して青木幹雄幹事長にスジさえ通せば問題ナシ。

 というわけで、万端取り仕切られて国会会期延長論議が表面化したのは、6月16日の夕方、参議院本会議で平成13年度決算が是認された直後。会期末わずか二日前だ。

 さぁ、ここで顔色を真っ赤にして怒り始めたのが、誰であろう、野党の皆様方。

 なぜか。

 事ここに至るまで、自民党の総裁選に関連する都合で延長論議がリードされてきたからだ。やせても枯れても野党には野党のメンツとプライドがある。

 延長するならする、しないならしないでもっと事前に相談があってしかるべきではないか、との正論や、イラク新法を国会に提出する前に自民党の総務会でとっとと修正してしまうなんて、不完全な状態での法案提出ではないか、との指摘までして、とにかく疎外感丸出しの怒りよう。

 そうは言うものの、延長に向けて走り出した列車は止めようがなく、6月17日の本会議で40日間の延長は決定した。

 一応、全会派出席して正式な手続きのもとに延長を議決したにもかかわらず、数日審議空転した。それも理由になるのかならんのかわからん理由で。

 やれ、小泉さんが野党の審議拒否をからかったとか、まだ設置もしていないイラク新法特別委員会の委員長に高村正彦が決まったとのマスコミ報道がけしからん、とか。

 ま、会期延長が決まった瞬間に野党が寝る(審議拒否する)のは常套手段ではあるが、あーあ、またか、の感である。

 結局、いつまでも寝ているのも世論の手前かなわない野党側に、何がしかの起き上がる(審議に復帰する)口実を与えて国会は正常化することになるのである。(昨年は鈴木宗男問題が口実だったが。)

 どうだろう。

 こうした自民党内事情、野党側のメンツを賭けたドタバタ劇が、会期延長決定までのウラ側でくり広げられているのである。

 シナリオがあるようでないような、ないようであるのが国会対策の現場の真実というわけだ。これで小泉再選間違いナシ、かな?


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