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永田町通信 23
 

『ガツンと一発!!』

 先手必勝。これぞケンカの極意。瀋陽総領事館における駆け込み亡命希望者連行事件後の外交交渉を見ていると、ケンカの達人揃いの国会議員は与野党を問わず腹を立てている。事の本質についての議論はもとより、外交という国と国のケンカで完敗を喫した日本政府、外務省に対しては、断じて許すことができない。

 まず、ケンカに勝った中国と韓国の戦略を分析してみれば良い。いかに日本の足元を見すかしているか、がわかる。まず、中国の武装警官が、領事館敷地内から一家5人を強制排除して連行して行った素早さ。

 この迅速な現場判断に基づく行動に対して、高見の見物を決め込む領事館職員のなさけなさ。泣き叫ぶ女子供を放置してあわれみの情の一片もないのか? それとも上司の指示をあおがないと何にも判断できないウドの大木なのか? 事なかれ主義ここに極わまれり。

 次に、小泉首相がウィーン条約違反で表明すると、その日のうちに間髪入れずに「連行は総領事館の安全のため」と言い訳する中国外務省。

 その日の夜に全世界にビデオ報道がなされ、武装警官の領事館侵犯が明らかになり、さらに一家5人が全員敷地内に駆け込んでいる事実が確認されると、「領事館職員の同意があった」と強弁。

 オイオイ! 半日前には同意の有無なんて言ってなかったじゃないか! 領事館の安全のため! と言い訳してたじゃないの! とツッコミを入れたくなる。しかしそんなツッコミにボケるどころか、たたみかけるように「領事館職員と握手をした」「感謝の電話があった」と先手を打って発表する中国外務省。敵ながらアッパレ! と言うしかない。まさしくケンカに勝つ常套手段は先手必勝。最初にガツンと叩いて、ひるんだすきにさらに相手の弱点をこれでもかこれでもかと二の矢三の矢を放つことが「攻撃は最大の防御」たるゆえん。ましてや日本より先に公式見解を発表すれば、その印象は圧倒的に強い。

 比較して、日本政府の及び腰。だいたい小泉総理の「日中友好を大切に」「慎重に」「人道的に処理」発言は生ぬるい。一国の総理たる者、まずは独立国である日本の主権を明確に声高に主張してこそ、日本の最高責任者ではないのか!? 相手の出方をうかがってからみずからの姿勢を決めようとする交渉なんて、後手後手になって袋小路に追い込まれてしまうことは火を見るよりも明らか!! あまりものケンカ下手。

 一家5人はフィリピンを経由して韓国に移送されたが、ここでも日本の寺田大使はのけ者扱い。5人に面会して事情聴取しようとしても「認められない。中国側と調整してから!!」とむべもなく韓国外務省にあしらわれた。一体何なんだ。この日本に対する中国と韓国の居丈高な態度は!! そして、そんな両国に対して何ら効果的な抗議行動も対抗措置も取ることのできない日本政府のていたらくは。

 少なくとも、日本の主張が認められるまで、駐日大使を送還するなりして、日本が心底怒っているという姿勢をストレートに見せることが必要であり、小泉総理も野党相手に「自虐的だ!!」と言うのではなく、中国政府に対して声を荒げるパフォーマンスこそしなければならない。しかしこれだけでは不十分。事の本質を三点指摘したい。

 北朝鮮の国情、中国の難民政策だ。次から次へと国民が(一説には数万人と言われる)母国を逃げ出して隣国に駆け込む北朝鮮は、今回の件で一切声明を出していない。この国の表と裏の顔を国際社会にさらけ出させることが、そして難民や政治亡命者を出させないことが必要だ。

 中国は、逃げ込んでくる北朝鮮からの難民や亡命者を捕まえて送還することばかり。大国としての人道的役割を全く果たしていない。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)を通じて対策を取らせるべきである。

 そして、そして何より我が日本国の難民政策の再構築だ。「面倒なことにはかかわりたくない」では済まない。現在、難民受け入れは入管法の規定により事前申請制となっているが今回のケース(つまり、国外での大使館や領事館への駆け込み)を含めて見直しの検討をすべきであり、日本国民としても受け入れを容認すべき時代なのである。それにしても、ケンカに弱い外務省には腹が立つ!!


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