Apple Town


永田町通信 24
 

『黒幕たちの素顔』

 延長になった通常国会。与野党幹部の思惑はそれぞれ近寄ったり離れたりの交差を繰り返している。緊張感高まる中で、国会運営の要を担う黒幕たちの最近の素顔をここで少し紹介しておきたい。こんな人間味あふれるおじさんたちが、国会を動かしているのである。

 

1.鳩山邦夫議員運営委員長。

 鳩山委員長に対する解任決議案を本会議で採決するにあたり、与党は反対討論をすることになった。当然、人物寸評も言及しようということになり、与党メンバーが準備した原稿の原案を見せられた鳩山さん。

 「チョットこれはないよー。“人格高潔にして品行方正、温厚にして円満な人柄・・・・・・”とかならわかるけど“まれに見る多弁にしておそれを知らぬ率直な物言い”って、そのまんまじゃないのー・・・・・・もっと言い方なんとかして下さいョ・・・・・・」とグチる。

 実は原案にイタズラ書きをしただけなのであるが、それがイタズラではなく、「そ−だよなー、うん、その通り」と納得されてしまうほど確かにおしゃべり。本会議中にお兄さんの由紀夫さんが演説を始めると、まっさきに野次をとばしたりして「コラ! 兄弟ゲンカを議場でするな!」と周りからたしなめられるほど。

 

2.菅直人民主党幹事長。

 私がトイレで小用を足していると、たまたま居合わせて、ヨォ、ハセ君!!と言って連れション。「ところで馳君のホームページは人気あるね! はせ日記見てるよ!」

「あ・・・ありがとうございます。菅先生のホームページには及びませんが・・・・・・」

「私と小沢(一郎)さんとハセ君のホームページがアクセス上位三名なんだよね。がんばらなきゃね。」とぶつぶつ。意外と負けず嫌い!?

 

3.神崎武法公明党代表。

 晴れた日は毎朝国会中庭をSP連れて散歩。歩くの大好き。廊下スレちがうたびに「馳さん、プロレスやってる!?」と必ず聞いてくるほどの隠れプロレスファン。同郷の佐々木健介(新日本プロレス)がお気に入りで、私とのタッグ戦が好きだったらしい。プロレスを語る代表は少年の瞳。

 

4.太田昭広公明党国対委員長。

 「馳くーん、谷本(石川県知事)さんは元気かね!?」と大学の同級生の近況を尋ねてこられる。与党の一員として自民党控え室にもお見えになることは多い。私の姿を見つけると、肩や腕の筋肉をさわり、こぶしで小突き、時々ぶつかり稽古のごとく体をぶつけて来られる。さすが京都大学相撲部出身!? 最近は「あま色のー、長い髪をー、風がやーさしくつっつぅむー♪」と鼻唄を歌いながら歩いている。この歌がヒットしていることが嬉しいのだが、若い職員に「島谷ひとみですネ」と言われ、「え、誰それ?」と答えていた・・・・・・

 

5.大島理森自民党国対委員長。

 世間の受けが悪いことを大変気にしている。私が毎朝スポーツ新聞をチェックしていると、「馳クン、またわたしのことを悪く書いておらんか?」と気にして、秘かに自分について書かれた記事を読み返してはため息をついている。それもこれも、田中真紀子前外相の言った言わない事件で「マキコを泣かせた女」とマスコミに書かれたことがきっかけ。

 大島さんは国会審議正常化のために関係者に「事情聴取していただけなのに、いきなりマキコさんが泣き出したもんだから、マスコミは全て「大島が泣かせた!」と書きたてたのである。おかげで白い粉末入りの手紙を送りつけられたり「おまえなんてヤメロ」の抗議電話が殺到したりして事務所は大弱り。

 以来、国対控え室で私が「黒幕」「悪代官」などとニックネームをつけたもんだから「かんべんしてくれよォ、こんな可愛いい顔をつかまえてぇ・・・」と泣きを入れることも。しかし私は知っている。会期延長とか、防衛庁リスト問題とか、ムネオ逮捕問題とか、事あるごとに水面下にもぐって民主党国対幹部と情報交換をし、国会正常化に向けて調整していることを。そういう仕事を世間では「黒幕」と呼ぶんですよ!!

 ちなみに、野党分断を引き出して民主党を自由、共産、社民と統一行動を取らせずに、健康保険法の衆議院本会議採決に持ち込んだ裏技は、圧巻だった。

 大島さんも早起きして宿直のまわりを散歩するのが日課。慶応ボーイズでありながらなぜか慶応の香りがあまりしない。スポーツ新聞のエッチなページをたまたま開いていただけなのに、女性職員から「そういうページを読んでいるおじさんを見ているのが、嫌だわ!」と皮肉を言われてしょげかえっていたりする。

 

6.大野功統議院運営委員会与党筆頭理事。

 本会議日程を方向付ける知恵袋。野党側からは「大野さんは天才的なサギ師!!」とありがたくないニックネームをちょうだいしているが、なだめたりすかしたり強気に出たりしたりして野党を言いくるめる話術は、天才としか言いようがないほど説得力十分。よくテレビで、鳩山委員長の左となりに映っているが、テレビ映りがあまり良くないことを少々気にしたりしている。英語はもとよりフランス語を自在にあやつるため、ムッシュー大野と自民党内では呼ばれている。日本語なまりのフランス語で電話に向かって叫んでいたりして、ちょっとお洒落なおじさんでもある。

 

7.町村信孝自民党筆頭副幹事長。

 夕方6時をすぎると国会健康センターにあらわれて汗を流している。高村正彦元外相や村岡兼造氏や冬柴鐵造公明党幹事長などもしばしば顔を出される健康センターであり、もしかしてここが密議の場所になったりするのかもしれない。さして広くはない、15坪ほどのトレーニング場であるが、筆頭副幹事長とはもめごとの処理役でもあり町村さんもストレスが絶えないようでその発散につとめている。「とうとうマキコさんには陰謀家呼ばわりされちゃったヨー」と例の秘書給与疑惑をめぐる問題ではマキコさんの矢面に立ったりして、心は傷ついているようである。おじさんと言えども、誤解をもたれると、心は痛むのだそうだ。

 

 まだまだ描き足りないのであるが、私がこの通常国会で間近で見てきた黒幕たちの素顔の一端である。私の役職は、自民党国会対策副委員長であり、議員運営委員会理事。

 鈴木宗男さんの大声も聞いたし、辻元清美さんの涙も見たし、井上裕前参院議長の下唇をかむ姿も拝見した。田中真紀子さんの怒りもあり、もちろん小泉さんの激しい怒りもあった。与野党もみ合う中においても、何とか予算を成立させ、法案を成立させ、国会が論戦の府であるということを国民にわかっていただくためにあえて黒幕として舞台まわしをしているのが上記してきた7人の侍である。

 時にはマスコミの攻撃にさらされこともあるし、また時にはテーブルの下で国会スケジュールを合意するところもある。

 私はその姿を見て、思うのである。

 世の中は情報公開の時代だ、とか、イエスかノーかのどちらかか、とか言われるか、はたして何もかもがあけすけの議論でうまく行くはずがない、と。

 黒幕、と呼ばれる裏方の先生方のやりとりを拝見していると「いかに相手の立場を理解し、尊重しながら、少しでも言い分を取り入れて、円滑に国会を運営していくか。それによって、国民の意見を国政に反映して行くか!」に尽きる。

 声高に自己の主張を叫ぶことが求められると共に、このように黒幕の人間味あふれる活動が潤滑油となり得るか、を我々は理解すべきだと思う。


戻る