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永田町通信 11
 

『日教組の自制必要』

 小学校や中学校で使われる教科書はタダ(無償)である。どうしてタダなのかというと、義務教育だからである。しかし、お金が天から降ってくるわけでもなく、当然国民の税金でまかなわれている(ちなみに今年の予算は441億円)。

 根拠となる法律がある。
 「義務教育諸学校における教科用図書の無償措置に関する法律」…長ったらしいが、その名の通り、国民の税金を使って教科書を適正に配布するための根拠となる法律である。

 ところが、その「適正」さをゆるがしかねない事態が起きたため、さっそく衆議院の文部科学委員会において事の経緯を問い質した。

 事の発端は、4月17日付の日教組教育新聞。

 文部科学省が、4月3日に「新しい歴史教科書をつくる会」編纂(扶桑社刊)の中学校「歴史」「公民」教科書を検定合格としたことに、次のような書記長談話を発表したのである。
 「偏狭なナショナリズムを煽る危険性があり、『皇国史観』につながる考え方が登場したものと言わざるを得ない。史実と真理・真実を伝える教育の実現にとって大きな弊害となることを危惧する」

 さらに「教科書採択決定が7月に行なわれることから、5〜7月を正念場とし、地方・中央一丸となったとりくみをすすめていく。」と記事のリード部分で述べているのである。

 前後の文章から明らかなように、日教組は地方・中央が一丸となって、扶桑社刊の中学歴史教科書の不採択運動を推進しているのである。ご丁寧にも記事の結びでは「地方議会でのとりくみも重点課題となる。山場は6月議会が想定されており…」とまで言及し、言外に不採択の請願を提出する構えを見せているのである。

 これは大問題。

 検定を正々堂々と通過した教科書に対して、現場にいる教職員を組合員とする日教組が、批判をすることは容認できる。しかし大問題が何かというと、日教組の組合員である教員が、教科書採択の現場に立ち合い、大きな影響力を行使できる立場にあるということだ。教科書の調査員や選定委員として、日教組の運動方針に従って不採択運動をされては、公正で公平な採択はなされない。そこで私は文部科学省の矢野重典初等中等教育局長にこう質問した。

 「無償措置法第10条では、教科書の適正な採択に教育委員会が責任を担うように規定している。4月17日付の日教組の教育新聞に主張するようなことが行われれば適正ではなく、この第10条に違反していることになるのでは?」

 この質問に対して矢野局長は、
 「教科書採択は教育委員会の判断と責任の下に行われる」との原則を示し、私の主張である「日教組の組合員を調査員や選定委員にすべきではない」との主張を退けた。つまり、不採択運動を現場で行っている組合員が調査員や選定委員になることは第10条に照らし合わせて違法ではない、と明言した。

 しかし、

 「教職員団体が教育について見解を述べたりするのは基本的に自由だが、公正な採択に影響を与えないような慎重な対応が望まれる」と、日教組の自制を求める答弁をした。

 実は、質問の前日、教科書課長が私のもとにやってきて「質問を控えていただけないか」と懇願してきた。「どうしてか?」と聞くと、「文部科学省としては、組合員が採択に関与することを明確に違法とは言えない。もちろん組合員が明確に不採択運動を展開するのは好ましいとは思っていないが、違法ではない以上、そこにつけこませる口実も与えたくはないので、質問を控えていただけないか…」
 「ダメ!!ぜーったいダメ!!」

 かくして矢野局長は違法性を否定しつつも、日教組の自制を求める(ちょっと苦しまぎれの)答弁をしたのである。

 6月4日には扶桑社の「歴史」教科書が市販される。どうか手に取って見て、国民の目線で我々が判断してみることが必要。なぜなら教科書は、「国民の税金」でまかなわれているのだから!!


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