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永田町通信 14
 

『人間小泉純一郎』

 ジェノバサミットから帰国し、参院選の遊説に復帰した小泉総理は元気回復。

 「いやー、ジェノバでぐっすり寝たら疲れもふっとんだよ。人間一日8時間は寝なきゃいかんな。」

 「そうですよね。前半の遊説ではずいぶんお疲れでしたもん。」

 「しっかしマスコミにも困ったもんだ。1kgしかやせていないのに10kgもやせたと書かれるし、夏風邪ひいただけなのに重病説だよ。」

 「あれで入院でもしたら死亡説まで流されちゃいますよ。」

 「本当だな。おちおち風邪もひいてらんないよ。」

 という軽口がポンポン出てくる。

 それにしても総理は几帳面な性格。電車や飛行機を降りる時は、シートのリクライニングを元に戻し、必ず忘れ物やゴミのチェック。読んでいた新聞を折目正しくたたんで秘書官に渡したり、ペットボトルの中味が少しでも残っていれば「後で飲むから。」と官邸に持って帰らせたり。

 秘書官によると、寝る前に「あのペットボトルの水があっただろう。」「今日の新聞読み返すから持ってきてくれ。」とおっしゃるので、おちおち捨てることもできないのだそうだ。

 「ところで馳くん、毎日インターネットで日記を公表してるんだって!? 」

 「はい、そうですが。よくご存知ですね。」

 「番記者に聞いたよ。総理との会話やりとりがおもしろいって。毎日書いてるのか?!

 「はい。学生時代から。」

 「ほぉー。そう言えば小渕さんも几帳面に学生時代から毎日寝る前に日記書いてたんだって。総理になってからも激務なのに毎日書いてたそうだ。あんなに根を詰めてたからそれがからだを壊した一因にもなったんじゃないかって言われているよ。」

 などとエピソードを披露してみたり。

 奈良県に向かう近鉄特急の車中で、いきなり私の隣に座ってきた総理。

 「馳さん、柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺、って誰の句だっけ?」

 「正岡子規ですよ。」

 「何て意味?」

 「読んだ通りです。法隆寺の静寂を写実的に強調した句ですよ。どうしたんですか?」

 「いや、次の演説でのネタにしようと思ってね。」

 「だったらご自身で句をお作りになったらどうですか。大和路や……とか 」

 「俳句を作るってかー……。」

 そう言うなり自分の席に戻った小泉総理。目をつぶり、指を折りながらブツブツと何か唱えている。

 目的の大和八木駅に到着すると、いきなりガバッ、と立ち上がり、

 「できた できたよ、馳くん!! 」

 「はぁ、楽しみにしております。」

 自信満々の総理。鼻唄を歌いながら迎えの聴衆に手を振っている。演説広場に着き、つかみ(?)の一句を披露。

 「大和路で遊説すれば人の波……どう、馳さん!? 」(おいおい、いきなり俺にマイクを振るなよー)

 「総理、季語が入っておりません!! 」

 「そっかー。やっぱり素人はダメだな。」

と頭をかくお茶目ぶり。

 その奈良遊説の帰り。京都駅のVIPルームで
 「今晩の帰りの新幹線の中での弁当は、天むすか味噌カツ弁当にしましょうよ。」と提案すると、
 「んー、ダメだ。まだ時間が早い。今の空腹をがまんして、腹をすかして東京に戻ってから飲む酒が美味いんだ。」
「はぁ…。」としょんぼり肩を落とす馳浩。

 東京駅に到着すると大きな声で
 「馳くん。空腹に耐えてよく頑張った。感動した!! 」と例の名ゼリフ。

 数々の想い出を残し、参院選は終了。そして自民党は65議席の勝利を得ることができた。ずっと17日間の遊説を体験した私は思った。

 これは自民党の勝利ではなく、人間小泉純一郎の勝利なんだと。しかし、その人間性にはケチをつけるマスコミも数多い。有言実行を貫く小泉さんだけに、自分の言葉にいつも慎重になっているのだな、とも感じた。

 政局秋の陣に向けて、マスコミをも巻き込む小泉流がどれだけ成果をあげるか、だ。


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