Apple Town


永田町通信 26
 

『代議士のストレス発散法?!』

 7月31日の夜、なかなか寝付けなかった。192日間に及ぶ長い国会が閉会を迎えたその日だから、というわけではない。

 翌8月1日、一人娘と二人きりでディズニーランドに行くことになっていたからだ。 恥ずかしいかな、2002年になってからはじめて丸一日休日をとったのである。

 1月1日に始まってこのかた、一日たりとも休日をとっておらず、家族サービスなんて代物とは無縁だった。いつも土日は出張か選挙区で会合が入っている。あたりまえだが女房には「母子家庭ヨネ、うち」と小さな声でつぶやかれ、4歳になる娘は決まって土曜の夜に「パパいない、パパいない、パパいなーい!!」と涙声の絶叫を留守番電話に入れている。(おそらく女房が仕掛けてるんだろう。)そんな心苦しさが半年以上も積み重なると、さすがの私もストレスに負けてしまう。

 本来ならば、国会が終了した翌日は真っ先に地元に飛んで帰っては国政報告の街頭演説をしたり後援者まわりをするべきなのだろうが、あまりのストレスに負けて、私は丸一日を休みにした。するとどうだろう。まるで遠足前日の小学生のように、嬉しくて嬉しくて興奮して眠れないのである。こんな気分はいつ以来だろう。

 8月1日はたまたま女房に仕事が入っており、残念ながら親子3人揃ってのディズニーランドとはいかなかった。しかし、朝10時に入園して夜7時まで、「もう帰ろうよ」とパパが切り出すまで、パパにしがみついたまま娘はひとときも休まずに園内を走りまわっていた。

 途中、お腹がすいてもホットドック1コとオレンジジュースを1杯飲んだだけ。ミッキーさんと写真を撮ったり、乗り物の行列に並んだり、パレードの後をついていったり。そして決まってパパを見上げて何かしら話しかけてくる。ちょっとでもパパとつないでいる手が離れたり、トイレで姿が見えなくなると、この世の終わりのような声で「パパー、どこにいるのー」と叫びながら後を追いかけてくる。

 本当に丸一日いっしょにいて、至福の時を感じると共に、ストレス解消法なんて以外とアッという間にできるものなんだな、と思った。どこから見ても自分に似ているわが子のはしゃぐ姿を見ていると、国会対策委員会でのストレスも、昨日までのイライラがすべてどかんとすっとんでしまうのだ。

 人それぞれにストレスのたまり方も違うし、そして解消法も違うだろう。この「代議士」という、ある意味で自意識過剰で選挙中毒(?)の職業ゆえにであろうか、一歩自宅を出ると肩がこることこの上なく感じてしまう。

 「国会議員という立場を忘れてはならない。」
 「他人に後ろ指を差されてはならない。」
 「徳のある人柄と思われたい。」
 「一票を失うような欠点を有権者に見せてはならない。」
 「いつも日本国のことを考えていなければならない。」
 「お金に汚いと思われたくない。」

 そして挙句の果てには、
 「私は有名人であり、いつも他人に見られているので、そうふるまわなければならない。」と思い込んでしまっているような気がする。

 一人の社会人として、つましく、礼儀正しく、控えめに暮らしていればどうということはないのに、自分で自分が見えなくなってしまうほど、勘違いのストレスを溜め込んでいるようだ。娘とディズニーランドで大騒ぎしているとき、世間体も見栄も固定観念も腹黒さ(?)もすべて忘れていられた。

 帰りの車中、娘がぐっすりといびきをかいて寝ている背中をなでながら、そんなことに気がついた。
 「立派な人物であらねばならない」「政治家であることを忘れてはならない」という気負いが、余計に自分の素顔を覆い隠してしまっているのではないか、と。

 ストレスは、人間誰しもが感情として芽生えさせるものであろう。しかし、ストレスを自覚し、速やかに解消させることがいかに大切かを現代人は置き去りにしてはいまいか?

 今年はじめての休日、娘から教えられたことのひとつだった。 


戻る