Apple Town


永田町通信 35
 

『出会い系?』

 「私を買って下さい。16歳。処女。」

 「生パンツ1万円。」

 「3万円で。割り切った交際を!」

 まるで常識(良識)を疑うような書き込みが平然となされている出会い系サイト。

 10年ほど前は、新手のツールとしてテレクラが台頭し、あわててテレクラ規制条例が全国の自治体で制定された。公共施設から二百メートル以内には設置しないとか、買う大人の側を罰する規定とか。

 そのおかげで、いかがわしい援助交際のきっかけの場も下火になってきたと思いきや、「敵」もさる者。

 出会いの場をインターネットという匿名性の強いところに移してきたようなのである。

 私の指摘する「敵」も、対象がずいぶんと様変わりしてきている。

 永らくは、「買うオヤジ」側が加害者として、少年少女のまさしく敵であったのだが、どうも出会い系サイトに書き込みをして援助交際の誘引をしている9割が、被害者であるはずの少年少女の側なのである。

 被害者でもあり、原因起因者ともなっているこの事態の深層を、いかに理解したら良いだろうか?

 ロリコンと称する、いたいけな少年少女を毒牙にかける邪悪な大人。しかし、そのようなモラルから逸脱した大人の心中を見抜いて、自らの肉体を商品としてより高く売りつけようとする、確信犯たる少年少女。

 この出会い系サイトを通じて援助交際をした末の犯罪は、ここ数年、倍々ゲームのように激増している。

 売買春。強姦。強盗。麻薬密売。殺人。違法薬品売買。傷害。望まない妊娠、中絶。性感染症。

 そして、暴力団の資金源。

 おもしろそうだから、ヒマだからついアクセスしてみただけ、おこづかいが欲しかったから、話し相手が欲しかったから、さみしかったから、などという、つい出来心であったり好奇心から入りこんでしまったことが、結果として、自らの肉体や精神を傷つけてしまうような悲惨な事態を招き、いわんや、暴力団の資金源として吸い上げられているのが現実なのである。

 もちろん、出会い系サイトを利用する全ての人々が犯罪に巻き込まれるわけではないし、サイト運営者は全てが意図的に売買春や援助交際などを奨励しているわけではないが。

 こういった犯罪の実態に一定の歯止めをかけるために、私の所属する青少年問題に関する特別委員会で審議されているのが「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案」。

 あまりにも長ったらしいので、国会内では「出会い系サイト被害防止法案」と通称で呼び合っている。

 いかにも、情報通信機器の機能や技術が飛躍的に発展した日本社会であるが故に起こる、負の法案と言わざるを得ない。モラル低下もここに極まれり、だ。

 この法律の特筆すべき点はこうだ。

 何人も、出会い系サイトを利用して児童(18歳未満)を性交等の相手方となるように誘引し、または金品供与を示して児童を異性交際の相手方となるように誘引することを禁止していることである。

 ここで、児童自身から誘いをかけた場合にも罰則をかけて禁止していることである。

 もちろん罰金刑であり、家庭裁判所における保護措置処分にとどまるのではあるが、被害者であるはずの児童が犯罪者になってしまうことに違いはない。

 私はこの法案に賛同しながらも、一抹の心苦しさを感じている。

 出会い系サイトというツールを作り出したのも、世に広めたのも、これを利用して援助交際の相手方を誘い出そうとするのも、大人の側からの「仕掛け」であるにもかかわらず、これを逆利用して大人側を誘い込む子供たちが犯罪者になってしまうのだ。事の本質を見れば、「売らんかな」の大人のエゴが子供まで毒してしまっている、という矛盾である。

 「子供だって悪いことすりゃ罰するんだよ。社会のオキテだよ。」と大上段にバッサリやるには、何か釈然としない胸の内を否定できない。それほど、青少年をとりまく環境が複雑化してきているのだが。野放しにはできないから、規制しているのだが、何かこの国の本質が問われているような気がするのだ…。 


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