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永田町通信 22
 

『俺は聞いてない!!』

 「俺は聞いていない」またはじまった・・・・・・。野党の皆さんがこの一言を使いはじめたら要注意。

 与党側は、たまねぎの皮一枚ずつていねいにむいで行くように対処しなければならない。

 今回の「俺は聞いていない」事件のあらすじはこうだ。国会に有事立法(具体的には、武力攻撃自態対処法、安全保障会議設置法、自衛隊法の三法案)が提出された。三法案を一括して審議するためには、特別委員会を設置する必要がある。それほどの国家にとっての重要案件だから・・・・・・。

 という議論が連立与党内で下打ち合わせがなされた。そこで、内々にこういう骨格が話し合われた。委員会の名称は、「武力攻撃事態への対処に関する特別委員会」。通称は「武事特」。目的は「武力攻撃事態への対処に関連する諸法案を審査するため」。員数は45名。委員長は自民党の瓦力元防衛庁長官にお願いしよう。こういうことを正式に決める場所とは議院運営委員会の理事会であり、最終決定されるのは本会議。つまり、議運の理事会で議題としてまな板の上に乗るまでは、詳細がマスコミによってオープンになっては困る話しなのである。

 ところが!!あろうことか、議運の正式な議題となる前にマスコミによって、大々的に報じられ、ご丁寧にも理事会の開かれる当日の朝刊各紙に、「瓦氏が委員長に決定」と見出しつきで掲載されてしまったのである。私は議事の理事。与党の私でさえつゆ知らぬことが新聞辞令で飛び込んできたのだから、そりゃ野党理事の皆さん血相変えて「聞いてないヨォ!!」と声を荒げるのもムべなるかな。

 その背景は、前日に起こっていた。与党として内々に進めていた「武事特」設置の段取りで、委員長に誰をお願いしようか、ということである。有事立法は、議論が始まってすでに25年が経った。独立国家の安全保障を考える上で悲願の法整備なのである。ここは、防衛政策に明るいベテランが登用されるのが望ましいのは当然であり、さらに言えば野党とも円滑に交渉して、きゅうくつな国会日程の中で、なんとか会期内に法案を成立させることのできる手腕をもった委員長にカジ取りを任せなければならないところ。そこで、自民党内に白羽の矢が向けられたのが瓦さん。二回も防衛庁長官を務めており、国会対策委員長を務めたこともある苦労人。野党と修正協議に入ることがあるかもしれないし、役所の答弁で紛糾するかもしれないし、しないかもしれないし。国会審議は生き物であり、ましてや野党の反発の強い法案審議については慎重に丁寧に配慮した委員会運営がなされるべき。そう考えてくると、瓦さんの人徳は適任であろう。

 しかし、ここまでは与党内の内定事項。この内定事項を野党側に内示する前に、さらに、議運の理事会で正式な議題とする前に、マスコミにもれちゃったのである。そのもれちゃった原因というのが、官邸。小泉総理と自民党の山崎幹事長が同席している席に瓦さんが呼ばれ、「武事特の委員長には瓦さんが適任だ」なる発言がもれ伝わったわけだ。

 その時点においてはまだ議運の理事会の議題にも上がっておらず、この官邸での三者会談の大々的な報道に接して怒ったのが野党の皆さん方。「特別委員会設置の件でさえ聞いていないのに、どうして委員長人事まで決まるんだ!! なんでもかんでも官邸が口をはさむんなら、国会軽視じゃないか!! 決めるのは議運であり、本会議だろう」

 そりゃそーだ。この抗議に言い訳する与党。

 「総理は自民党総裁として瓦さんにお願いしただけ!! マスコミが勝手に報道した。全てが決まるのは本会議なのはわかっている。内々の話しでしかない・・・・・・」と言いながら、歯切れの悪い言い訳。外にもれちゃったのは事実なので。

 「丁寧な取り扱いとならなかったのは事実なので、その点については反省し、陳謝する。しかし、他意はないことなのでご理解を!!」と陳謝。野党側も了解し、やっと話しが前に進むことになったというわけだ。

 世の中にも同様なことはあるのだろう。

 事後承諾とならないように、情報管理は徹底して守る必要がある。とともに、与野党は下交渉で情報交換を早目にやっておかねばならないのである。これが俗に言う「ホウ(報告)レン(連絡)ソウ(相談)」ということだ。 


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